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ダンナと愛犬はヨーロピアン #5 ベートーベンが眠る墓地


義父の葬儀とウィーン中央墓地(Wiener Zentralfriedhof)

北海道と同じくらいの緯度にあるオーストリアに、35~40度という異常な暑さの夏がありました。

その記録的猛暑の中、義父の葬儀が『ウィーン中央墓地』内の礼拝堂で執り行われました。

『ウィーン中央墓地』は、樹々の緑が豊かな広大な敷地に、世界最大規模という埋葬数のお墓があります。

ここにはモーツァルト、ベートーベン、シューベルト、ブラームス、80年代に大ヒットした「ロック・ミー・アマデウス」のファルコなどの偉大な音楽家のお墓や、心理学者のアルフレッド・アドラーなどの世界的有名人のお墓が数多くあります。

どこにでもワンコを連れていけるオーストリアですが、この『ウィーン中央墓地』はワンコNG!バッグに入れて顔を出さない状態でも絶対に入ることは許されませんでした。

ワンコは入れないのですが、自然豊かなこの墓地は、死者の他にも多くの動物たちが住む楽園となっています。

リスやアナグマ、鹿、テン、そして鳥たちの憩いの場所です。

お墓参りに来る人々や死者たちも、かわいい動物たちに癒されていることでしょう。

さて、義父の葬儀は敷地内の礼拝堂で行われましたが、義父がウィーン市内の病院で亡くなってから1週間近く経ってのようやくの葬儀でした。

順番が来るまでどこかの冷凍室?に安置されていて、家族も会うことができませんでした。

葬儀はカトリック式ですが、日本のように棺の中の故人のお顔を見るようなことはしません。

ダンナは、子供の頃から死人の顔を直接見たことはないそう。(なので、日本で私の家族の葬儀の際に棺の窓から故人の顔が見えるのにビビっていましたw)

ですから、棺の中にお花を入れてあげるということもしないのです。

そして、葬儀が終わると棺を荷車のようなものに乗せ、家族がその跡をついて歩いて当家の墓地の場所まで行くのでした。

皆さんも、洋画でそのようなシーンを見たことがあるかもしれませんね。

私は、イギリスの故ダイアナ妃の葬儀の参列を思い起こしました。

勿論あんなに大層なものではないのですが、義父との思い出を回想しながら厳かにゆっくりと歩いていくことは、素敵だなと思いました。

礼拝堂から当家の墓地まではかなりの距離がありました。

気温が40度もあろうかという暑さでしたが、墓地の中の道は、両側の樹々の葉が涼しい影の道を作ってくれていたので、あまり辛くはありませんでした。

いよいよ、当家の墓地に到着すると、墓掘りの男性が待っていました。

オーストリアでは最近は火葬もされるようですが、当家は土葬で3つの墓地があり、それぞれに何体ずつかの棺が埋められています。

その上に上にと新しい棺を入れていくんです!

義父の棺が穴の中に入れられると、一人づつ薔薇の花を棺の上に置いていきます。

私の番になりましたが、私は結婚前に在家出家しており、仏教を学んでいたのですが、仏前には絶対に棘のあるバラの花や、頭がボタっと落ちるような椿の花などは供えてはいけないと教わっていましたので、一瞬悩みました。

でもどうしようもありません。

そこで、茎についている棘を全部取り除いてから置きました。

墓掘りの男性には、義母がここでチップを渡していました。

葬儀の後はレストランで家族と義父の友人知人を招いてのお食事会だったのですが、私が驚いたのはその招待客の服装。

うちの家族は全員礼服でしたが、招待客は礼服の方は皆無。黒でもない普通のポロシャツとかだったので、これには「なんだかなあ・・・」と思いましたね。やっぱり故人への礼儀というものも大切でしょう。

遠く日本から来た東洋人の息子の嫁を、とても大切に可愛がってくださったパパ。今は日本在住のためにお墓参りもできず残念ですが、これも国際結婚のデメリットの一つでもあるかなあ・・・


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