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おうちでできる!?糖尿病にならないための高血糖予防

みなさんは糖尿病と聞いたらどういった印象を持ちますか?

中高年の男性や肥満の人の病気というイメージをもたれがちですが、近年は20~30代の若年層や女性にもみられる病気となっています。
日本の成人のうち、約5人に1人が糖尿病予備軍といわれる現代において、気づいたら透析生活になっていたなんて手遅れにならないよう、普段からの生活習慣の改善が大切です。

生活習慣病の対策はバランスの良い食事、適度な運動などありますが具体的にどうすればいいか、基本的な対策をこの記事で学んでいきましょう。



血糖値って何?

血糖値とは、血液中に含まれているグルコース(ブドウ糖)の濃度のこと。

血糖値は、高すぎず低すぎず、正常な範囲を保つことで体の不具合を抑えます。
食事をすると、パンやご飯、麺などに含まれる炭水化物が分解されてブドウ糖になります。
これが吸収されると肝臓から血液に放出されて、血糖値が上がります
また運動によるエネルギー消失により、血糖値が下がります
なので健康な人であっても、空腹時と食後、運動の前後で血糖値に差があります。

人間の体では血糖値を下げるホルモンと上げるホルモンとがバランスよく働いているため、大幅に下がりすぎたり上がりすぎたりせず血糖値は一定の正常範囲内で変化しています。
しかし糖尿病の人の場合、このホルモンの作用がうまくいかず、異常な高血糖にもなりえます。

血糖値

血糖値を下げるホルモンであるインスリンはすい臓で作られ、ブドウ糖を筋肉などへ送り込み、エネルギーとして利用します。
血糖値を上げるホルモンとしてはグルカゴンやアドレナリン、コルチゾールや成長ホルモン、甲状腺ホルモンなどが代表的です。




高血糖になると何がダメなの?

正常値の空腹時血糖は70 ~ 109 mg/dLで、食後血糖値は概ね140 mg/dL未満と考えられています。

食事の後は、血糖値が上がります。
すると、インスリンが膵臓から分泌され、血糖値を下げるよう働きかけます。
このときインスリンの分泌量が少ない、あるいは機能しないと血糖値は高くなった状態になってしまいます

血糖値が多少高い程度(200 mg/dL程度)では、ほとんど症状は現れません。300〜400mg/dL程度になって初めて症状が出ます。
喉の渇きや頻尿・多尿、倦怠感(疲れやすさ)、多飲など…。

しかしいずれの症状も健康な人にも見られるものです。
そのため自覚がなく経過し、糖尿病の発見・治療の遅れにつながります。



高血糖状態が続くと、血管にダメージを与えます。
血管が傷つくと血管が硬くもろくなってしまう動脈硬化が進行し、糖尿病だけでなく心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、肝硬変を引き起こすリスクが生じます

糖尿病は一度かかると完治が難しく、いくつもの合併症を引き起こします。最悪の場合には失明に至る糖尿病網膜症、腎臓の機能が低下する糖尿病腎症、しびれ、麻痺さらには壊疽に至る糖尿病性神経障害があり、これらは糖尿病の三大合併症と呼ばれています。



糖尿病になったらどうなるの?

糖尿病には主に次の2つのタイプがあります。

2型糖尿病

2型糖尿病はインスリン分泌の不足もしくはうまく機能しない糖尿病です。

2型糖尿病は最も一般的な糖尿病です。
多くは40歳を過ぎた中高年の方に発症する場合がほとんどです。
2型糖尿病になる要因は、食生活、運動不足、肥満などの環境因子と遺伝的な要因の組み合わせで起こると考えられています。
症状としては疲労感や頻尿、手足のしびれなどがありますが、初期症状が現れないこともあり、気が付かないうちに進行するなんてこともあります。
治療の基本は適切な食事指導と運動で、これらを続けながら飲み薬や注射なども必要に応じて治療を行います。

1型糖尿病

1型糖尿病は膵臓からインスリンがほとんど分泌されない糖尿病です

1型糖尿病は若い方に多い糖尿病ですが、年齢に関係なく発症します。
1型糖尿病の原因は正確にはわかっていません。
ひとつには、免疫反応が正しく働かず、細胞を攻撃してしまうことが考えられています。
膵臓からインスリンがほとんど出なくなる(インスリン分泌低下)ことにより血糖値が高くなります。
口渇感や頻尿、急激な体重減少、倦怠感といった症状が急激に現れます。

糖尿病の合併症

上で解説した通り、治療をせずそのままにしておくと様々な合併症を引き起こします。

糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、高血糖により、眼の網膜にある非常に細い血管が障害を受け、視力が低下する合併症です。
初期の段階では、自覚症状がみられませんが、小さな出血など、少しずつ異常があらわれ、中期になると、視界がかすむなどの症状が感じられます。
末期になると、視力低下が起こり、さらには失明に至ることもあります
糖尿病網膜症は、完全に治すことのできない病気です。

糖尿病腎症
糖尿病腎症は、高血糖により、腎臓にある非常に細い血管が傷つき、最終的に機能を失い、人工透析治療が必要になります。
こちらも初期は無症状ですが、次第に余分な水分や老廃物を尿として排泄する腎臓の機能が弱まることで、むくみ・貧血・高血圧などのさまざまな症状を引きおこします。
人工透析の原因疾患の第1位が糖尿病性腎症で、毎年1万人以上の患者さんが透析を始めるに至っています。

糖尿病性神経障害
神経は先に行けばいくほど血管が細くなり栄養や血液が行きにくくなるので、最も長い末梢神経である足の先から神経障害が起こります。
症状として足の先や裏、手の指に痛みやしびれ、冷えなどの感覚異常があらわれます。
両手両足(左右対称性)の鈍い感覚から症状に気づかなかったり、痛みを感じ取れず、突然死につながることもあります。重症の神経障害の場合は足にけがや感染があっても痛みがなくわかりません。
気づかずに進行し結果、潰瘍や壊疽となるリスクがあります。

動脈硬化
高血糖状態が続くと動脈硬化になります。

また動脈硬化により狭窄または閉塞が生じると、血液が十分に行き渡らなくなり、腎硬化症となり腎機能の低下につながります。
また心臓では心筋に十分な血液が供給できず、糖尿病の主な死因である狭心症や心筋梗塞につながります。心筋細胞は再生することはないため、治療を受けても後遺症が残る場合があります。
脳では血管が詰まる「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」の発症リスクが高まります。



血液透析ってどんな治療法?

血液透析とは、腎臓の代わりに、体内に蓄積した余分な水分や塩分、老廃物を取り除き、血液を浄化する治療法です。

糖尿病性腎症が進行して体内の水分や老廃物、塩分などバランスを調整する腎臓が機能しなくなると体液のバランスを保てなくなり命にかかわることになります。

血液透析とはそうした腎臓のはたらきを人工的に補う治療方法のことをいいます。
透析治療には大きく分けて、血液透析と腹膜透析の2種類があります。

血液透析
血液を体の外に押し出し、ダイアライザー(血液透析器)を通過させて不要な老廃物や水分を取り除いたあと、血液中の老廃物や余分な水分を除去した後、再び血液を体の中へ戻す治療方法です。
週に3日程度1日4~5時間の、通院が必要となります
ダイアライザーは腎臓の糸球体と同じような働きをしています。わが国では、透析治療を受けている人の9割以上が血液透析を選択しています。
また、血液透析では、一度にたくさんの血液を体から引くため、より太い血管を作る手術が行われます。この血管を“内シャント”といいます。

腹膜透析
内臓の表面を覆っている腹膜を用いて透析を行うのが腹膜透析です。
お腹の中に透析液を注入して一定時間を置いた後、体の外に排出することで不要な老廃物や余分な水分を取り除きます。腹膜透析の場合、通院の頻度は1か月に1回程度で、自宅や職場で透析が行える場合があります。
腹膜透析を行うためには、“カテーテル”という管をお腹に埋め込む手術が行われます。



糖尿病にならないための高血糖予防策

日常生活でできるのは「食事」と「運動」!

糖尿病にならないためには、日々の生活習慣の改善が重要です。健康的な生活習慣を身につけ、糖尿病対策をしっかりと行いましょう。

🍚食事

適度なエネルギー量で、バランスの良い、規則正しい食事は糖尿病対策の基本です。

食事の大原則
☑ よく噛み、ゆっくり食べる
☑ 食べる順番を工夫する
☑ 一日三食を規則正しく食べる
☑ 栄養バランスのとれた食事
☑ 腹八分目でストップ
☑ 寝る前には食べない

■ オススメの血糖値を上げにくい食べ物

雑穀・玄米ご飯 全粒粉のパン かけそば スパゲッティ ナッツ 春雨
ヨーグルト 野菜 キノコ類 豆類 海藻類

おにぎりやカップラーメンといった炭水化物をやめるだけでも、改善されます。ただ、過度に制限せず、一定の量は摂りつつ、食物繊維が多い主食に変えるなどバランスの取れた工夫が効果的です。
血糖値の上がりやすさを示す「GI(グリセミック・インデックス)」を気にして食品を選びましょう。

■ 食べ方や食べ合わせのコツ

【ゆっくりよくかんで食べることで、食べ過ぎを防ぎましょう。】
よくかむと、インスリンの適切な分泌を促すホルモンが増えます。
【食べる順番に気を付けましょう。】
        野菜⇒汁物⇒タンパク質の肉・魚⇒ごはん

野菜や海藻を先に食べることで食物繊維によって後から食べる主食の糖質をゆっくり吸収できます。
次に、満腹感を得られやすい汁物、タンパク質の肉・魚を食べましょう。
最後にごはんなどを食べれば、自然に炭水化物の量が減らせます。
また、朝食を抜いた状態で昼食を食べると、血糖値が急上昇するので三食きちんと食べましょう。

■ 小腹がすいたら・・・?

制限した食生活を送ると、どうしても空腹を覚える瞬間が出てきます。
自然とお菓子類に手が出てしまうことがあると思いますがそんな時はGI値の低い以下のツマミがあると便利です。

りんご みかん ヨーグルト アーモンド チーズ ぶどう
もずく酢・めかぶなどのカップ 魚肉ソーセージ 寒天 納豆  
ナッツ オートミール きくらげ

■ 飲酒について

飲酒量が増えると食事のエネルギー量が蓄積されて太りやすくなります。
特に醸造酒には糖質が含まれ、高カロリー。
しかし一般的にお酒はアルコールを分解するために糖が使われるため血糖値が上がりにくくなるとされています。
適度の飲酒は糖尿病の予防につながることも。
とはいえ一番の問題は脳や胃腸を刺激して食欲を増進させるので食べ過ぎてしまう結果に。
高血圧や冠動脈疾患、脳卒中のリスクを高める要因にもなります。
アルコールはほどほどに、おつまみは糖質を含まないものを選びましょう。

食事と血糖


💪運動

運動の効果
☑ 食後の運動は食後高血糖を予防する
☑ 運動した日は血糖値が上がりにくくなる
☑ 運動が習慣になると血糖値が上がりにくい体に

いきなりスポーツジムに通ったりランニングを始めたりしなくて大丈夫。
まずは散歩から!

■ 食後に散歩などの軽い運動を

食後の運動は糖が筋肉へ運ばれ、エネルギーとなって使われるので血糖値が下がります
朝食後の掃除や昼食は遠くの店まで歩く、夕食後に散歩をするなど、取り組みやすいことからで構いません。
大事なのは習慣づけること。やりすぎて体を壊してしまっては元も子もありません。

食後1~2時間後に運動を行なうと食後の血糖値や中性脂肪の値の上昇をゆるやかにすることができます。
直前の食事による高血糖を防ぐこと、1日の血糖値上昇を抑えることができます 。
また肥満を解消しつつ筋肉増加によってインスリンの働きを高める効果があります。

■有酸素運動

ウォーキング(速歩)・ジョギング・水泳・自転車などのできるだけ大きな筋を使用する全身運動。

十分に酸素を取り込むことで、筋肉に取り込まれたブドウ糖や脂肪酸をエネルギー源として使うことができます。ブドウ糖が細胞の中に取り込まれると、インスリンの効果が高まり血糖値が低下します。
歩行では、1 回 15 から 30 分間、1 日 2 回。日常生活での歩行と合わせ
ると、1 日 1 万歩程度が目安です。

■レジスタンス運動(筋トレ)

レジスタンス運動:腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどの抵抗負荷に対して動作を行い筋肉を増やす運動。

筋肉が増えることにより基礎代謝量が上がり、からだのエネルギー消費量が増えて、インスリン効果が高まり血糖値は下がりやすくなります。
レジスタンス運動は、筋力を維持したり、増強させたりするだけでなく、血糖コントロールに有効です。全身の筋肉を使って週2~3回(1セット10~15回程度)を行うことが推奨されます。しかし、糖尿病の状態が悪い方やご高齢の方が、血圧が上がるような強度の高い筋力トレーニングを行うと、かえって血管や心臓の負担になることがあります。

オススメは水中運動
有酸素運動とレジスタンス運動の両方が行える運動種目であり、膝への負担が少なく、安全かつ効果的です。

血糖と運動



あなたは大丈夫?糖尿病かかりやすさチェック

✅ 家族や血縁者に糖尿病の人がいる
✅ 肥満気味だ
✅ 高血圧だといわれたことがある
✅ 食生活が偏りがち
✅ 不規則な生活をしている
✅ 運動不足ぎみ
✅ ストレスが多い
✅ 野菜が嫌い
✅ 喫煙習慣がある
✅ 清涼飲料水をよく飲む



まとめ

糖尿病でなくても、健康診断などで高血糖を指摘されて放置してしまっている方も多いのではないでしょうか。
今回紹介したように初期の段階では自覚症状もないため、日常生活に隠れて進行してしまっている危険があるかもしれません。
しかし、きちんと血糖値をコントロールできれば、合併症を予防できることがわかっています。
そのためにも、何かある前にしっかり治療を行い、きちんと血糖値を下げる早めの対処が必要です。
ぜひ血糖値をもっと身近なものと捉えて普段の生活を振り返ってみましょう。


この記事は 薬機法(旧薬事法) に基づいて執筆しています。

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