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優雅な読書が最高の復讐である/The Idiot
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ハンガリーは段々と「戦争と平和」を読んでいるみたいな感じになってきた。5分おきに変わった名前で独特の話し方をする新しい登場人物が現れて、この後の物語でもう遭遇することはないと分かっていても、とりあえずその相手に集中しなくてはならない。
エリフ・バトゥマンの「イディオット」は、ミランダ・ジュライが激賞していて、グレタ・ガーウィグもお気に入りの一冊に選んでいたので、気になっていた本。
ピューリッツァー賞の候補にもなったし、そのうちに翻訳されるだろうと思ってリストには入れていなかったが、インスタのコメントでお勧めしてくれる人がいたので読んでみた。
舞台は1996年のハーヴァード大学。主人公のセリーンは(作者と同じく)トルコからの移民二世。寮のルームメイトはアジア系とアフリカ系、親友になる強引なスヴェトラーナはセルビア出身で、セリーナの初級ロシア語のパートナーはハンガリー人のイヴァン、イヴァンのルームメイトはルーマニア人と出てくる学生たちは多様なバックグラウンドで、そうか、これが当たり前なんだなと改めて気がつく。
セリーンは初級ロシア語教科書の(妙にマリッジ・プロットめいた)シュールなテキストの読み合わせをしている内にイヴァンのことが気になって、教科書の設定を使ったおかしなメールを送ってしまう。彼がそれにまた微妙にズレた返信をしてきて、実態のない空中戦みたいな、恋のような恋でないような関係が始まる。
(イヴァンが究極の匂わせ男なのか、不器用なセリーンを本気で持て余しているのか、他の人の意見も聞いてみたいところだ)
でも、そんなよく分からないイヴァンの口利きで、セリーンは何故だが夏休みにハンガリーの地方で子供たちに英語を教えるプログラムに参加することになってしまうのである。
ロスト・イン・トランスレーションと、ディスコミュニケーション。滑稽なまでお互いの言いたいことが伝わらないまま、結ばれる儚い絆。セリーンが最初は言語学を志しているので、ハンガリー語とトルコ語の不思議な符号の話が出てきたりして、興味深い。でも、結局ハンガリーでの経験とイヴァンとのよく分からなかった関係の終わりを経て、セリーンは言語学を諦めてしまう。
無機質なユーモアに溢れた小説で、登場人物たちのその後も気になったので続編の「Either/Or」も買ってきた。二年目は文学の講義項目を中軸にして展開するようなので、そこも楽しみだ。
そういえばこの本は「消えた16mmフィルム」のサンディ・タン監督で映画化が進んでいたはずだけど、どうなったのだろう?
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