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ポワロ、神か悪魔か~「オリエント急行殺人事件」

アガサ・クリスティーの作品の中で最も有名な作品といっても過言ではないのが、「オリエント急行殺人事件」ではないだろうか。
それは衝撃的な結末もさることながら、登場人物のそれぞれが実に個性的だからというのもあると思う。
数ある映像化の中から1974年版を今回視聴した。

自分は本作に最初に触れたのは小説であった。そのディテールはあまり覚えていない。ただ少なくともこの映画ほどには、探偵・ポワロの印象は強くなかったはずだ。それほどまでに、なかなかエグいキャラクターである。
自己顕示欲が強く、なかなかに傲慢。人の心の機微を弄ぶその様は、悪魔のごとし、である。

対する乗客陣は、どれもこれも胡散臭そうなのだが、特に目を引いたのが何人かいた。

神経質そうな秘書役:アンソニー・パーキンス

なんとなーく暗くて、神経質そうなのが、被害者の秘書。
演じるのは「サイコ」の犯人ノーマン・ベイツ役で一躍有名になったアンソニー・パーキンスである。
うーん、この人普通にしててもなんか危うい感じが出ているのだが、これは演技か天性か。

気弱な伝道師:イングリッド・バーグマン

この作品に出演しているとは知っていたので、誰かなと思ってみていたのだが、初見ではまったく気づかなかった。我らが麗しのイングリッドもここまでオーラを消せるものなのか。
本作でアカデミー助演女優賞を受賞したとのことだが、さほど見せ場もなく。きっとこのオーラを消しっぷりが受賞理由なのだろう。

さて、ここまで大がかりなトリックだとすると、実際に実行するのはとても困難なのではないか。
その裏話を描いたのが、三谷幸喜が脚本を書いた2015年のドラマである。

舞台を日本に移しているのだが、ポワロ役は野村萬斎。
当時見たときはそのキャラクター作りにとても違和感を覚えたのだが、この1974年の映画を見るとさもありなん、こちらのポワロの方がよほど強烈であった。
今回改めてこのドラマの方も見返したのだが、とても面白かったので、お勧めしたい。

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