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生涯設計キャリアアップシート

[要旨]

ニトリでは、会社が長期目標と短期目標を作成しているのと同様に、従業員の方にも生涯設計キャリアアップシートを作成してもらっています。このことによって、各自の目標と、会社の目標の平仄を揃えることができ、会社の目標を達成するための活動によって、従業員の方が自分も目標を達成すことができるということを認識できるようになります。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんのご著書、「ニトリ-成功の5原則」を読で、私が気づいたことについてご紹介します。前回は、似鳥さんが、従業員の方の満足度を高めてもらうために、会社を自分の成長を感じることができる場にするよう働きかけてきたということを説明しました。今回は、そのための具体的な方法として、似鳥さんが活用してきた、「生涯設計キャリアアップシート」について、ご紹介します。

「社員一人ひとりが、成長を続けていくためにも、会社としてのビジョンとは別に、ぜひ、社員個人にも、自分のビジョンを持ってほしいと思っています。個人のビジョンとは、20年先、30年先に、『自分がこうなっていたい』という姿です。頭にその姿を描いて、そこに向かって、日々、進んでいくのです。個人としてのビジョンを持ってもらうために、ニトリでは、社員全員に、『生涯設計キャリアアップシート』という表を配布し、記入してもらっています。『あなたのなりたい未来はなんですか』と質問し、未来から逆算しながら、今の時点で希望している、30年後、10年後、5年後、3年後、1年後の自分の姿を書いてもらいます。(中略)

このキャリアアップシートは、私自身が、『会社の計画があるように、個人としての計画もあった方がいい』と考え、10年ほど前から始めたものです。以前から、『社員それぞれ、個人としての目標を書いて出すように』と言っていましたが、みな口では『はい、わかりました』というだけで、ちゃんと書いてきた人は、10人に1人くらいでした。そういうことでは、みな、『ただの人』で終わってしまいます」(105ページ)

従業員の方も、各々のキャリアについて計画書を作って日々の仕事に取り組めば、従業員の方が、確実に成長するということは、理解に難くないでしょう。しかし、似鳥さんは、本には、直接的には書いてはいませんが、ニトリのキャリアアップシートの本当の目的は、会社の目標と、従業員の方の目標の平仄を揃えることだと、私は、分析しています。すなわち、従業員の方にとって、なりたい自分になるための活動を実践することが、会社の目標を達成することにもなるのであれば、一石二鳥になります。

少なくとも、従業員を滅私奉公的に働かせることによって利益を得ていたり、従業員の育成に関して会社がなんら関与しなかったりする会社よりも、キャリアアップシートを書いてもらい、会社で働くことが自分の成長につながることを認識してもらっている会社の方が、確実に、高い成果を得ることができることは、明らかでしょう。

2022/10/29 No.2145

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