見出し画像

わがままはどっち?

小学5年生のとき、何の用事か忘れたが家族で出かけたことがあった。確か父はおらず、母、兄、姉、そして僕の4人だったと思う。
火曜の夜7時、用が済んで後は家に帰るだけ。お母さん、早く帰ろう。


なぜなら、今夜は「遊戯王デュエルモンスターズ」の放送日だからだ!


当時はYouTubeもprimevideoもなかったので、リアタイ視聴が基本スタイル。VHSという最終手段もあるが、その日はあいにく録画予約をしてこなかった。
生粋のテレビっ子だった僕は、マイフェイバリットアニメが始まる夜7時30分までになんとしても帰宅したかった。

自家用車での移動だったので、普通に帰宅すれば間に合う時間だ。
よっぽどのことが起きない限りは。



今日はどんなストーリーだったかと先週の次回予告の内容を思い出そうとしていると、不測の事態が発生する。


「せっかくだから、帰りにラーメン食べに行こう!」


母の一声に兄と姉は歓喜。もちろん僕は反対派として、真っ向から立ち向かった。


「遊戯王のアニメ観たいから帰ろうよ!」


しかし、ここは日本。民主主義の国では、多数決が最も有効な決定手段とされている。
投票の結果は言うまでもなく、賛成3、反対1。しかも反対の1票は末っ子。家庭内ヒエラルキー最下層の僕に結果を覆す術などなく、一行を乗せた車はラーメン屋に向かう。


近所のラーメン屋に到着しても、僕の反対デモは続いた。
注文を聞かれても「遊戯王観たい!」しか言わない。しまいには家族全員に叱責され、泣き出してしまう始末。

なんでだよぉ!ウチは外食なんて滅多にしないくせに!なんでこんなときだけ「ラーメン食べに行こう」なんて言うんだよぉ!

小さな藤原竜也が、ラーメン屋のカウンターでビービービービー泣きわめく。その様子を見た3人は、怒るやら困るやら呆れるやら。


すると、ラーメン屋の店員さんが、

「これかい?」

と、号泣真っ盛りの僕に尋ねた。
ふと見上げると、お店に置いてあるテレビの中で、城之内くんがバーバリアン2号を召喚していた。

店員さんは、僕のためにテレビのチャンネルを変えてくれたのだ。

僕はお礼を言い、少し伸びた醤油ラーメンをすすりながら、城之内克也VSダイナソー竜崎のデュエルを観戦した。決着は来週に持ち越しとなったが、その前半が観れて大満足だった。
「ごちそうさま」と2回目の「ありがとう」を言い、僕らは帰路に就いた。



家族は恥ずかしかったと思う。「たかがアニメでギャン泣きするなんて」と思ったと思う。未就学児ならまだしも、もう小学5年生だ。

でも、100%僕が悪かったのだろうか。
「今日は帰って、また別の日に行こうか」ということにはできなかったのだろうか。

この話は、”僕の”わがままだったのだろうか。

これが逆の立場だったらどうだろう。
僕が「ラーメン食べたい!」と言い、ほかの家族が「いや、家帰るよ」と言う。
この場合でも、僕が悪者だ。

結局、マイノリティーが損をするということになる。

この話に限らず言えることだが、一人だけ意見が食い違うだけで虐げられるのはいかがなものか。
小さなところから考える必要のある、大きな問題であるような気がしてならない。

なんと アルロンが おきあがり サポートを してほしそうに こちらをみている! サポートを してあげますか?