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過去は繰り返す

○今まで書いた転職の記録
『働きたくない私の明日に向けた対処法』
・『居心地の悪さ』
・『働きたくない私の明日に向けた対処法 ーアップデートー』
・自分にできる精一杯が認められたこと


2011年に『下流の宴』という、林真理子原作のドラマが放送されていた。
ストーリーは以下の通り。

普通に教育を受けて、平穏な家庭で成長した主婦・由美子。しかし、その息子は中学校までの義務教育を修了しながら、定職に就かず、格差社会に悩んでいる。

出典:Wikipedia

ヒロインの息子の恋人は、自分の学歴をバカにするヒロインに息子との結婚を認めさせるため医大に合格する約束をし、壮絶な努力の末に見事約束を果たし合格した。
いよいよ結婚し大団円を迎えるかと思いきゃ、合格の直後、約束を果たした恋人を息子は振ってしまう。
恋人も周囲も、こんなに努力して結果を出したのになぜ振るのかと息子に詰め寄る。
息子は彼女が頑張って合格した事は嬉しく思うし認めるも、「ここまで努力をして結果を出した彼女は、今まで自分を見限ってきた人たちと同じく自分を見限り、やがて去ってしまう。それが辛い。だからといって自分が向上しようとは思えない」というような事を泣き崩れながら話す。
恋人と別れたあともバイト先の昇進の話を断り、今の自分に手に入る限りの物や事に囲まれ穏やかに暮らす。

当時子育て中に視聴していた頃は息子に感情移入ができず、恋人が頑張ったのに可哀想くらいしか思っていなかった。
それが子育てが一段落し、再び働きだして5年経つ今、このドラマに出てきた恋人や周囲の憤懣よりも、息子の『向上心より自分に合った平穏な暮らし』を選ぶ気持ちの方が腑に落ちる自分がいる。

■状況は安定したと思ったが■

前回、売り場メンテナンスの担当区域が決まり作業が見やすくなり、接客が苦手なのだからせめて売り場をきれいに売りやすい場に整えようと努めていたら、整っていてきれいだと認められ嬉しかった記事を書いた。
自分のできることを褒められて嬉しかったし、ここなら長く続けられるかも・・・と希望を持った。

しかし、去年暮れから新しく配属された副店長から「売るために雇っているのだから売上を上げてもらわないと困る」とはっきり言われてしまった。

私は込み入った注文があると間違えたり、メンテナンス作業が混んでくると時間内に終わらないので、あまり難しい大きな注文は販売の専門員さんにお願いしていて、自分の大きな売上は上げいていない。
その分メンテナンスの方を頑張っていたのだが、それは駄目だということだった。
そして今日、「これはやり辛いな」と思う決定的な出来事が起こった。

■デジャヴかな■

出勤してすぐ社員さんから、「セールストークを売上の上がっているパートさんからレクチャーしてもらってください」と言われ、同じ短時間パートさんに指導を受けることになった。
彼女は私と年齢は同じ、入社時期は私より1年後である。
彼女も、「相手によって変えてますからその時でないと・・・」と正直やり辛そうだった。
私は内心「とうとう来た・・・」と戦慄した。

今の職場の前にも販売の仕事をしていたことがあり、その職場を辞めた理由をここで書いたことがある。

閉じた人間が理解しようとしてる『フリ』をしていた話。

後から入ってきた年齢の近いパートさんと比較され、仕事を続けにくくなり
辞めている。
今回のタイトルどおり、過去を繰り返しているのだ。

この指示は、直接指示を与えた社員さんの・・・というよりおそらく副店長の指示だと察している。
プライドを刺激し、競争心を煽って売上に向かわせようとする筋書きだと思う。
だが彼は読み間違いをしている。
私の向上心のなさを。

■他人ができれば自分にもできる・・・?■

以前の私ならドン底まで落ち込んで、こんな駄目な自分はもうこの職場にはいられない、いつ辞めようかばかり考えて自己嫌悪に陥っていたと思う。
もう2度と外で働きたくないとも。
その根底にあるのは『他人ができることが自分にはできない』というコンプレックスだ。
だが今回は2回目だからか、割とそこまで一直線に落ちた感じはない。
慣れもあるだろうが(慣れてはいけないのだろうが)、自分なりに考えた事もあるからだ。

自分と彼女の違いは何か。

彼女は入社当初から社内の人ともお客さんとも、とにかくよく会話をしていた。
根本的に人間が好きなのが伝わってくる。いわゆる外交的で、他人との関わりを楽しむタイプだ。
前回の職場で比較されたのもこのタイプ。相手に関心があるので、自然と会話を引き出せるのだと思う。会話の中でよく笑い声が絶えなかった。

反して私は会話は苦手なタイプ。他人に関心も持たないため話題も出てこず、会話をひねり出すのが辛いのでできるだけ喋らずに早く切り上げたい。
もうこの時点で違うのだ。笑い声など湧き出たこともない。

いうまでもなく、接客に向いているのは前者である。相手に関心を持ち、何気ない会話から相手の欲している物を知り、そのニーズに沿って商品を勧める。
文章にして書けばできそうに感じるし、そこまでわかっているならやればいいじゃないかと思われているだろうが、これを念頭に置いても実際は相手を前に言葉がなかなか出てこないのである。

加えて私は相変わらず職場内で連絡先の交換もしなければする機会もないのだが、彼女はこんな私の連絡先を、機会を作ってわざわざ交換しに来てくれたりもした。こちらはまず機会を作るという発想がなかったのに。

前回の職場、そして今回の職場を通して、もういい加減言い切ってしまってもいい。
私に接客は向かないのだ。

■やり辛いまま合わせるよりも、自分にあった環境を求めたい■

このまま大人しく方針に従って我慢していれば、惨めではあるが続けることは可能だろう。
だが、長く続けるとなるとやはり耐え難い。他人に関心がなく向上心もないとはいえ、自分がどう見られているかに全く鈍感な訳ではないのだ。毎日惨めに感じるのは辛い。
なので、これはいい機会ととらえ、帰りにさっそく副店長に部署替えの希望を申し出た。
理由はそのまま、接客が向かないこと、作業系の仕事のほうが続けやすい事だ。
突然の申し出に驚かれたし、今は繁忙期なので希望には添えないと言われたが、それはこちらも承知の上なので、今すぐでなくてもいいので考えてほしいと伝えた。なによりこれ以上プレッシャーをかけられるのは苦痛だし、プレッシャーをかけがいのない人間だと早めにわかっておいてもらえる方が安心する。
この先何も言わずに抱えていたら、仕事中はおろか家で過ごしている時まで辛かったと思うので、思い立った時すぐに言えてよかった。
副店長には申し訳ないが、今日と同じ方法を続けられても私は変わらないし、おそらく周りもやり辛いと思う。
どうしたって売上や点数は自分のも他人のも興味がないし、勝ち負けにも刺激されないのだ。
放っておいてもらえたら「頼れる後輩が増えてラッキー」くらいしか感じなくてよかったのに。
しかし、昨今のご時世、特にここ最近の世情ではそんな甘い考えは許されないのだろう。店全体の売上も落ちてるだろうし。厳しい。

部署替えされようがされなかろうが、どのみちまた新しい転職先を探さないといけないだろうか・・・という不安も残る。が、我慢せず伝えたい事を伝えられた今日の自分は、誰にも自分の胸のうちを言えずひっそりとその場を去っていた今までの自分より少し進めたかな、とむしろ清々しい気持で思う。