マガジンのカバー画像

読み返したい

137
運営しているクリエイター

2022年3月の記事一覧

ポスト家族論 ~古くて新しい生活単位~

安心なマンションに住んでいる。 というのも、セキュリティがしっかりしてるとか、そういう意味ではない。入居中の6部屋のうち、5部屋に友人が住んでいる、ちょっと変わったマンションなのだ。 このマンションを大きな一軒家に見立てるなら、私たち夫婦の部屋はリビング・ダイニング。住人はこの部屋を自由に出入りしている。 外出して帰宅してみると、私の部屋なのに誰かが我が物顔でくつろいでいたり、 「白いご飯あったりする?」 と、まるで実家に帰ってきたかのように白飯をさらっていく人がい

はじめての国際学会を主催してみて

やっと、やっと、準備してきた国際学会が終わった。 はじめて国際学会を主催したのだ。 学会の主催すらはじめてなのに、国際学会、しかも「淡路島での現地開催」と「オンライン開催」を同時に行う『ハイブリッド形式』という難しいもの。 その主催者を私が一手に引き受けていたのだ。 とても大変な準備だった。けれど、無事に成功して、いまはほっとしている。 * 学会の主催は、結婚式の開催に似ていた。 会場選びから、料理選び、参加者の決定…。(もっとも、学会の方が 10 倍は大変だけれど

茶関係のお役立ち書庫(随時更新)

投げ銭はこういう本に課金してます!ありがとうございます!今までの記事に投げ銭をくださった皆様、ありがとうございます!深謝申し上げます🙇‍♀️ こういう本に課金してます~!とご報告差し上げると共に、お役立ち記事にできたらなーと思いまして、お茶関連でよく読む本、役にたったなぁという本の一覧を作ることにしました。 ※全ての本が買えた訳ではなく、また記事を参考にされる方の利便性を考えて無料配布のもの、J-stage上の論文なども全部載せていきますが、少なくとも投げ銭はこの中の本

苺のイデアを見つけた話

昼休みに所在なくTwitterを遡っていたら、苺のイデアを発見してしまった。 言葉を正しい意味で使おうと心がけるのならば、もちろん、イデアではない。 それはあくまで非物質的な観念、理念であり、まかりまちがってもしがない会社員が食休中に操作するスマートフォンの液晶上に立ち現れるようなものではないのである。もし立ち現れたら多分プラトンが号泣する。私はプラトンのことをけっこう好きなので、できれば泣かないでほしい。 けれど、他にふさわしい言葉を知らないのだから仕方がない。 私はタ

「この本は、主としてホビットのことを語っている。」

ああ、ついに来てしまいました、この時が。 わたしを構成する本のうちで避けて通れないもののひとつ、『指輪物語』でございます。 J.R.R.トールキン著、瀬田貞二、田中明子訳『新版 指輪物語 旅の仲間(上)』(評論社, 2002年) わたし、『指輪物語』は判型違いを持っておりまして、高校のときに買ったのがハードカバーのもの、そして留学中に「日本語が読みたい病」にかかってロンドン三越の地下の本屋さんでまとめ買いしたのが文庫版のほうです。 原作は1954年、日本語訳で初めて出た

知らん人からの手紙である

娘の登校時間はいつもぎりぎりで、送られてくる校門の通過時刻メール(そういうものが、なんとある)を見ては、抽選の当落を確認するように偶然性を持って間に合ったか間に合わなかったかを受け取る日々だ。 間に合えば幸運、間に合わなければ不運みたいに感じていたが、いやそうじゃなくて、間に合わせようと努力して間に合わせなければと、そう奮い立ったのが一昨日だった。 明日は頑張って朝間に合うように余裕をもって起きようと娘と話をし寝て今日、娘を早めにしっかり起こした。 普通に余裕をもって朝

あなたの味方は、たくさんいるから――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、お笑い芸人が揶揄した子連れ女性に向けて、力強いメッセージをいただきました。 ※当記事は連載の第12回です。最初から読む方はこちらです。 #12 子連れで、恐怖しない世の中を  つい最近、有名なお笑い芸人さんが新幹線で一緒になった、乳幼児に二時間半ずっとしゃべり続けていた女性を「うるさい」とテレビ番組で揶揄した。当然のことながら炎上し、彼は「子連れの大変さ

フェミニンな服

今日、ご試着をしていたら「いつもはフェミニンなお洋服なんですね」と言われて、そうかもねーとなった。 フェミニンというつもりはなかったけど、確かに10年くらいパンツをはいていないのでフェミニンといってもいいのかもしれない。 かといって、女っぽくしようという気持ちで臨んでいるわけでもない。 女の身体で生きているので、それが一番楽だから、というのが大きな理由になっていた。 以前は、気合を入れて女っぽくしていた気がするのに。 いろいろと着せてくれた店員さんに「10年くらいパンツ履

¥200

好きなものを100個あげてみる

前回、好きなものを10個上げる記事を書いた。書店のお手洗いにあったお花とハンドソープの組み合わせが可愛かったとか、行きつけのカフェテラスのカップが好きとか、他愛のない「好きなもの」を10個羅列しているのだが、 普段は「これが好き」と発信することに対して、多少の勇気を要していることに気づく。「そこまで詳しくないし」「ガチ勢じゃないから…」と遠慮してしまう場面がある。 「グッズの量/現場への参戦回数=推しへの愛」のような言説を見ると、「好きの世界に新自由主義チックな思想を持ち