メンタルヘルスにおける1次予防、2次予防、3次予防
タイトル、分かりにくいかと思います。
ですが、このキーワードを知らないと、ヘルスケアについては語れません。
是非とも、このキーワードを知って、皆様の日々の健康管理、メンタルヘルスの維持・向上・改善に役立てて頂きたいと思います。
医学には公衆衛生という分野があります。国や地域全体の健康度の総和を、いかに改善するかという観点から、研究・実践する医学領域です。
1次予防は「発症予防と健康増進」
2次予防は「早期発見と早期治療」
3次予防は「病気後の回復支援や再発防止」
身近な例を挙げてみましょう。
普段受けられる健康診断、例えば「メタボ健診」はメタボリックシンドローム(肥満による高血圧、高脂血症から、動脈硬化や心血管系のリスクが高まる状態)にならないように、皆さんの健康意識を上げて、日々の過ごし方の改善をはかることが目的ですよね。
典型的な1次予防といえます。新型コロナワクチンも発症予防であったり重症化予防が目的ですから、1次予防的施策となります。
がん健診はどうでしょうか。「がん」は早期発見・早期治療が必要な事は御存じでしょう。ステージ分類を目や耳にされた方も多いのではないでしょうか。ステージが進行すると、治療成績が悪化しますし、治療費用も高くなります。典型的な2次予防といえます。
3次予防は分かりやすいですよね。いわゆる、リハビリテーション(リハビリ)です。足腰から臓器まで、様々なリハビリテーションが行われていますが、、、本来は3次予防が必要な状態になることは避けたいですよね。
以上、1次予防、2次予防、3次予防、がイメージできたでしょうか。
なぜ、予防が大切かと言うと、いくつかの理由が挙げられます。
① 医療資源が限られている。出来るだけ、治療に労力・資金を使いたくない。
② 治療よりも予防の方が効率が良い。
③ そもそも、治療が必要となると、その方の苦痛(心理的・身体的・社会的)も増す。後手後手に回ると、予後(経過)も悪くなる。
では、メンタルヘルスにおける、1次予防、2次予防、3次予防、はどのようなものになるのでしょうか。その一例を紹介します。
1次予防: メンタルヘルスを向上させる知識・スキルを身につける、自分のメンタルの状態を理解する、ストレスへの対処スキルを身につける。
2次予防:症状が出れば、速やかに専門家の意見を聞き、治療の必要性の有無を判断してもらう。重症化(仕事や学校に行けなくなるなど)するまで放っておかない。
3次予防:うつ病のリワーク(復職)プログラムetc
この1次予防として、労働者へのストレスチェック制度が導入・義務化されました。1年に1回労働者は、自分自身のストレスの原因や状態についてチェックを受け、その程度を知ることができるようになりました。しかしながら、義務化されているのは、従業員50名以上の事業所のみです。従業員50名以上の会社ではないことに注意です。したがって、社員1000名の会社であっても、全国に営業所が分散し、どの事業所も50名以下であれば、義務はないのです。
これでは、どこで働いているかによって、不公平な状態が生じます。日本の労働者の過半数は中小企業に所属しています。また、零細企業を除くと、1事業所の従業員数は約22名(中小企業庁HPより私が算出)となっており、ストレスチェックを受けられず、働かれている方も多いでしょう。したがって、十分な取組とは到底言えない状態です。ストレスチェック制度については、また別途記事を書きたいと思います。
さて、2次予防についてですが、現在、メンタルクリニック(精神科クリニック)では、初診患者の予約待ちは深刻な問題です。1~2週間で受診出来れば、かなりラッキーだという状況になっています。この事情についても、また説明しますが、現実的に精神科専門医の診断を受ける事が容易ではありません。私が運営するクリニックでも、常勤医師4名、非常勤医師2名(2021年8月時点)と、メンタルクリニックとしては全国で10番以内の規模で診療を行っておりますが、初診患者の受付には十分にこたえれていません。
治療では追い付かないのは明らかです。
3次予防も大切ですが、本来、1次予防、2次予防がきちんと出来ていれば、その役割は縮小するはずです。
私はメンタルヘルスケアにおいて、最も有効なアプローチは、1次予防に取り組み、2次予防が必要な状態になる可能性を減らす事が、一番の解決策だと思っています。
適切な心理カウンセリングによって1次予防を行っていきたい、マイシェルパを立ち上げた目的の1つでもあります。日本のメンタルヘルスの在り方をかえるべく、今後も邁進していきます。
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