第38話 父母:プリンといえば?

 ボクが社会人になって実家に帰省するときは、よくおみあげを買っていた。
 というか義務になっていた。
 最初の頃は、
「そんなに毎回、毎回、買って来なくていいよ」
 と母は言っていた。
 しかし、ある日何も買わずに帰省したときに、
「あれ?何もないの?」
 という顔をしていたので、
「あれ?やっぱり買ってきた方が良かった?」
 と母に尋ねたら、
「そりゃあねぇ、あった方がねぇ…」
 と言っていた。
 父はそれを聞いてゲラゲラ笑っていた。
 どうやら建前と本音は違うらしい。
 だから実家に帰省するときは極力おみあげを買うようにしていた。

 そんなボクがよく帰省するときに買っていたものがプリンだった。
 特にモロゾフのプリン。
 父も母もこのプリンが大好きだった。
 プリンと言えばモロゾフのプリンだった。
 モロゾフのプリンというのは、ちゃんと伝わるかどうか分からないが、弾力があるのだ。
 主流になりつつあるなめらかプリンとは違う。
 この弾力のある昔ながらのプリンが好きなのだ。
「これこそ王道」
 と言っていた。
 何様のつもりだとボクは思った。

 しかし、この2人。
 モロゾフのプリンが王道と言っているのは確かだが、何もなめらかプリンが嫌いなわけじゃない。
 なめらかプリンはなめらかプリンでちゃんと食べるのだ。

 ボクは帰省するときに何も両親だけのプリンを買うことはない。
 両親だけプリンを食べて、ボクが食べられないなんて忍びないじゃないか。
 だからボクは自分のプリンの分もちゃんと購入する。
 こういうところは次男っぽいなと自分で思う。

 ボクはこのとき自分の好きな、なめらかプリンを購入する。
 別に両親の好みには合わせない。
 しかし、なめらかプリンを1個だけ購入するというのは何か店に申し訳ないと感じてしまう。
 というより、店にケチな野郎だと思われるのが嫌なのでもう2個ほど購入する。
 ボクは見栄っ張りなのだ。

 そうして5つのプリンを持って家に堂々と凱旋するだが、父と母はそのモロゾフのプリンとなめらかプリンを両方食すのだ。
 当然の如く。
「キリンさんが好きです、でもゾウさんの方がもっと好きです」
 ということだろう。
 ホント笑っちまうぜ!!
 まぁでも、プリン2つで父と母の喜んでくれている顔を見れるなら安いものである。

 ちなみにこれは余談だが、モロゾフのプリンは容器がしっかりしたガラスなので、食べ終わったしばらくの間は、ちょっとした我が家のコップ代わりになる。

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