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『稲盛和夫一日一言』 4月10日

 こんにちは!『稲盛和夫一日一言』 4月10日(水)は、「本能を抑える」です。

ポイント:利己的な欲望が出てきたときには、意識してそれを抑え込もうとすることが必要。そうすることで、理性を発揮し、正しい判断を行うことができる。

 1996年発刊の『成功への情熱 ーPASSIONー 』(稲盛和夫著 PHP研究所)「本能心を抑える」の項で、本能心をコントロールすることを覚えることが大事だとして、稲盛名誉会長は次のように述べられています。

 人間は、本能と理性の両方を持っています。ものを食べたり飲んだり、ケンカをしたり、所有欲や妬(ねた)みを感じたりするのは、すべて自分自身の命を守り、家族の繁栄を図る自己保存本能のなせる業です。

 人間は、しばしば、この本能をベースとして判断を行います。しかし、それでは動物と同じです。もし、状況を客観的に見ることができれば、もっと良い意思決定ができるはずです。

 まずは本能を抑えることが重要です。そうすると、心の中に理性が入ってくる隙間が生まれ、論理的に考えることができるようになります。問題は、行動をどれだけ理性でコントロールできるかということです。

 しかしながら、本能を抑えることは容易ではありません。人間は本能なしには生きていけません。ですから私は、本能をすべて取り除けと言っているわけではないのです。
 大切なのは、本能に支配されないことです。私たちは、本能を意志の力で抑えることができなければならないのです。

 人間が本能に従うのは自然なことですから、本能を抑えることはたいへん難しく、簡単にできることではありません。必要なことは、利己的な欲望が出てきた瞬間にそれに気づき、意識してそれを抑え込もうと努力することなのです。

 本能心をコントロールすることを覚えなければなりません。それが理性を高め、正しい判断を行う能力を与えてくれるのです。(要約)

 2011年発刊の『京セラフィロソフィを語るⅡ』(稲盛和夫著 京セラ経営研究部編/非売品)の中で、本能を抑えることが心を高めることにつながるとして、名誉会長は次のように説かれています。

 ビジネスの世界でも、必ず会社にとって得か損か、儲かるか儲からないかという本能のレベルで判断しようとすることがあるはずです。

 いくら賢い人でも、最初から理性で判断できる人はそう多くはないでしょう。まずは、直感的に本能で判断して、これは儲かりそうだなどと反応するわけです。その上で、さあ戦略を組もう、戦術を組もうというときになって初めて理性、知性を使い始めるわけです。

 高次元の真我とは、良心、理性のことですが、その上を低次元の自我が覆っていますから、なかなか外には出てきません。私たちは低次元の自我で物事を判断しがちなのですが、それがあまりに強ければ、失敗をしてしまうことになります。

 ここで言う低次元の自我とは、「オレがオレが」と主張する欲望、「利己」と言ってもかまいません。一方、真我のほうは、人を慈しみ、人を助けてあげようという「利他」です。

 自我を抑え込むことで、真我の周囲を取り巻いている自我の皮が薄くなってくると、高次元の真我、つまり良心、理性というものが出やすくなってきます。
 そして、判断の基準を良心、理性に置き、それによって判断ができるようになってくると、間違いを起こさなくなります。それができずに欲にからんで判断していくから、皆ろくでもない結果を招いてしまうのです。

 低次元の自我、つまり欲ぼけした自我を抑えていく、真我の周囲を取り巻いている自我の皮をひっぺがしていくことが、人間としての修行であり、「心を高める」ということなのです。(要約)

 名誉会長は、自我と真我のことを、貪欲と慈悲、エゴと良心、とも表現されています。
 そして、美しい利他の心に基づいた「物差し」を持たなければならない。それは「人間として正しいことを正しく理解し、実行すること」。
 そうした物差しを持って人生を歩めば、経営も人生も必ず立派なものになっていく、と説かれています。

 低次元の自我、つまり本能、感情を抑えて、良心、理性という高次元の真我が日常的に発現してくるよう、日ごろから自我を抑えるためのトレーニングを怠らないこと。
 なかなかできることではありませんが、そうなりたいと努めることが大事なのではないでしょうか。


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