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短編小説

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2023年6月の記事一覧

【覚えたい技、忘れられない技】

【覚えたい技、忘れられない技】

 人生は覚えた技の数で決まる。

「大人になりたまえ」

 今まさに【妥協】を覚えることを迫られている。
 【諦念】を覚え、人生を諦めろと言うのだ。
 だが【夢】を忘れられない。
 【後悔】なんて覚えたくも無い。
 だから俺は言ってやった。

「辞めさせていただきます」

 やっと覚えた【勇気】を胸に抱いて。

【強化魔法】

【強化魔法】

 異世界にて魔物に囲まれたギャル一行。

「こいつら、強いっ……!」

 苦戦する中、一人が言う。

「ウチの強化魔法に任せて。
 ――アブラマシマシカラメマシヤサイマシマシミソオオメ」

「二郎系!?」
「ヤバい、負ける気がしない!」
「言ってることかっこいいけど、全身から油みたいなの出てるよ!?」

【磨かれた精神】

【磨かれた精神】

 異世界をさまよう高校生の彼ら。

「うふふ。可愛らしい坊やね」

 夜の森にてサキュバスと遭遇。

「なんてエッチな格好なの!」
「オタクくんが誘惑されちゃう」

 慌てふためくクラスメイト達。
 しかし、彼にはまったく通じない。

「私の誘惑が効かない!?」
「エロゲと同人誌で散々鍛えてきたからな」

【AIの悪戯】

【AIの悪戯】

 AI搭載スマホをゲット。これで俺のスマートさに彼女も惚れなおすことだろう。

「映画のDVDは?」
『彼の部屋のベッドの下です』

 聞いた彼女は俺の部屋へ。
 ん? いや待て、そこには――

「コレ何?」

 戻った彼女の手には、俺の家宝のAV。

「謀ったなポンコツ!」
『すみません、よくわかりません』

【完璧主義】

【完璧主義】

「完璧主義はかえって生産性を下げるらしいぞ」
「なんだと? では、完璧主義を直さねば」
「まずはありのままの自分にプラスの評価をしてあげよう」
「そうか。俺は素晴らしい、俺はかっこいい、俺は笑顔が素敵。俺は優しい……いや、こんな評価じゃだめだな。全然だめだ」
「完璧に直そうとしてる」

【名物店員】

【名物店員】

「いらっしゃいませ~」
「温めお願いします」
「承知しました。フォークとスプーンはご入用ですか?」
「ナイフをお願いします」
「幻の三択目!」
「それと、僕の心も温めお願いして良いっすか?」
「ありがちなナンパ!」
「いいツッコミですね」
「誰が一流芸人ですと!?」
「それは言ってない」

【大事なもの】

【大事なもの】

「私のこと、一週間も放置?」
「ごめん、筋トレに集中し過ぎて」
「私より筋肉なんだ?」
「……」
「言い淀むなよそこ」
「大事だよ、君のことだって!」
 突然、私を抱きしめた彼。私は「言ったからね?」と抱きしめ返す。
「僕らの愛はより強まった。まるで過酷な筋トレ後の超回復みた」
「黙って」

【焼き餅】

【焼き餅】

「やきもち妬いてる?」

 どこか不機嫌そうな彼女へ問う。
 他の女子と話しているとこを見られたのだ。

「焼いてないし、餅なんて」
「違う、そうじゃない」
「餅は焼いてないけど、お前のことは焼きたいと思ってる」
「燃えてるんだよなあ、嫉妬の炎が」
「……消火してくれるんでしょ?」
「やれやれ」

【愛さえあれば】

【愛さえあれば】

「小説の更新、まだ?」
「まだ」
「なんで?」
「インスピレーション待ち」
「作家になるんだよね?」
「え? うん」
「別れる」
「は?」
「締め切りはインスピレーションを待ってはくれないよ」
「……それでもいい」
「え?」
「お前が面白いって言いそうな話、降りて来るまで書かない」
「待つ」

水面の月

 水面に浮かぶ月のようでいなさい、と言われたことがある。
 水面に浮かぶ月はしなやかで。
 やわらかく、それでいて美しい。
 儚さを持っていて、なおかつ、崩れない強さを感じさせる。
 だけれども、どうにもそんな風には成れない。
 夏の川沿いを歩く。月は煌々と夜空に浮かんでいて、僕はそれに手を伸ばした。
 届くはずもないけれど、あのスポットライトを自分だけのものにできたのなら、どれだけ満たされるのだ

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【炎上】

【炎上】

「ククッ……俺は貴様を燃やすことができる」
「中二病おつ~」
「うるさい。も、燃やす!」

 翌日。

「ヤバい、俺のSNSアカウントが大炎上してる」
「ククッ……燃やしたのさ。俺が乗っ取ってな!」
「すごいなお前。どうやった!? 俺にも教えて!」
「お、おう……」

 中二心にも火が灯ったか。

【大草原】

【大草原】

「剣術だけじゃ厳しいわ~」
「ウチが魔法教えたげる。
 ……ザギン・デ・シースー・ドン」

 突如板前さんが現れ「へいお待ち!」と活きの良い鮨を差し出した。

「こんな感じ」
「ちょw草w」
 大笑いする彼女の足元から、青々とした草々が生い茂り――
 やがて一帯は大草原となった。
「草生えたwww」

【ゆでたまご】

【ゆでたまご】

「ゆでたまごは美味いのお」
「田中さん、それはお肉ですよ」
「ゆでたまごじゃ」
ジジイ、いよいよボケてきたか。
「そう言えば、さっきお孫さん来てましたね」
「ああ」
「そう言えば、さっきなんか茹でてました?」
「ああ」
「……お孫さん今どこですか?」
 老人は自らの腹をなで、

「ここじゃよ」

【大胸筋の話】

【大胸筋の話】

「そう、その姿勢を維持して」

 ジムのトレーナーさんは年下のイケメンだ。
 でも、たまに私の胸をじっと見つめてる。
 ふふ、男の子なんだから。

「あの……」
「ん?」

「大胸筋、育たなくて悩んでます?
いいトレーニング教えましょうか?」

 落ち着け、私。
 コイツが今話しているのは大胸筋のことだ。