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こばなし
2023年1月31日 19:46
姉と私はそっくりな双子。そんな姉は私の知人とイイ仲らしい。姉を大事にしてくれるだろうか。「君たちを幸せにする」 彼の真剣な目。嘘ではないらしい。 しかし「結婚しよう」とためらいなく求婚された。残念。 人違いしてるようじゃダメでしょ、と指摘すると。「違わない。僕が結婚したいのは君の方さ」
2023年1月30日 21:16
拡散希望。 その一文以外には、犬の自撮りのごときドアップ写真。愛犬の可愛さをシェアしたいってか? にしては妙だ。住所の表示と、変な構図。まるで、場所を伝えるかのような。 は! と、俺はそこへ走る。 なんとか間に合った。倒れた男性が映っていたのだ。 にしても、この投稿は一体誰が……?「ワン!」
2023年1月29日 07:27
出発前の機内、不安がる友人。「事故の確率は10万分の1。それに私は強運。この空の旅も10万分の1の当選確率よ」 安心させていざ離陸。 が。「見事に引き当てたわね」 ハイジャック、嵐、片翼損傷で大パニックだった。 着陸後、呆然とする友に微笑む。「それだけあって無傷だったのが幸運ってことで」
2023年1月28日 19:22
「ちゅーもーく」 クラスの中心で叫ぶ。「今から氷の魔法を披露しまーす」 なに、急にどうした、とざわつく皆。 注目を浴びる中、両手で力を溜めるような仕草をして。「大寒波ッ!!」 一気に解き放つ。 ……静まり返る教室。 あまりのつまらなさに失笑すら起きない。 俺は得意げに笑う。「ほら、凍りついた」
2023年1月27日 19:02
心を豊かにしたい。思い立ち、何でも屋へ依頼した。 SNSのどうでもいい俺の投稿に、依頼通り百のいいねがついている。 その後、数が数を呼び一万。 だが、いくらいいねが供給されても心は満たされず、悟った俺はSNSをやめた。 数日後。「豊かになりましたか」 と何でも屋。 苦笑し、豊かだ、と答える。
2023年1月26日 17:35
流行りの映画を面白いと感じない。 そんな時に悲しくなるのだと、昔の彼は言った。 そんな彼の描く作品が、大好きだった。誰の評価も得られず、闇の中で寂しげに咲く一輪花。 今やその彼も一流作家。世界から賞賛を浴びる男は、きっと近頃の流行を楽しんでいることだろう。 もう、私が知る由も無いけれど。
2023年1月26日 16:47
隣の席の女子。前髪で片目を隠しており、いわゆる中二病っぽい雰囲気だ。 彼女はときどき、真っ黒な表紙のノートを取り出しては何やら書き込んでいる。「アイツ、また死のノート書いてるよ」 遠巻きに二人の男子がバカにする。よく知りもせず馬鹿にするもんじゃない、とやんわり注意してやった。 放課後、忘れ物を取りに教室に戻ると、彼女の机上に例の黒いノートが。開きっぱなしのそれを、俺は好奇心から覗い
2023年1月25日 20:18
雨は嫌い。でも、今日に限っては好都合。彼と相合傘ができるチャンスだから。「入る?」 下駄箱前。私の問いかけに驚いた彼は、少し、気まずそうに。「それ、俺の傘だよな?」 ……バレたか。黙って返し、立ち去ろうとすると。「傘、無いんだろ?」 そう言って頭上に傘を広げてくれた。 これだから、もう。
2023年1月24日 19:39
疫病対策でマスク必須の世の中。賛否両論だが私には好都合。コンプレックスを隠して恋愛できるから。しかし、ついに素顔を見せ合いたいと迫られた。きっともう終わりだろう。裂けた口元で、これでも綺麗と言えるのかとニヒルに笑う。 あまりに驚いたのか彼の眼球が転がった。 え?「僕、実は義眼なんだ」
2023年1月23日 19:34
おふくろの味。いわゆる母親の手料理だ。 俺にとっては亡き父が一度だけ作った料理がそれにあたる。 あの味をもう一度味わいたい。 そのために料理学校へ通い、海外修行までした。 そしていざ、再現を試みる。 うーん、近いけどやはりおふくろの味ではない。 同じ人肉でも、人によって多少は味が違うらしい。
2023年1月22日 09:01
とある創作仲間から、一日一万字を書き続けると宣言された。これまで口ばかりだったが、やっと本気を出すらしい。応援したいと心から思った。彼のSNSを開くと、『卍』というひとことが投稿されていた。次の日も、その次の日も。そんな日々が続いたある日。俺はゆっくりと、ミュートボタンを押した。
2023年1月21日 19:42
「聞いてよ」 いつものごとく彼女が話しかけてくる。「『異世界エイリアン』の最新話でさあ」 愛読するweb小説の話だ。こんな時代に小説なんて。まあ、個人的には嬉しいが。「推しキャラが殺されたの。作者が目の前にいたらぶん殴ってやる!」 言えない。つじつま合わせのために退場させた、だなんて。
2023年1月20日 21:58
彼は知らなかった。虹には触れられないことを。 ふもとには何もないことを。 辿り着いたその地で、虹の代わりにこれまでの旅路を思い浮かべる。 初めは一人だった。 出会い、別れ、沢山の冒険をした。 実体ある確かな記憶に、ふ、と微笑が浮かぶ。 そして彼は再び歩き出す。 その水晶体に、新しい虹を映して。
2023年1月20日 21:52
不摂生がたたり体調を壊した。先日行ったギャンブルでは大負け、おまけに話を聞いた妻が不機嫌になり、機嫌を直してもらうための金も無い。「まったく、お前は本当に仕方がないヤツだ」腐れ縁の友人に何とかならないかとたかると。「お前はこれでも飲んどけ」と粉末を渡された。青汁の。「まずは健康」