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夏なんです/はっぴいえんど Natsu Nandesu / Happy End

その夏はとにかく異常に暑かった。
S玉県のある市では毎日最高気温が更新されていた。
四国の四万十市では41.0℃というとんでもない気温が記録された。
太平洋高気圧とチベット高気圧が強まったとかなんとか。
とにかくとんでもなく暑い夏だった。

その年の夏、初めて富士山に行った。
丁度S県が申請していた世界遺産に登録されたからだ。
今年は富士山に多くの人が殺到することが予想された。

仕事の上でパートナーとなっていたS木君と二人で麓の駐車場に車を止め、バスに乗って五合目まで下見に行った。
なにしろ初めてのことだったので興奮していたのを思い出す。
五合目のレストハウスをひと通り見てから、登山道を通って六合目に向かった。
初めてのことでペースがつかめず、何度か休憩を挟んで六合目の山小屋に着いた。
そこは山小屋の名前にもあるように高度2600mの雲海の上にあった。そこから頂上に向かう登山道を離れて横にトラバースして山腹を巻いて歩く。
なだらかに若干の登りを歩きながら、視界が開けた瞬間に広大な火口が現れた。
そのあまりのスケールの大きさに一瞬たじろぐが、すぐに感動に変わり、とてつもない地球の営みに感心することになった。
「これが宝永火口です」S木君が説明してくれる。
彼は山岳ガイドの経験がある山男だ。
「これはすごいね。絶対みんな見たら感動するよ」
仕事で山のツーリズムのルートを探していたS木君とそのサポートをしていた俺は直感でピンと来た。
これを上手に組み立てれば初心者から中級者向けの絶好のルートが組めるだろう。

家に帰ってから俺がかいたかき氷をS木くんと一緒に食べながら、庭で打ち合わせをした。
かき氷を食べるだけで汗をかいた。
とにかくとんでもなく暑い夏だった。



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