【SELによる文化醸成】子どもたちの関心を広げ、チャレンジしたくなる環境をつくる
rokuyouではカリキュラムコーディネーターとしてエディブル・スクールヤード(島っ子エディブル)に関っています。そこでは、SELのアプローチの一つである「文化醸成」を実践しています。SELを土台にし、子どもたちと関わることで、主体性やワクワク感、挑戦する姿勢が向上しました。
なぜ文化醸成を行う必要があるのか、文化醸成を行う前と後とではどのような変化があったのかをお伝えします。
■子どもたちの変化
〜「何を描いたらいいのか分からない」から「好きなものを自由に描く」ように〜
【Befor】
関わり始めた当初は「畑で好きな絵を描いてみよう!」と伝えて画用紙を渡しても、「何を描けば良いかわからない」「描き方がわからない」「絵が下手だから嫌」という子が多くみられました。
【After】
ノンジャッジメンタルを徹底し継続すると、「描きたくない」という子がだんだんと減少。
「なんでもいいの?」という質問は返ってくるものの、自分で描くものを決めることや自由に描くことができるようになりました。
「ジャッジされない」という安心感があることで、子どもたちには自分で何かを見つける力が育まれると感じた出来事でした。「ここではジャッジされないのだ」という心理的安全性は、すぐに理解できるものではありません。長い時間をかけて、子どもたちの心に少しずつ根付いていったといえます。
■子どもたちの変容のプロセスはどのように起こったのか?
ここでは、環境づくりで行った働きかけの一例をお見せします。
あり方、関わり方を体現する
1. ノンジャッジメンタルの姿勢
"雑草がきれいに抜けた" といったことにも、「根っこはこんなにちぎれないで抜けるんだね!」「雑草抜きの達人じゃない?」というように、一つ一つ一緒に感動します。そうすると、子どもたちが調子に乗って、次から次へと雑草を抜き出すといった連鎖が起きます。
さらに、子どもたちの発見を一緒に面白がって、リアクションしていくと、他の子どもも巻き込んでいくことができます。「雑草抜きの達人がいるから教えてもらった方がいいよ」「〇〇が雑草抜き上手だからやり方聞いてきて」などと他の子に声をかけると、雑草抜きの達人が「これはさー、ゆっくり抜くと土がハラハラ落ちて、きれいに抜けるから!」と教えてくれるなどのシーンが見られるようになります。こうなれば、楽しい雑草抜きの時間の始まりです。
2. 挑戦を促す
畑の観察をしていると「トマトが緑色のものが赤色に変わって美味しそう」といった話題が出たり、「緑色のトマトって食べれないの?」という疑問が膨らんだりします。そんなときは、美味しいのかみんなで考えてみて「ちょっと食べてみよう」と挑戦を促します。こうした小さな冒険を、子どもたちはとても喜びます。
食べられるか・有害ではないかは専門家に確認をし、試してみましょう。この「ちょっと試してみる」を積み重ねたことで、島っ子エディブルの子どもたちは「試す面白さやワクワク感」を感覚として理解してきているのではないかと思っています。
SELでは、子どもたちの「これが気になる」「自分はこういう感覚を持っている」「これを食べたらこう感じた」というセルフアウェアネス(自己認識)を促進することを大事にしています。
あるいは、あるがままを受け入れられる環境で自分自身を表現することを経験することによって、子どもたちは自分が心を駆り立てられたものに対してアクションする主体性を身につけていくことができるのです。
■なぜこのアプローチを行ったのか
これを「SELによる変容図」で言い換えると、従来はジャッジされてしまう環境で、心理的安全性が担保されていなかったため、自分の中の感情や思考に気づく余白・余裕がなく、あったとしても感情や思考を表現できる環境が整っていなかったと考えられます。そのため、まずは「ジャッジされない環境」をつくり、ジャッジされることのない安全な場所であると体感覚的に理解してもらうためのアプローチ(文化醸成)を行いました。
続いて、子どもたちが感じていることを表現したり、やってみたいことに挑戦したりすることに対して、積極的に「いいね、やろう!」と促しながら、楽しむ雰囲気をつくることを大切にしました。
すると、「指示してくれる」という感覚から、「これをやってみようかな」や「これよりこっちのほうが好き」などと子どもたち自身で選べるようになり、主体性や挑戦する様子が見られるようになっていきました。
もちろん今も、「このタイミングでこの道具を使用してもよいか」「この虫は触っても大丈夫か」などの安全確認のための質問や確認はあります。しかし、自分がやりたいと思っていることに対しては、大人の顔色を伺う様子はみられなくなりました。
■【振り返り】rokuyouの関わり
先に何度もお伝えしている通り、主に文化醸成に力を入れて取り組みました。
最初の段階で、子どもたちだけではなく保護者にも「ノンジャッジメンタル」を根付かせたことがポイントだと考えています。SELの素地を持って現場で体現していたものが、子どもたちだけでなく保護者の土台にもなっていきました。
エディブル・スクールヤードでは、ガーデンの時間があったり、キッチンで包丁を使う時間があったりします。食材を切るときにも一人ひとり面白いと思うポイントが違っており、「自分は薄く切れるんだ!」という子もいれば、「自分は早く切れるんだ!」という子もいます。
こうした個々の子どもたちならではのモチベーションに寄り添って、話を聞いて「すごいね」「こういうことが好きなんだね」というコミュニケーションを重ねていった先にこそ、自分の心が駆り立てられたものに対してアクションしてみるという主体性の芽が出てくるのだと実感しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?