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プレイリスト(恋模様2年1組#3)

出席番号16番 蓑部マイカ

「ごめん」
 スマホに送られてきた返事は、たった3文字だった。私は今、矢上ショウヤにフラれた。そして、フラれたのはこれで2回目だ。

 ショウヤとは、中学2年の時に2か月だけ付き合っていた。あの頃のショウヤは、今よりも身長が15センチも低く、あまり目立つ方でもなかった。
 同じ塾に通って、帰る方向が同じ。それだけの理由で、私は、ショウヤと一緒にいた。無名の歌い手を見つけては、シェアする。ショウヤの好きな音楽は、私の趣味にあった。

「ね、私たち付き合わない?」
 ちょうどその頃、彼氏と上手くいっていなかった私は、気を遣わずに一緒にいられるショウヤも悪くないと思っていた。

 歩道橋で、突然の告白。その時のショウヤは、一瞬、黙ってから「いいよ」といった。 
 それから、彼氏とよりを戻すまでの短い期間、私は、なんとなくショウヤと一緒にいた。多分、ショウヤは、私をずっと見ていてくれた。ショウヤといると、その安心感があった。

 でも、今は違う。あの頃と違って、ショウヤは、もう、私を見なくなった。

 インスタを覗くと、アオイは、出来たばかりの大学生の彼氏と浮かれている。ハルカは、ユウマといい感じだ。ショウヤにフラれたことは、二人には絶対に言えない。相談相手は、決まってカズマだった。

「マジかー。ダメだったか」
 手ごたえがなかったわけじゃない。去年の夏は、二人で花火を見に行った。カズマが気を利かせたのか、皆と行くはずだった花火大会は、ショウヤと二人きりになった。
 告白をした歩道橋から見る花火。打ち上げられる花火の音を聞きながら、ショウヤを見つめる。見上げないと、もう視線が合わない。広い肩幅に、喉仏、あの頃よりも大人になったショウヤに、私はどんどん夢中になった。

「ね、私たち付き合わない?」
 花火大会の帰り道、私は勢いで告白した。ショウヤは、一瞬、黙ってから「ごめん」と言った。

 あの日以来、私はショウヤと話しをしなくなった。今年の春、同じクラスになって、女子達のショウヤを見つめる視線が、私の気持ちを、また止まらなくした。

 音楽の話で、ショウヤに近づく。あの日の事を忘れているかのように、ショウヤは、よく話しをしてくれるようになった。

 さっき、勢いで送ったメッセージ。「ごめん」の文字を、何度も読みなおす。私は、少し後悔していた。

「ショウヤ、好きな子でもいるのかな」
「さぁ、どうだかな」
 カズマは、この後、2時間も私の話を黙って聞いてくれた。

 ショウヤは、今でも、あの頃と同じ音楽を聞いているのだろうか。私のプレイリストは、あの頃のまま。ずっと消せずにいる。

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