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地元エッセイ(6)冷蔵庫の中身とファッション

今回は久しぶりのエッセイ。

 いただいていた質問への回答。

『冷蔵庫の中身』と『ファッション』について


冷蔵庫の中身

 地元では冷蔵庫の中身の権利は特に決まっているわけではなかったが、料理をする人のものが必然的に多くなっていた。実家で料理をするのは主に祖母だ。なのでこちらも必然的に色味が明るくない、子どもがあまり好まないものになる。

 野菜や魚、調味料らがまったく子供向けではないのだ。だから僕は小さい頃、冷蔵庫を開けるのが楽しみだったことがあまりない。

 冷凍庫コーナーにはアイスなどは特になく、無駄に多い保冷剤と、冷凍食品、冷凍したいつぞやの米やおかず、餅なんかが入っていた。

 それらに食指が伸びることはない。

 一つ他の家と違う部分を挙げるとしたら、うちには冷蔵庫が三台あること。

 三台目にいたっては僕が大学に行っている間になったことなので、あまり思い出はないが、そのうちの一つ、二台目は思い入れがある。

 二階建てと平家をくっつけた僕の実家には渡り廊下があって、そこから父の部屋と叔父の部屋に行ける。三叉ある道の真ん中、階段の真下の闇に紛れて置かれている黒い冷蔵庫。

 そこは父と叔父がよく使っているところで、チョコレートやアイス、炭酸飲料やお酒が入れられていた。二階にいる叔父に食べていいか飲んでいいかを聞いていただく、箱アイスにいたってはまったく何も言わずに食べていることもあった。

 角10棒アイスなんかは好きすぎて全部食べてしまったことを覚えている。

 アイスつながりでもう一つ話をすると、僕は箱アイスを自分で買い、持って帰って家で食べるのが夢だった。

 箱アイスを買えるスーパーは車で二十分近くかかるところにある。なので必然的に子どもが家で箱アイスを食べようと思えば車が必要になってくるわけで、自分で買ってくることは子どもには無理だ。

 先日実家に帰ったとき、こっそりそれを行ってみた。さすがかつて暑さ日本一を記録した町。氷をもらって時間稼ぎをしたにもかかわらず、庭で食べていたらすぐに溶けてしまった。

 溶けたアイスを舐めようとする犬を抑え、足で踏み潰して置かなければマイワンコは腹痛になっていたところだったろう。

 三代目の冷蔵庫は父の部屋にある。それからは階段下は叔父のものとなった。

 冷蔵庫にまつわるお話はこれくらいで、もう一つの質問。

 

ファッション


 これはとても困った。ファッションと聞いて浮かぶようなコーデが何一つとしてなかったからだ。田舎で18年暮らした根っからの田舎少年にはUNIQLOさえハードルが高いシティなファッションに思えた。

 来ていたのはもっぱら兄のおさがりか、父がなぜかもらってくる『STUDIO KIKI』と書かれたシャツ。あとは祖母がスーパーのバーゲンセールで買ってきたいわゆるおばあちゃんが選んだ服。

 僕はそれを別段嫌なものには思っていなかった。それが普通だったからだ。それに服装が自由だったのは小学生のときだけで、中高は制服だった。帰り道に学ランだけ脱いで、仕事終わりの会社員ぶっていたのが懐かしい。雰囲気でコーヒーを飲もうとして吹き出してシャツを汚したのも思い出である。

 ちなみにバイトもホテルのレストランだったのでシャツとスラックスだった。あまりにもこの格好が多くて、大学に上がっても、なんだったら今でもずっとシャツにスラックスの格好でいることが多い。パーカー姿や半袖半ズボン姿で僕を見ることはほとんどない。もし僕のガチャがあればSSSランクだ。もちろんないけども。

 さらなる余談。『STUDIO KIKI』にいたっては割と好きだった。なぜなら僕の名前がこうきで英語だとKOKIになるからだ。なんとなく自分のものみたいな気持ちになれて好きだった。兄と父が音楽好きだったのもあって、その仲間になれたような気持ちだったのかもしれない。

 兄にこの話をしたところ「あったなぁ、STUDIO KIKI のシャツ。あれなんやったんやろうな」とさらに謎が深まっただけだった。
 

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