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”マジにならない”という路線~「フィフス・エレメント」

90年代のSF映画って、独特である。
80年代までであればこうあってほしいという想像とそれに向けてなんとか寄せようという努力の跡が感じられる。21世紀になると、CGをはじめとした映像技術の格段の進歩によりもはやリアルか合成かの違いさえ融解しつつある。
その間の90年代は、なんというかどことなくおかしいのだ。
そのおかしなSF映画の一つ、1997年公開「フィフス・エレメント」。ブルース・ウィルスにまだ毛髪があったころだ。

当時はあまり意識していなかったが、本作のヒロインはミラ・ジョヴォヴィッチ。このあとバイオハザードで一躍スターダムにあがっていくのだが、このコスチュームの斬新さは、鮮烈な印象として残っている。なおこのデザインを担当したのはゴルティエとのこと。
この映画はなぜかよく、↑のサムネイルにあるミラが飛び降りるシーンが使われるのだが、これはごく最初の方のシーン。

内容は、SFを題材にしたライトなアクションものといおうか。
古代の異星人からのメッセージだとかよく分からない巨大隕石?だとかがあって小難しい展開かしらんとも思ったのは最初だけ。ミラとブルース・ウィルスがタッグを組んで”石”を探しに行ったくらいからは目まぐるしく展開が進んでいく。

この映画、ミラもそうなのだが何人かとても立っているキャラが出てくる。ゲイリー・オールドマン演じる本作のボスキャラ”ゾーグ”は、その髪型と言動がとてもエキセントリック。クリス・タッカー演じるラジオDJ”ルビー”は、ハイテンションでクロスセクシャルなしゃべり方。イアン・ホルム演じる古代からの言い伝えを守る”神父”は、ストーリーのかく乱要因となるその言動。

こういった登場人物らにより、マジになり過ぎない展開になっているのだが、このような演出はこのころから増えてきたように思うのだがどうだろう。それがこの世紀末間近の閉塞感を茶化す感じなのだろうが、以来ずっと閉塞し続けているという皮肉にもなっているということか。
この”茶化し”を好意的に捉えるか否定的に捉えるかで、本作への評価が分かれるところなのだろう。

何の後腐れもなく教訓の残さないという点で、エンターテイメントとしてはとても潔い作品だなとも思え、自分としてはとても好感が持てた。


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