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【最終回】 ウーマン/ジョン・レノン Woman / John Lennon

妻へ

高校1年生で初めて出会って、バンドに誘った時からずっとあなたのことが大好きだ。
その気持ちは今でもまったく変わらない。

常に俺の横にはあなたがいてくれた。

10代の頃は付き合っていて楽しく、気楽に毎日を過ごした。
若者の特権で無責任に無秩序に無反省に毎日を謳歌した。

20代になり東京から戻り、就職し、社会人として多少の責任も生じてきた。そして紆余曲折あったが、長い付き合いのあなたと結婚した。

30代にかけて3人の子供たちが生まれ、子育てに右往左往するあなたを横目に仕事に没頭し、朝早く出かけて深夜に帰る毎日。
どんなに遅く帰っても、あなたは文句の一つも言わなかった。

40代になり一念発起して独立するも実力不足で散々な状態に。
子供たちは一番楽しい学校時代に極貧生活を送ることになり、不自由な暮らしを強いられただろう。
親らしいことは何もしてあげられなかった。
でも俺を反面教師に子供たちは立派に成長した。
あなたはその間ずっと俺と子供たちを支えてくれた。

50代になり何とか普通より少し貧しいぐらいのところまで立て直して暮らせるようになったのもあなたの「やりくり」のおかげだ。

そしてお互い無事?に還暦を迎えることができた。

自分のことよりも家族や友達を優先するあなた。
いつも自分勝手にやりたい放題、周りに迷惑をかけ散らかしている俺。
酷いこともたくさんした。
本来ならあなたはもっと幸せな人生を送れる人なのだろうと思う。
デタラメな人生に巻き込んでしまって
本当に申し訳なかったと思っている。

でも何ひとつ成し遂げられなかった俺を見放さず、ここまで付き合ってくれた。
子供たちも結婚して家庭を持ち、それぞれが楽しく幸せに暮らしている。
孫も生まれた。
嘘みたいだ。

俺はあなたが本当に本当に本当に大好きなんだ。

改めてお礼を言う。

毎日3食作ってくれてありがとう。
毎日洗濯してくれてありがとう。
毎日掃除してくれてありがとう。
病気の時に看病してくれてありがとう。
落ち込んでいる時励ましてくれてありがとう。
調子に乗っている時諌めてくれてありがとう。
子供3人をちゃんと育ててくれてありがとう。
どんなに感謝しても、し足りない。

そのうちどちらかが旅立つ日が来るだろう。
あなたを看取る覚悟はないから、
できることならあなたよりも先に逝きたい。

そして最後の食事はあなたが握ったおにぎりを食べたい。

俺が逝った後、しばらくするとあなたも人生を終える時が来る。
2人とも逝ってしまったら、どんなところかわからないけど、そこには数えきれないぐらいものすごく沢山の人がいるのだろう。
今までに亡くなった世界中の人がいるはずだ。
でもたとえどんなに沢山の人がいたって、俺はあなたをすぐに見つけてみせる。

それだけは自信がある。

あなたの後ろ姿を見つけたら、
近づいていって肩をトントンと叩いて言う。


「ねえ、一緒にバンドやらない?」



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