成功している会社の社長は実は臆病
[要旨]
事業を安定的に成長している会社は、資金計画を立てた上で、それに基づいて資金回収を確実に行うことで、資金不足となることを防ぎ、その結果、リスクに強くなっているようです。したがって、月次決算を行い、緻密な計画を立て、それを達成するための活動が重要と言えます。
[本文]
今回も、前回に引き続き、税理士の児玉尚彦さんのご著書、「会社のお金はどこへ消えた?-“キャッシュバランス・フロー”でお金を呼び込む59の鉄則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。児玉さんは、安定的に事業を成長させている会社は、キャッシュフロー(CF)の準備を周到に行っているということを説明しておられます。
「創業期の途中でお金がなくなってコースアウトしていく会社は、借りたお金を、もらったお金のように、安易に使ってしまったり、ちょっと儲かったくらいで、節税と称してお金を使い切ってしまう会社です。創業期を乗り切って、成長期に入ってからも、増収増益を持続することはたいへんです。事業計画を着実に達成している会社の社長に、成功の秘訣をきいたら、『実は、ものすごく臆病なんですよ』という答えが返ってきたのには驚きました。外部から見ていると、大胆な戦略で成果を挙げているように見えるのですが、実は、状況が変わるのを想定して、いくつもの対策を準備しているとのことでした。
具体的には、常にお金は半年以上前から余裕を持って準備していて、新たに調達したお金を使い切るまえに、必ず回収を図っています。これに対して、成長期において、会社の成長スピードに比べて、お金の調達能力と、社内体制が追い付かないと、事業の成長が失速して行きます。売上と利益だけで経営を勧めて、売れ残り在庫や売掛金の貸し倒れで、大きなお金を失って失敗するのは、この時期です」(255ページ)
事業活動にはリスクがつきものです。そこで、リスクに対して十分な備えを行うことが、事業を安定的に成長させるための工夫のひとつだと思います。しかしながら、実態として、事前の準備を実践する会社は少ないようです。児玉さんの顧問先の事例では、半年前から資金繰を計画しているということです。この資金繰計画ですが、これを作成するには、その前提として月次決算を行っていないと、計画を作成することは、実質的に不可能です。また、計画を作成したとしても、計画通りに資金繰が行われていることを確認するためにも、月次の会社の収支を迅速に把握できなければなりません。
そして、この月次決算を行っている中小企業は10%程度しかありませんので、多くの会社は、計画を持たず、成行で事業活動を行ってしまうことになります。そこで、リスクへの備えもほとんど行われないことになり、ちょっとした向かい風にも業績が大きく影響を受けることになると考えることができます。とはいえ、このことは当然のことであり、理解は容易だと思います。しかしながら、繰り返しになりますが、いまだに計画的な事業活動を行っている会社は少ないようです。これは、裏を返せば、月次決算を行い、計画的な事業活動を行っていれば、ライバルとの競争に優位に立つことができるということができます。競争に勝つには、商品や戦略の優位性だけではないと、私は考えています。
2023/1/2 No.2210
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