見出し画像

BEFORE/AFTER

仕事を辞め、看護大学へ通っていたビフォー・コロナの世界線。福岡といえど筑豊という娯楽の少ない町で年の離れた同級生と過ごした4年間の唯一と言える楽しみは長期休暇の度に韓国へ行くことだった。最後に行ったのは2019年の12月。次は2020年の3月に予定していたけど、COVID-19の流行により卒業式は自粛、卒業旅行は実現しないまま、私たちは未知の脅威の中、医療現場へ放り出された。そしてカメラを取り出すことはもう無かった。

2年半ぶりに8月限定で無ビザ入国できるということで韓国へ来た。(結局無ビザは10月末まで延長、韓国入国後のPCR検査費用だけでも良い収益が得られていて10月には釜山でBTSのコンサートが開催される)。元は美容の仕事からエステティシャンとして私はスタートし、教員時代は皮膚学と香粧品学の授業を担当していたこともあり、韓国滞在での関心は専ら安くて質の良い韓国コスメや美容皮膚科を探したり、新しい治療を自分の皮膚で試したりすることである。ただ、円安などもあり化粧品を見ても以前素ほど心は踊らない。今日はもう止めにした。

迷った道の途中で見慣れない大きな建物や構造物が私の目を惹く。それに吸い込まれるように地図を閉じ、今日はそのまま歩くことにした。歩いてるうちに段々と、ある奇妙な感覚に襲われる。私たちとよく似ているけど違う人々、違う車、違う建物。知っているようで少しずつ違う。自分の存在と周りの希薄な関係。奇妙さは強まっていき自分以外の人間がまるでNPCのように感じる。この世界も見てる景色も全て嘘かもしれない。そういえば小さい頃はこんな風に空想に耽けることが好きな子どもだった。ひとつ思い出せて良かったという気持ちは金の宝箱を発見したようだ。(小さい頃の記憶の多くが数枚の静止画のようにしか思い出せない)。

自分が立っている場所、取り巻く環境、アフター・コロナと世界の行方。考え出すと眠れなくてもう暫く思索に耽るという贅沢をする。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?