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セントライト記念と、夏の上り馬

 まるでひと時代前のセントライト記念のように、人気薄を含めた美浦陣営だけで馬券圏内(3着内)が収まった今年の着順。
 9番人気、単勝4270円のアサマノイタズラが1着。新馬戦を負けている1勝馬で、重賞勝ちなし。前々走皐月16着で、前走ラジNが12着では買いずらいです。
 よく単勝万馬券にならなかったものですね。2.9倍の1番人気タイトルホルダーからこっちに田辺騎手が乗り替わったということは、素質馬だったのでしょうか?
 
 19日日曜に、新刊の無料キャンペーンを行いました。

 たくさんの方にご注文いただき、ありがとうございました。無料なので売り上げはゼロですが、でも書き手として一人でも多くの方に読んでもらえるのは、とてもうれしいです。
 引き続き、kindle unlimitedでは無料で読めます。
 
 この小説の1巻が3月4月、2巻が5月6月のことを書いていて、この3巻は、7月8月の夏競馬の内容です。大レースのないオフシーズンですが、この空き家のような時期に、ときおり、すごい勝ち方で連勝する馬が出てきます。この小説で主役の馬の最大のライバルとなるフレアを、それに当てはめています。
 
 フレアはローカル競馬最長距離の函館2600メートルをあっさり大差勝ちし、1勝馬クラスに出走します。

 2周目に入り、向こう正面はそのままの隊列で流れたが、第3コーナーで動きがあった。あの函館の未勝利戦を大差勝ちした馬が、馬なりで南條の馬を追い抜かしていったのだ。直線で坂がない競馬場だという予備知識があったことで、ちょうど弥生も3コーナーに向けて動き出していた。だからその追い抜くさまをはっきりと見た。
  
 ―― えっ、なにあれ!
 
 まるで南條の馬など意識にないというような抜かし方だった。邪魔なんかされたくないといった感じで、必要以上に大きくコーナーをまわっている。そう簡単に抜かせるかと南條がペースを上げるが、脚がまったくちがう。1番人気の馬は先頭に立っても埒沿いに入ることもなく、距離のロスもかまわず外目を進んでいく。
 南條以下、他馬は離されていく一方だ。その桁違いの末脚に、場内がざわめく。
 
「8馬身、9馬身、後続を離す一方だ。これは強い強いっ!」
 
 場内アナウンスがその走りを盛り上げる。馬群に沈んでいく弥生からは、その馬が粒のように小さくしか捉えられない。
 ゴールして、弥生はその勝ち馬を目で探した。
 2600メートルの長距離戦で2戦連続大差勝ち。前走未勝利戦を走ったということは、3歳馬だ。当然、菊花賞を視野に入れてくるはずだ。

 
 ローカルで開花する素質馬は、相手関係に恵まれることから、派手な勝ち方をします。しかも、夏のローカル開催の間にできるだけクラスを上げようと、まとめてレースを使うので、特に強く感じます。これは、春のGⅠ戦線を沸かせた実力馬をなぎ倒すのではないか。そんな期待をファンに抱かせるのです。
 競馬ファンの間では、「夏の上り馬」と言われるそんな馬たちの多くは、9月からの本開催になるとあっさり負けてしまいます。夏の連戦の疲れと、相手関係の強化から、そこで終わってしまうのです。
 
 今回のセントライト記念でぼくが注目した2着のソーヴァリアントも、「夏の上り馬」と言っていい1頭でした。
 新馬3着で、不運な失格はあったものの、初勝利まで4戦を要します。そして初重賞が4着。8番人気だったので、さして注目を浴びていませんでした。
 皐月、ダービーの時期は休み、ローカル札幌であらためて使いだします。
 6月特別戦で6馬身ぶっちぎって、8月も3馬身半差の勝利。どちらも4角先頭で後続を引き離す、強い内容のレース。
 そして本開催の菊花賞トライアル、セントライト記念で2番人気の評価。残念ながら勝ち馬にクビ差交わされましたが、ローカルで恵まれた連勝ではなかったことを証明しました。本番菊花賞の権利も獲れましたし、今後は1戦級の中に入って結果を出してくれそうです。
 
 しかし、実際には3着のオーソクレースの方が注目を浴びるでしょう。まだ3戦しか走っていない馬ですが、新馬、特別を連勝して、2歳GⅠを2着。そして9ヶ月の休み明けを今回3着。ローカルの「上り馬」以上に、成績にキズのない馬を、ファンは好みます。特に、クラシックレースであればなおさらです。ましてやリーディングジョッキーのルメールというおまけつき。もし本番でもルメール騎乗なら、今週行われる菊花賞最大のトライアル神戸新聞杯の結果次第ですが、1番人気も考えられます。
 
 ともかくぼくは、「夏の上り馬」ソーヴァリアントを応援します。

 
 こちら1巻、2巻も、kindle unlimited対応で無料です。

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