山崎まどか

コラムニスト。

山崎まどか

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  • 感傷日記

    映画/ドラマについての自分の記事をまとめました。

  • 優雅な読書が最高の復讐である

    読書関連の自分の記事をまとめました。

最近の記事

本当の必読書

9年前にTumblrに書いたものがサルベージされたので、ここに転載しておく。 「死ぬまでに読むべき百冊」「今読むべき五十冊」「二十代のうちに読むべき百冊」  世の中には、様々な「必読書リスト」が出回っている。  でもこういうリストは、選定者の(俺はこれだけ読んでいるぜ的な)エゴや偏りがどうしても反映される。  本当に読むべき本はどこにあるのか。ウェブ文芸マガジンのThe Millionが出した必読書リストは、一味違っていて面白い。 ・レジで本屋の店員がそれを巡って口

    • Romantic au go! go! ドラマ大賞2023

      Romantic au go! go!とEverything coolのドラマ大賞、今回は総評をSpotifyで公開しています。 私の分のノミネートの全リストは以下の通り。★印がウィナーです。 ベストエピソード ・Documentary Now!S4E6 ・サクセションS4E3 ・一流シェフのファミリーレストランS2E6 ・ラスト・オブ・アスS1E3 ・ジュリー・デューティ〜17日間の陪審員体験E7 ・バツイチ男の大ピンチE7 ・マーベラス・ミセス・メイゼルS5E6 ・キ

      • 女子映画大賞2023

        女子映画大賞とエブリシングクールの映画賞、今年は総評をSpotifyで公開しています。長いので三分割になっています。 私の分の全ノミネートのリストは以下の通り。★印がウィナーです。 映画の中のフード賞 ・ベラが甘いものの官能に目覚めるポルトガルのエッグタルト(哀れなるものたち) ・チョコレートの胸像が乗っているシックなバースデーケーキ(エリザベート1878) ・王女を虜にする薔薇の香りの揚げ菓子ベニエ(古の王子と3つの花) ・バンズだけ捨てられるマクドナルドのエッグサン

        • 優雅な読書が最高の復讐である/The Goodby People

          この本には因縁がある。 コロナ前の2019年、メキシコ旅行でのことだ。 私は父の仕事で幼少期の重要な二年間を過ごしたクエルナバカを訪れた。 そこでロバート・ブラディ・ミュージアムを知った。 ロバート・ブラディはアイオワ生まれのアメリカ人の画家で、1962年にこの土地にやって来て、16世紀の修道院だった建物を買い取り、そこに自分が集めてきた美術や民芸品を飾って終の住処にしたという。1986年に彼が亡くなると、そのコレクションと建物は市に寄贈されて美術館となった。 私は

        本当の必読書

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        • 感傷日記
          15本
        • 優雅な読書が最高の復讐である
          14本

        記事

          優雅な読書が最高の復讐である/Lives of the wives

          作家というのは、24時間、他のことは全部閉め出して、面倒な雑事は人にお任せして、ただただ文章を書いていたい、自分のビジョンについて考えて、それ以外のことは何もしたくない種族、しなくてもいい特権的な人たちなのだという神話が長いことあって、そういう人にはどうしたってかしずく人、相手の仕事を全面的にサポートする人が必要になってくる。(少なくともある時期まで)「作家の妻」というのはそういう人たちだった。  ところが面倒なことに、作家っていうのはただ自分に従ってくれる女は退屈だから

          優雅な読書が最高の復讐である/Lives of the wives

          優雅な読書が最高の復讐である/Either/Or

          読んでから少し時間が経ってしまったけれど、The idiotに続いて読んだエリフ・バトゥマンのEither/Orについて書いておこう。  The Idiotと同じく作者のアルター・エゴ、セリーンのハーバード大学2年目の物語だ。 「その人たちはHotmailというものの存在を知らないの?」という台詞やフージーズのKilling me softly with his songのシングルカセット(そういうものが存在した)をタワーレコードで買う描写が1996年という時代を感じさせる

          優雅な読書が最高の復讐である/Either/Or

          追悼バート・バカラック

          写真は、私の持っているバカラックコレクションのコンプリートではない。 (既にパーシー・フェイスの素晴らしいアルバムや、1965年の彼のヒット曲だけを集めたコンピレーション盤など何枚か抜けているのに気がついて舌打ちをしている)  20代の一時期は、中古レコード屋で「バカラック&デヴィッド・ソングブック」と名のつくアルバムを見かけたら片っ端から買っていた覚えがある。おかげで我が家には大量のイージーリスニング盤がある。彼の名前が冠してなくても、バカラックの曲が一曲でも入って

          追悼バート・バカラック

          優雅な読書が最高の復讐である/The Idiot

          エリフ・バトゥマンの「イディオット」は、ミランダ・ジュライが激賞していて、グレタ・ガーウィグもお気に入りの一冊に選んでいたので、気になっていた本。 ピューリッツァー賞の候補にもなったし、そのうちに翻訳されるだろうと思ってリストには入れていなかったが、インスタのコメントでお勧めしてくれる人がいたので読んでみた。 舞台は1996年のハーヴァード大学。主人公のセリーンは(作者と同じく)トルコからの移民二世。寮のルームメイトはアジア系とアフリカ系、親友になる強引なスヴェトラーナは

          優雅な読書が最高の復讐である/The Idiot

          Romantic au go! go! ドラマ大賞2022

          どちらかというと女性ドラマ/軽い作品中心のバイアスがかかりまくった私のドラマ賞はこちら。★印がウィナー、★印がないものは総評と共に「ラジオのように」で発表しています。 ドラマの中の書籍賞 ・ロケ地に向かう車やトレーラーの中で読む本(イルマ・ヴェッブ) アシスタントのレジーナが読むジル・ドゥルーズ ゴッドフリートが読む「ヒトラーとドラッグ 第三帝国における薬物依存」ノーン・オラー ・マリリンがウェンズデイに渡すメアリー・シェリー「フランケンシュタイン」(ウェンズデイ)

          Romantic au go! go! ドラマ大賞2022

          女子映画大賞2022

          今年も(私だけの)女子映画大賞を発表します。 ★印があるのがウィナー。★印のない部門はこちらの「ラジオのように」にて、総評とともに発表しています。 映画の中のフード賞 ・奮発して頼むホテルのケーキ(マイ・ニューヨーク・ダイアリー) ・パイの店のほうれん草とチーズ、アーモンド粉のクラストのキト・キッシュ(恋人を取り戻すには) ・アイスクリームふたつチェリーひとつのミルクシェイク(ガンパウダー・ミルクシェイク) ・サラミやチーズの入った悪趣味なパン(カモンカモン) ★昔ながら

          女子映画大賞2022

          Romantic au go!go!ドラマ大賞

          では、引き続いてドラマの方のベストを。くわしい論評はこちらで。 ドラマの中の書籍賞 ・Girl Woman Other/Bernardine Evaristo(マスター・オブ・ゼロS3) ★Black Swan/Eve Babitz(新ゴシップ・ガール) ・蝿の王(コブラ会S3) ・罪と罰(フライト・アテンダントS1) ニューカマー ・アラクア・コックス(ホークアイ) ・ジェイムス・カヴァリー(マーダーズ・イン・ビルディング) ・ジェシー・ジアコマッチ(バリーS2) ・ト

          Romantic au go!go!ドラマ大賞

          女子映画大賞2021

          2022年になって半月過ぎましたが、昨年末に決めた(私だけの)女子映画大賞を今更発表します。気がついたらもう長いことやっている。 くわしい論評についてはこちら↓をお聞き下さい。 それではノミネート&ウィナー(★印)を。 映画の中のフード賞 ・お茶会のスモーキー・パステルカラーのお菓子の数々(EMMA エマ) ★アーモンドたっぷりの青酸カリ入りタルト(キングスマン ファースト・エージェント) ・お母さんの作るおいしくないグルテンフリー・アップルパイ(ディア・エヴァン・ハンセ

          女子映画大賞2021

          優雅な読書が最高の復讐である/さよならイヴ・バビッツ

          12月17日、作家のイヴ・バビッツがハンチントン病の合併症によって78歳で亡くなった。 編集長から許可をもらって、CDジャーナルの2020年秋号に私が書いた彼女についての記事をここに再録する。 どこにも出かけられなかった今年の春はイヴ・バビッツの「Eve’s Hollywood(イヴのハリウッド)」(1974)を読んで過ごし、やはりどこにも行けなかった夏はイヴ・バビッツの「I used to be charming(かつて私は魅力的だった)」(2019)を読んで過ごした。彼

          優雅な読書が最高の復讐である/さよならイヴ・バビッツ

          優雅な読書が最高の復讐である/A Sunday in Ville-d’Avray

          11月。 ソフトの立ち上がりが悪く、その間にちょっとだけ目を通そうかと思った小説を一気読みしてしまう。タイトルは「A Sunday in Ville-d’Avray」。ドミニク・バルべリスというフランス女性作家の英訳本である。  今年、アルフレッド・ヘイズの「In Love」という小説に夢中になり、感想を書いている人はいないかとサーチしていて見つけたブログで、この小説を見つけた。アンニュイな日曜日に、もっと憂鬱になることは間違いないのに、パリからヴィル=ダヴレーに住む姉を

          優雅な読書が最高の復讐である/A Sunday in Ville-d’Avray

          優雅な読書が最高の復讐である/レイチェル・カスク

          11月。  朝、レイチェル・カスクのJusticeという短編を読んだ。  この作品におけるJusticeという言葉を訳するのは難しい。正義や道理、というのとも、報いというのとも違い、その全部の意味であるかのようでもある。  レイチェル・カスクの小説の特徴である、長い独白が占める割合の大きな小説だ。話している人間はカスク本人らしき作家にインタビューをしに来た女性の記者。カスクは何年か前にもこの人物から取材を受けていて、彼女が話してくれた、鐘の音が響く小さな街での静かな生

          優雅な読書が最高の復讐である/レイチェル・カスク

          感傷日記/ポリー・プラット

          10月。 ようやく「You must remember this」のポリー・プラットの回を聴き終わった。 今年になって知った「You must remember this」はすごいポッドキャストだ。黄金期ハリウッドに関する興味深い話が満載である。「ゴシップ・ガールズ:ルエラ・パーソンズとへダー・ホッパー」「エスター・ウィリアムズとウォータープルーフ・メイクアップの誕生」、セルマ・トッドからマリリン・モンロー、バーバラ・ローデン、ドロシー・ストラッテンまで不幸な金髪女優たちを網

          感傷日記/ポリー・プラット