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疲れながら、傷つきながら

 言葉に刺があった。あなたは何も感じないのだろう。僕にとってはあなたの発する言葉のほとんどに刺があった。僕に当てたものもそうでないものも。それでも僕は巻き込まれるように傷を負った。一つ一つは小さな刺だった。一日そばにいれば全身に突き刺さるようだった。他の人はどうか知らない。僕には人間の言葉でさえなかった。人間の言葉として聞くほどに傷つくことは避けられない

「はあ?」胸の内に湧いてくる違和感を決して声に出さないこと。それがこの世界で生きていくために必要な制御でした。いつの間にか偉くなったあなたは王で、私は繰り出される金や銀で、まっすぐに進むだけの香なのです。私たちはみんな将棋の駒になって、あなたを中心に回っていくことが正解になるのでした。(あなたの大局観はいつも狂っている)どうでもいいところを重んじて、どうでもいいことばかりに的を当て、あなたはどんどん仕事を増やしていく。まるでそれが生き甲斐だというように。だからなのかあなたは疲れを知らないが、私は勤めるほどに疲れていきます。疲れることは傷つくということです。

「ここにあった書類どこやった?」あなたが指す場所には最初から何もない。机の上にあったというそれはあなたの記憶違い。第一声で僕を悪者にしておいてあなたはどこかに行ってしまう。(はあ?)待て待て、僕よ。言いたいことはわかるよ。だが、あいつは鳥なんじゃ。鳥にしては随分賢い方じゃ。なあ、僕もそう思わんか。だから、ほめることはあっても咎めるようなことは何もないんじゃよ。僕にできることはな、自我のスイッチを切ること。魂を眠らせること。そうかいじいちゃん。わかったよ。抜け殻の相槌だけを打てばいいんだね。鳥を相手にして、まともな言葉は通じないんだね。(はあ?)ここは自分の感性に打ち消し線を引く修練場だと言うんだね。忍耐の先には自由が、屈辱の先には愛が眠っているんだね。鳥との稽古も疲れるもんだね。疲れることは歳を取ることかもね。

「あれは何だ?」狂った王様の緊急メッセージを受け取って俺は現地へ飛ぶ。お前にとっては俺は将棋の歩にすぎない。命があれば俺はどこへでも飛んで行くだろう。だが、俺にはわかっている。お前が偽りの王であり、本当は熊だということを。俺の中にこれっぽっちの忠誠もない。これは軽いつきあいなのだ。王の顔を見せるとは興味深い熊ではないか。このゲームに勝者は必要ない。どちらの玉も詰み上がることはない。俺がいるのはグレーなサービス業の中だ。つきあうだけなのにえらく疲れる。疲れることは傷つくことだ。

 私をコントロールしようとするあなたが恐ろしい。どこにいても自分一人のゲームは成り立たないのです。本当に恐れていたのは嫌いという感覚を強めてしまうことでした。そうするほどに記憶に定着し、繰り返し顔が現れてしまうのです。本当は一刻も早く逃げ出したいのに、一秒だって思い出したくはないのに。人として憎しみを持つほどのことはどこにもなく、ただ雨のように自然に嫌えば済むのだと、私はここで学び始めたところです。戦うべき場所はここではなく、今は自分をとっておくべき時間なのです。疲れながら、傷つきながら、今が雨ならば通り過ぎるまで待つことです。


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