子どものゲーム&動画時間を管理する
前回の記事で、ぼくたちの家庭で息子のりとくんがゲームとつきあう際の考え方をご紹介しました。
そこで今回の記事では、このゲームとの付き合い方のルールを守っていくための具体的なやり方をご紹介します。
Windowsを使った子どもの遊び方管理
iPhone・iPad・Macを使った子どもの遊び方管理
と思ったのですが、ざっと項目を挙げてみたところで、先にもっと大事なことをまとめておきたいなと感じたので、具体的な内容はあとの記事に回すことにしました。
というのも、子どもを管理することを目的として具体的な方策に入ってしまうと、とても大事なことを見落としてしまうと感じたからです。
タイトル詐欺みたいになってしまってすみませんが、この遠回りにお付き合いいただけたら嬉しいです。
デジタル・シティズンシップ
「ICT リテラシー」や「デジタル・リテラシー」という言葉はよく耳にしますが、この「デジタル・シティズンシップ」という言葉は日本では耳馴染みが薄いかもしれません。
直訳すると、デジタル世界の市民権。
これをもう少し踏み込んで解釈しようとすると、いろんな定義の仕方があると思いますが、ぼく自身は「デジタル世界の自分のあり方」という言葉に言い換えられると考えています。
ゲームを遊んだり、Youtubeで動画を見たりするという行為は、「デジタル世界の自分のあり方」のほんの一つの側面に過ぎません。
デジタル・シティズンシップを確立する、つまりデジタル世界の中でどんな振る舞い・生き方をするのかを意識するというステップを抜きにして、ゲームや動画の時間を管理することをしてしまうと、こどもを広いデジタル世界の中で、主体性の薄い消費者の立場に縛り付けてしまう恐れがあります。
では、このデジタル・シティズンシップを培うために、何から始めればよいのでしょうか?
デジタル世界の「自分」
世界と関わる主体は、リアル世界においても、デジタル世界においても、「自分」が出発点です。
リアル世界であれば、自然発生的に芽生えた自我が「自分」という感覚の主体になりますが、デジタル世界では明示的にその受け皿を作らなくてはなりません。
それがいわゆる ID です。
自分と他人を区別するための Identification でもあり、自分が何者であるかを示す Identity でもあります。
子どもにも ID を
例えば、新しいスマホやパソコンを買って起動したら、まず最初にアカウントを作りますよね?
さらにそれを自分だけがつかえるように、パスワードも設定していると思います。
お子さんにもその端末を使ってもらう時、ご自身のアカウントをそのまま共有している方も多いのではないかと思います。
ですが、デジタル・シティズンシップを育んでいくことを考えると、これはもったいないことかもしれません。
なぜなら、その端末を入口にしてデジタルの世界に入っていくお子さんにとって、「自分」が存在しているという感覚が希薄になってしまうからです。
想像してみてください。
誰でも使える端末が目の前にあって、アカウント名もパスワードも入力することなく、デジタルの世界に入ることができるとします。
その前提で行うことを、自分事として捉えることができるでしょうか?
逆に、端末を使うために自分だけのアカウント名とパスワードを入力し、その名前とパスワードが自身の記憶や思い出とリンクするものだったとしたら。
デジタル世界に入った後、どんな行いをするかということに対して、少なからず当事者意識が生まれると思います。
この当事者意識の拠り所をつくるためにも、お子さんに専用の ID をつくることが効果的だと考えています。
管理する以前に大事なこと
ぼくも親としての立場から子育てをしている中で、息子のりとくんが不健康な状態に陥ってしまったり、不幸な状況に向かっていったりしないよう、管理をしなくてはという気持ちを持っています。
なので、楽しくて魅力的な時間が過ごせるがために、物事の優先順位を超えて没頭してしまうゲームや動画に子どもが耽ってしまうことに、多くの保護者が危機感を感じ、管理や制限をしなくてはという気持ちになることは痛いほどわかります。
では、そもそも管理は何のために必要なのでしょうか?
眼の前の危険を回避するためという考え方もありますが、回避できてしまったリスクの怖さや影響を当の子どもは経験することなく通り過ぎてしまいます。
親がいつでも目を光らせて、手を差し伸べ続けることも不可能です。
だからこそ、管理の目的はマイクロマネジメントを徹底することではなく、「自分」で「自分」のことができるようになる道筋を作ってあげることなのではないでしょうか。
そのためにも、お子さんにデジタル・シティズンシップの出発点となる専用の ID を作ってあげることが必要だと思っています。
「自分」は世界とどう関わるか?
というわけで、子どもがゲームや動画を見る時間を管理するための具体的なやり方をまとめてみようとしたところで、子どもが自分の ID をもつことの必然性と重要性のことを先にまとめることにした次第です。
目に見えないデジタルの世界にも「自分」は存在する。
その「自分」がどんな振る舞いをして、どう世界と関わっていくのか。
この根本を、ぼくたち大人も忘れないようにしたいですね。