『裏の効率』・『表の非効率』
[要旨]
これからの時代は、商品ではなく、サービスで差別化を図ることが重要であり、お客様の立場に立って、商品購入前のビフォアサービスや、商品購入後のアフターサービスを強化することで、顧客満足を高めていくことが重要です。これを実現するために、「裏の効率」・「表の非効率」という考え方で、事業活動の改善を行うことが求められます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの佐治邦彦さんのご著書、「年商1億社長のためのシンプル経営の極意」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、ビジネスの目的は、顧客の課題解決ですが、架空の人物である「ペルソナ」を設定し、そのペルソナ一人を自社の顧客に絞り込むこで、顧客の問題を明確にでき、そして、顧客の問題解決を追求することで、高い顧客満足を実現し、さらに、収益性も高めることが可能になるということを説明しました。
これに続いて、佐治さんは、これからの時代は、商品そのものではなく、商品に付帯するサービスで差別化することが重要ということを述べておられます。「これからの時代は、商品ではなく、サービスで差別化を図ることが重要です。お客様の立場に立って、商品購入前のビフォアサービスや、商品購入後のアフターサービスを強化することで、顧客満足を高めていくことが重要なのです。これを、『裏の効率』・『表の非効率』と言います。お客様と、直接、接点を持たない部分に関しては効率的にして、そして、お客様と接点を持つ部分は手間を惜しまず丁寧に行う、ということです。裏の効率で代表的なものは、『在庫管理』、『商品管理』、『人材育成』です。
幅広いお客様に対応するために、取扱商品を多くすると、この3つの仕事が増え、社員の業務が多忙になっていきます。さらに、新しい人材を採用しても、戦力化するのに時間がかかるのです。そして、裏側が非効率になれば、それだけお客様との接点を持つ時間がなくなり、顧客の心をつかむことができなくなります。ミッションを明確にすることとは、お客様が求めているものを明確にし、そこに対して商品のみならず、サービス品質を高め続けていくことです。顧客にとって、他社よりも高い価格でも買いたくなってしまう価値のあるサービスとは何なのかを追求することなのです。顧客に高い付加価値を提供することで、顧客満足と収益の最大化を同時に実現することができるのです」
私が「裏の効率化」で思い出すのは、日本酒の「獺祭」を製造している旭酒造です。同社では、かつては、他の酒造会社と同じように、冬の期間だけ、杜氏に酒造りを依頼していたものの、あることがきっかけで、酒造りをマニュアル化し、若手の従業員でも酒造りができるようにしました。その結果、冬だけしかつくれなかった日本酒が、年間を通して製造できるようになり、販売量を増やすことができるようになりました。その後の「獺祭」の躍進は多くの方がご存知の通りであり、東京都内の高級料亭だけでなく、いまでは、外国に販路を開拓し、業績を伸ばし続けています。
佐治さんもご指摘しておられるように、これからの時代は、サービスに価値が求められる時代です。旭酒造の会長の桜井博志さんは、社長在任当時、料亭を訪問して、獺祭がどのような料理に合うか、どのように保管すると味が落ちないかを伝えるなど、ビフォアサービスに力をいれ、獺祭の販売を伸ばしています。したがって、旭酒造は、酒造りをマニュアル化(裏の効率)によって、ビフォアサービス(表の非効率)に注力できるようにしたことが大きな要因といえるのではないでしょうか?現在、なかなか自社製品を差別化できないと悩んでいる経営者のかたは、「裏の効率・表の非効率」を切り口に、改善策をご検討することをお薦めします。
2024/1/24 No.2597
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