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話しながら走る(アイコンタクト)

ロボモフ

「何本つながったんだろう?」
「もう数の問題じゃない」
「どうしてこんなに奪われないんだろう」
「上手いからじゃないかな」
「まるで俺たちしかいないみたいだ」
「そんなことはない。いつも危険と隣り合わせさ」

「まるで取られる気がしないんだ」
「そうかいサイドハーフ」
「そうとうもボランチよ」
「俺たちは上手くやっている」
「だが問題はその先だ」
「その先ね」
「俺たちは先を見なくちゃ」
「ピッチは広く見ておくべきだ」

「なあボランチよ」
「なんだサイドハーフ」
「これがサッカーか?」
「何か不満でも?」
「回っているだけでサッカーなのかな」
「止めて蹴るがサッカーの基本だろう。止めて蹴る。止めずに蹴る。出して受ける。受けて走る。それを繰り返す。相手を揺さぶって揺さぶって……」
「おいボランチ! リベロからパスが来たぞ!」
「ほいきた! 受けて走る。そして右サイドへ展開だ」

ワニがドーナッツ!!

「俺たちは持たされてるんじゃないか?」
「持っている限り失点することはない。何か不満か?」
「俺たちは本当に自由なのかな」
「サッカーは自由だ」
「なあボランチよ。自由っていったい何だ?」
「自由に選べるってことじゃないの?」
「自由って言ったら駄目じゃん」
「何が駄目だ」
「自由を語るのに自由を使ったら駄目じゃん」
「俺の自由じゃん」

ワニがドーナッツ!!

「俺たちは自由の中で目的を見失っているのでは?」
「なあサイドハーフ。自由ってわかってるのか」
「俺たちは好きにドーナツを選ぶことができる」
「勿論だ」
「持ち帰ることもできるし、イートインすることもできるんだ」
「気分によってな」
「だけど、ドーナツの中心に何を見ればいいのだろう」
「見ても仕方ないだろ」
「なあボランチよ。その中心の向こう側にいったい何を?」
「何を見たいかってことじゃないの」
「お前は何を見たい?」
「ゴールかな」
「ボランチらしいな」
「なあサイドハーフ。お前はゴールじゃないのか」
「俺はまだ考えている途中だ」
「そうか。サイドにはまだ考える時間があるんだな」
「そうだ。俺たちには時間がある」
「それが俺たちのキープなのか」
「俺たちが回し続けている限り、ドーナツは動かない」
「止める蹴る。俺たちの基本がそうさせるんだな」
「俺たちには決める力がないんだ」
「へんだな。何でも自由に選べるのに」
「自由が多すぎて進めなくなったのさ」
「サッカーって難しいんだな」

ワニがドーナッツ!!

「今はそれでいいとも思うんだ」
「急には変われないしな」
「お前は不動のボランチさ」
「ありがとう。サイドハーフ」
「つなぐ先のアイデアが俺たちにはないのだから」
「確かにそうだ。俺たちはドーナツさえ砕けない」
「だが悲観する必要もない。これが俺たちの役目なんだ」
「そうか」
「アイデアはあのベンチの奥から出てくるからだ」
「やっぱりそうか! 俺たちじゃない気がしたぜ」
「そう。アイデアと決定力を兼ね備えた者がやがて現れる」
「それまで頑張ればいいんだな」
「耐えながら回しながら楽しみにするんだ」
「色々と忙しいじゃないか」
「行けるとこまで行け! 俺はそういう選手だ」
「走れサイドハーフ!」
「ボランチよ。俺によこせ!」


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ロボモフ
短歌や詩や小説を書いている現代人です。悪気はありません。 作品に含まれる宇宙人及び人間等は架空の存在です。はじめまして。