適応障害、うつ状態、うつ病、その違いとは

昨今、スポーツ選手や芸能人の方も、メンタルヘルス不調やメンタルヘルス疾患(精神疾患)をオープンにされる事例が増えてきています。

さて、それらの報道で、適応障害、うつ状態、うつ病、などと様々な診断名を目にされる事は多いのではないでしょうか。

今回は、これらに共通する事と、違いについて、説明し、メンタルヘルスについて、この記事を読んで下さった方が理解を少しでも深めて頂ければと思います。

まず、メンタルヘルス不調についてですが、本人の性質により依存する精神疾患型(内因型)と心理的・肉体的負荷によって発症するストレス起因型(外因型)のタイプとに分けられます。また、ストレス起因型も、過負荷型と適応不全型に分けると分かりやすいです。前回の記事では、メンタルヘルス不調の3タイプとして解説しました。

さて、適応障害はストレス起因型の最たるものです。明らかなストレス要因があり、ストレスへの反応が水準以上になっている状態です。適応不全型のタイプが主と考えられますが、過負荷型とミックスされている場合もあり、その病態(メカニズム)に応じた、サポートが必要となります。

適応障害では、うつ症状、不安症状、その他身体症状が出ます。うつ症様が持続したり、一定の水準になれば、うつ状態と表現しても間違いではありません。

では、うつ病と何が違うのか、ということになります。

実は、適応障害→うつ状態→うつ病、と症状の程度および持続期間によって、連続性があります。ストレス要因から物理的・心理的に距離を取る事で症状が改善するのであれば、適応障害の水準と言えますが、そのような対応を取っても、うつ症状が持続したり、悪化していくようであれば、うつ状態、うつ病、と判断すべきとなります。一方で、それほど明確なストレスがないにもかかわらず、うつ状態/うつ病となってしまう方もいらっしゃいます。非ストレス起因型のうつ病ですが、この場合は、妄想的になったり、冬季型だったり、周期型だったりと、より疾患としての色彩・背景が濃いものとなります。

うつ病の診断基準を見てみましょう。

私達精神科専門医が日常的に使用している、アメリカ精神医学界の最新の診断基準(DSM-5)をご紹介しましょう(少し簡単に表現を変更しています)。

A:5項目が2週間以上持続
① うつ気分(悲しみ、むなしさ、絶望等含む) 
② 興味・意欲・喜びの低下
③ 食欲の減退ないし増加(1ヵ月で5%以上の体重減少ないし体重増加)
④ 不眠または過眠
⑤ イライラで落ち着きがない、もしくは、動きがあまりに乏しい
⑥ 疲労感
⑦ 自分には価値がない、自分はダメだと責める(周囲からみて過剰に)
⑧ 思考力、集中力の低下、決断困難
⑨ 自死についての思考
B. 日常生活に大きな支障(社会的、職業的、家庭生活等)
C. 薬物や身体の病気の直接的影響は除く

注目すべきは、うつ症状の原因については、何ら限定していない事です。ストレスであっても、本人の体質であっても、はたまた、他の精神疾患や発達障害の特性などによる困難苦痛であっても(二次障害としてのうつ症状)、区別はしていません

また、それ以外の様々なサブタイプは、日々の診療で経験されますし、うつ病のサブタイプとしても、記載されていますが、ここでは、省きます。

A項目については、医師や周囲から見て、明らかに症状を認められる水準でないといけません。例えば⑧については、私は、診察時の会話のテンポや理解力が、その方の年齢・学歴・職歴等から類推される水準を明らかに下回っている場合にのみ、該当する、と判断しています。

さて、ではA項目が4つしか該当しない、5つ目の項目は、2週間の内数日しか認めていない方は、診断基準に厳密に照らし合わせれば、うつ病ではないことになりますが、そのような方への、サポートは不要でしょうか???

答えは明確です。うつ状態からうつ病は連続性があり、症状の頻度・程度によって診断名が変わるのであって、いずれに対しても心理的サポートは有効ですし、受けてよし・行ってよしです。ただ、投薬治療については、治療の反応性や医療経済政策等、様々な状況を鑑みて、無尽蔵に行う訳にはいきませんので、対象を厳格に限定すべきでしょう。

なお、「2週間」という症状の持続期間については、そんな短い期間で診断をつけるのだ・・・、と思われる方も多いと思います。ですが、しんどくなりだしてから、2週間ではありません。A項目が5つ以上になってから、2週間です。私は精神科医として20年以上診療に従事していますが、皆さん、耐えすぎです。もう少し、早く来て欲しい。しかしながら、一方で、医療機関の診療キャパシティをニーズが超えています。精神科・心療内科の新規患者としての予約は、かなり困難で医療機関によっては、数か月待ちという事態もまれではありません。私が運営するクリニック(常勤精神科医が3名以上在籍)でも、毎日診療の申し込みをお断りしているという現実があります。医師による治療では追い付かないことは、統計的にも明らかです。

症状が本格化する前に、信頼に足る臨床心理士/公認心理師のカウンセリングを受ける事で、うつ病に至ることを防いで頂きたい。

ただし、信頼に足る臨床心理士/公認心理師にどうやって、たどりつけばよいのか、、、という大問題が生じてくるわけです。

この社会的課題を解決したいと思って立ち上げたのが、マイシェルパとなります。

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