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現役プランナーがゲームの企画書や仕様書を作るときにしている初歩的なこと

1、はじめに

DRIVE.です。
普段はネット上で作編曲・イラスト制作をしながら、ゲーム会社にプランナーとして1年半以上勤務しています。

前回は、こちらの記事でゲームにおける世界観の構築についてお話しました。かなり詳細まで解説しておりますので、世界観を作ってみたい!と思っているけど、まだ読んでいない…という方は是非お読み下さい。

今回は、『ゲームの企画書や仕様書を作るときにしている初歩的なこと』についてです。

今の時代でのプランナーという立ち位置の中で、必ずと言っていいほど求められる「企画書」と「仕様書」の作成スキルは、習得するのも中々難しいことです。
ましてや、会社それぞれで形式も異なるため、どういう風にするのが正解なのかも分かりにくいものですね。

あくまで私なりの考え方・個人の意見となりますが、現場で経験してきたことをまとめ、基本的なことを解説していきますので、何かの参考になればと思います。

2、企画書・仕様書とは

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まず「企画書」についてです。

企画書はゲームが作られる過程の中で、最初に作成する「他人に作りたいゲームの面白さを伝える資料」になります。

基本、PowerPointで作成され、プレゼンをする際に画面に映し出すものになります。

現場では、実は普通のゲームプランナーが作るものではなく、プロデューサー・ディレクター・リードプランナーといった上の立場にある方々が作成するのが主流となっていますね。

企画書を作る流れとしては、各職種のメンバーをディレクターが集め、ディレクターが事前に書き出した企画についてアドバイスを求める。
もしくは、事前に書き出したものは無く、とあるテーマに対して沢山アイディアを出す始め方もあります。

それから、貰ったアイディア・アドバイスを基に企画の内容を詰めて、最終的に企画書にまとめる。その企画書を、会社重役の方々に見せながらプレゼンする、という流れになります。
そして重役の方々からGOサインが出たら、本格的にゲーム開発を始めることができます。


企画書はこんな風な役割をします。が。


「ゲーム会社の就職活動では、書類審査のときに企画書の提出を求められるケースが多い」です。
本当は、プロデューサー・ディレクター・リードプランナーという経験のある方々が作るものを
何故就職活動で求めることが多いのでしょうか?

それにはしっかりと理由があります。
企画書には「プランナーとして必要なスキルが詰め込まれる」ので、スキルを見るためには一番手っ取り早い方法なんですね。
「事前にプランナー業務の知識があるか」とか、「他人に分かりやすく伝える能力があるか」とか、「根拠を基に企画できる能力があるか」…
そして何よりも、「発想力があるか」を見ます。

もちろん、そのゲーム企画書が分かりやすく、面白ければ面接の段階へ行けることが多いわけです。
逆にここで根拠もなく、あまり独創性のあるものでもない…となると、引っかからずに書類選考落ちになります。
とはいえ、プロレベルのものを作ることは難しいですし、そこまでのクオリティを求めることはありません。

今の業界の基準としては、「基本がしっかり出来ているか」をよく見るんじゃないかと思いますので、
今回はその基本について、現場での経験を基に解説していきます。

そして、次は「仕様書」

仕様書はゲームが作られる過程の中で、企画書の次に作る「ゲームを作るために内容を言語化・視覚化した資料」になります。

会社によってフォーマットは様々で、Excelを使う会社もあれば、Googleスプレッドシートを使う会社もあります。

現場では、企画書から仕様書へと書き出す段階で、担当となった多くのゲームプランナーが制作するのが主流です。
(とはいえ、ここの様式も会社ごとに変わることが多いですが)

仕様書を作る流れとしては、まず企画書のGOサインが出てから、
企画を立案したプロデューサー・ディレクター・リードプランナーが、プランナー全員に担当割り振りをします。
例えば、「この人はホーム画面の仕様担当」、「この人は戦闘画面の仕様担当」…といったように、仕様書を作る分野を決めます。

それから、それぞれの仕様ごとに担当プランナーを主催として、会議を開き続けます。
この時に、担当となるプログラマー・デザイナーが決まっていることも多く、決まっていれば会議に参加してもらいます。

まず、草案段階のものを作成してから、意見を求める会議。そして意見を基に、仕様書を理想的な形へと修正していきます。
ある程度修正が出来れば、再度会議。また意見が出れば修正。これを繰り返し、完成まで持っていくのです。

そして完成がプロデューサー・ディレクター・リードプランナー辺りのリーダー陣に確認できたら、実装するためにプログラマー・デザイナーの方々へ仕様書を渡し、説明します。

プログラマー・デザイナーの方々は、その仕様書を基に、実際にゲームとして遊べる形に実装していくわけです。

ゲームプランナーとしては、企画書よりもこの仕様書を作成できるスキルを持っていた方が、現場で活躍しやすくなると私は考えています。企画書は携われる機会が単純に少ないですが、仕様書に関してはとても多いです。

もしゲームプランナーを志している方がいれば、企画書だけでなく仕様書について事前に知識を深めておくと良いですね。

これも、基本についてこれから解説していきますので、是非興味を持っていただければと思います。

3、必要なスキルはコレ!

企画書は「面白さを分かりやすく伝える」。
仕様書は「具体的に空白も無く伝える」。

この言葉に尽きると思います。


「面白さを分かりやすく伝える」ための工夫としては…

・テキストや色調を揃えて、レイアウトを見やすくする
・ゲームの面白さをユニークに伝える画像や言葉を用意する
・ゲームが売れるという説得力を持たせる


「具体的に空白も無く伝える」ための工夫としては…

・テキストや色調を揃えて、レイアウトを見やすくする
・「想定外」ということが生まれないように、画面の遷移等を考える
・分かりやすい文章で作る


とにかく沢山上げられますし、とても大変なものです。
ですが、これより前に「初歩的なこと」を守らなければ、これらの工夫も引き立てることができなくなってしまいます。

『テキストや色調を揃えて、レイアウトを見やすくする』。
『その上で、簡潔な構成でまとめる』。

これが共通して守らなければならない業界での様式、つまり基本です。
これを中心に今回は必要なスキルとしてお話します。

4、企画書の基本

企画書を作る際の基本としては、この3つを最低限でも守りましょう。

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◆一貫した「コンセプト」で内容を作る!

→例えば、極端な話ですが…
 硬派でダークなアクションアドベンチャーゲームを作る!と決めてから、
 内容に今時の流行である要素を入れたいと思って美少女キャラを入れてしまった…
 こうすると、最初に決めたコンセプトから「ズレ」が発生し兼ねません。
 必ず、最初に決めたゲームジャンルや方向性は見失わないように作りましょう。

 また、もし就職活動用に作成するのであれば、提出先の企業様が「どんなゲームを中心に作っているか」を調べ、
 それに合わせて内容を作ると良いと思います。


◆ページ数は多すぎず、簡潔にまとめる!

→実際の現場で作られる企画書では、最初の段階では「5~8ページ」になっていることが殆どです。

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<構成例>
①表紙
…企画書の第一印象となる表紙です。
 タイトルやイメージイラスト等で興味を引けるようにしましょう。

②コンセプト
…企画書にとって一番大事となるページを、表紙の次に持ってきましょう。
 「このゲームの何が面白いか、何を楽しませたいか」を書き、
 1~2つほど、そのコンセプトについて軽く補足説明するページにしましょう。
 
③世界観
…ゲームの世界観を説明するページです。
 ゲームジャンルによっては無くても良いですが、あると見た人へ
 更にゲームの奥深さを伝えることができるチャンスが生まれます。
 イメージイラストがあると更に興味を引くことができるでしょう。

④画面イメージ
…実際のゲーム画面をイメージし、それを説明するページです。
 これがあると、ゲームとしてどう動くかを相手にイメージさせやすくすることができるので、
 企画書には必須になるかと思います。

⑤ゲームサイクル
…ゲームがどのようなプレイの流れになっているかを説明するページです。
 例えば、RPGだと「冒険」→「戦闘」→「クリア」→「育成」を繰り返す仕組みで、それを図解することになります。これがあると、ゲームの仕組みを考えているという説得力が増します。


+追加コンテンツ等があったら、1~3ページ追加しましょう。
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 ページを多くして、企画内容自体を作り込むのも、熱心さが感じられて良いのですが…
 それよりも、まず「簡潔に面白さを相手に伝える」ことを重視しましょう。ページ数が多すぎると、内容を把握することに時間がかかり、分かりづらくなるケースが増えてしまいます。


◆文字のサイズ・色・フォントに気を付ける!

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→これはデザイン全般に言えることですが、サイズや配置がバラバラだったり、見づらい色やフォントで作られていると、相手に分かりづらい企画書になってしまいます。

必ず、「大見出し」→「中見出し」→「説明」という順序とレイアウトを揃えることを忘れずに意識しましょう。

 企画書は殆どが白地+文字は黒、強調部分に赤、といったレイアウトにすることが通常になっています。
 もし、どんな感じにしたら良いか分からないときは、ゲームの企画書を載せている企業様も少なくありませんので、
 検索しては参考にしてみると良いでしょう。


ざっくりとした説明になりますが、これらを基本として守ることで、
ある程度綺麗な企画書が完成すると私は考えています。

5、仕様書の基本

こちらもざっくりとしておりますが、仕様書も画像付きで説明しましょう。
私が経験した中でのフォーマットにて解説致しますが、
仕様書作成においては、これらを守れば躓くことはないと思います。

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まずは「画面の名前」を大見出しで記載し、その下に画面イメージを載せます。そして画面イメージから、「どんな画面要素があるか」を表に書き出していきましょう。

RPGであれば、HPやMPバーがあったり、エネミーの表示があったり…
仕様書においては「画面要素をくまなく全て書き出しましょう」
企画書とは違い、抜けが発生すると実装するプログラマーやデザイナーの方々が困ってしまいます。

画面要素の名前を書き出したら、内容の詳細も記載するようにしましょう。
例えば、「会話テキストウィンドウ」の要素があれば…
『横○文字、縦○行を最大とする』/『フォントサイズのタグコマンドは使用可能にする』…など、細かいところまで書きます。

画面要素を書き出せたら、次は「どんな操作内容があるか」を書き出していきます。例の画像だと、「アクションボタン」や「スキルボタン」について説明しています。
これも、タップやスライドごとにどのような事が起こるか、というのを書くように、操作の分岐も想定するようにしましょう。


現場では、これにプラスして「何を操作すると、どの画面に遷移するか」という
【フローチャート】を作成します。

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これも図解できるスキルが必要になるので、PowerPointやExcel等で図を作れるよう演習していくと、身に付いてくると思います。

今時のソーシャルゲームでは、画面の遷移先がとても多いので、
まるで回路図のようなフローチャートが完成することもありますね……

6、まとめ

というわけで、企画書・仕様書作成における初歩的なことについて解説してみました

本来であれば、更に詳細まで丁寧に説明していこうと思いましたが、
転職における関係で忙しく、時間を作ることができなかったので
後々しっかりと解説した記事にアップデートしようかなと思います。

ゲームの企画書・仕様書作成に興味がある方は、是非参考にしながら作ってみて下さい!

また、こちらの記事は、『ョョョねこ Advent Calendar 2020』参加記事になります。是非とも他日付を担当している方々の記事もチェックしてみて下さいね。

以上、DRIVE.でした。

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