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RENAの軌跡

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シンガーソングライター 鳥居れなさんの連載エッセイを、まとめました✨ 幼少期や10代の頃を、感じたままに綴られています⏳ 語り口がユニークで、一篇の物語としても楽しめます📖
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2023年5月の記事一覧

44.鼓動

44.鼓動

子供の頃、母の背中に耳をくっつけて
大人のよくわからない会話を聞くのが好きだった。
話を聞いていたというよりは、音。
母の体の中で鳴っている声を聞くのが好きだったのだと思う

いつも聞いている声よりも、深く共鳴して聞こえる音と体温、かすかな鼓動とがセットになって、心地よいのであった。

私が5歳の時に両親は離婚した。
それから母は美容関係の店を開いた。
私にはふたつ年上の兄がいるので、当時2人の子

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43.寂しがり屋怪獣

43.寂しがり屋怪獣

酔った頭で思い出す人が、
どれだけ自分にとって大きな存在か…

私はお酒を飲んで電車に揺られると、脳貧血を起こすので
外でのお酒の席は、本当に大切にしたい関係の方々だけにしている。

いつもより素直に会話ができる時、
思い出される人間は本当に愛されている

その場にいなくても話題になるのは、それがどんな内容であったとしても
結局は大切な人だし、可愛いからなのね。

愛され方が上手だとか、世渡り上手

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42.ルイトモ

42.ルイトモ

んー、でもルイトモって感じぃ。
私の右手の薬指にサーモンピンクを塗って。
リーサさんはぽつんと言いながら、ちょっと嬉しそうだった。

東十条の商店街にある薬局の片隅、
色白で綺麗なお姉さんが、ジェルネイルをしている。
いつも自然体で、広い海をゆうゆう泳ぐ白いイルカみたいな人。
リーサさんの第一印象はそんな感じ。

ネイルをおまかせするようになったきっかけは、
高校時代のお友達である、あみからの紹介

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41.FLAG

41.FLAG

路地裏のちいさな店
看板のない店
今のお前はそんな感じ。

苦い顔で言い放たれてしまった、
恐らくわたしも同じ顔。

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