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優作から目を離せない~「ブラック・レイン」

日本人は昔からハリウッドに対しての憧憬が強い。
一時は日本映画の方こそ世界から憧れられた時代があったというのに。
いまだ邦画・洋画の区別が根強い中、この俳優が生き続けていたならば日本の映画も変わっていたかもしれないと思わせる人物、それが松田優作ではないだろうか。
彼の遺作にして傑作、1989年公開「ブラック・レイン」

監督は、「ブレードランナー」のリドリー・スコット。こういうテイストが好きなんだな。実際に日本でロケしてみて思ったより清潔でがっかりしたとか。

ストーリーとしては、いわゆるヤクザ・マフィアものということになろうか。そういう意味では、細かいことは問うべきではないだろう。フィクションなのだから。

本作はその世界観・空気感と、何よりも松田優作の狂気じみた演技こそが見どころといえるだろう。

舞台はほぼ全編大阪(ということになっている)。1989年の大阪の猥雑さがにじみ出ている。もちろん映画なので脚色はされているのだが、30年以上経った今から見返すと不思議と「こんな感じだったな」と思えてしまうほどの肌身に迫るリアリティ。

松田優作は、自分は本作以外では「探偵物語(映画版)」や「家族ゲーム」、「最も危険な遊戯」などくらいしか見ていないのだが、どれもモソモソっとした暗い感じの印象しか抱いていなかった。
ところが本作では、静かではあるがその内面が力強くそして危険なほどにあふれ出ているように感じた。
それは彼がこの後間もなくこの世を去るということを知っているからなのかもしれないけれども、鬼気迫る演技には一瞬たりとも目を離すことができないくらいだ。

この作品で彼はその後何人かのハリウッド映画監督からのオファーを受けたと言われている。生きていれば72歳。
老境に差し掛かった松田優作、あまり想像がつかないけれども、決して安易に丸くはなっていなかったのではないだろうか。

最後に。
本作には高倉健はじめ他にも日本人俳優が出ているのだが、個人的には健さんよりも若山富三郎の方がいい味だしていたように感じた。

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