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アルプスの地図でピレネーを下山


[要旨]

事業の改善策は、必ずしも成功するとは限りませんが、それを理由にしてなんら改善活動を行わなければ、いつまでも成功に近づくことはできません。したがって、改善策が成功するかどうかよりも、部下たちが納得できるものを考案し、意欲をもって実践できるようにすることが臨まれます。


[本文]

先日、一橋大学の楠木建教授のご著書、「ストーリーとしての競争戦略」を読みました。そして、同書からは多くの気づきを得ることができましたので、今回から数回にわけて、それを紹介したいと思います。今回は、ストーリーの重要性です。楠木教授は、経営学者の間で有名な、アルプス登山での遭難に関する逸話をご紹介していました。

すなわち、かつて、ある登山隊がピレネーに登山したとき、猛吹雪に遭って基本装備を失ってしまった。しかし、幸い、ひとりの隊員が地図を持っていたため、それを頼りに下山することにした。そして、全員が無事に下山できたのだが、下山してから、隊員の持っていた地図は、実は、ピレネーの地図ではなく、アルプスの地図だったことがわかった、というものです。

この逸話の主旨は、事業活動で大切なことは、リーダーの示す方向性(地図)が正しいかどうかではなく、構成員が納得して行動すること(登山隊が地図を持っていることによって、下山できる希望があること)ということのようです。確かに、リーダーの指示が誤っていてもよいとは言い切ることはできませんが、リーダーが正しい指示を示したとしても、部下に納得してもらえなければ意味がないといことも、その通りだと思います。

そして、ここからは、私の考えですが、事業の舵取りは、不透明な部分が大きいので、どのような活動をすることが正解かに労力を注ぐことは、あまり賢明ではないと思います。むしろ、部下たちに対して、どれだけ納得できる方針を示すことができるか、そして、もし、それが誤っていたとしても、それに対処できる能力をどれだけ持っているかということが、経営者には問われるていると思います。

経営者の方の中には、事業を改善しようとするとき、改善策の成否が確実ではないということを理由に、その実践に消極的な姿勢を見せる方が、しばしば、観られます。しかし、そもそも、事業活動には確実なものはないわけですから、確実性が高くないという主張は、改善策を実践しないための言い逃れの面が強いと思います。

もちろん、改善策のすべてが成功するわけではないことも確かですが、活動しなければ、いつまでたっても成功はしません。ですから、繰り返しになりますが、改善策は、成功するかどうかよりも、納得性が高いかどうかに労力を注ぐべきでしょう。

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