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表情に色を乗せる話


突然ながら、わたしはメイクが好きです。
きらきらしたアイシャドウ、
花が咲くようにふわりと色を乗せるチーク、
ぷるっと唇を引き立たせるリップ。
手元にコスメを並べて今日のテーマカラーを
決めるあの瞬間。ああ、しあわせ。
メイクを楽しめる人でほんとうに良かった、と
しみじみ思います。

最初にメイクをしたのは、中学生のとき。
はじめて彼氏が出来て、少しでも可愛く
なりたくて、メイクの上手な友だちに
教えてもらったのが最初でした。
今考えればガタガタな真っ黒のアイライン、
それでも初めて目元を彩ったそれにとてつもなく
どきどきしたのを覚えています。
大人の階段上る、とはよく言うけれど、わたしにとってはあれが大人に近づいていく過程の
ひとつだったのだと感じます。

それからいくつも失敗をしました。
わたしは顔が濃ゆいので、すべてのパーツを
盛ってしまうと一気に古臭くなりました。
バブリーダンス、踊れそう。

日焼けしやすく暗めの肌色なので、
淡い色が一切発色しませんでした。
ふんわり淡め女子にはなれなかった。

目の下、がっつりチークが可愛くて真似したら
日焼けと間違われ遊びすぎと言われました。
今年まだ海行ってない。

たくさんの失敗を重ねて、それ以上に
たくさんのメイクを試しました。
webの記事も雑誌もたくさん読んで、
休みの日も練習のためだけにメイクしてみたり。

その結果、メイクが上手くなったかと言うとそうでもなくて、無難なメイクに落ち着きました。
ブラウンに少しゴールド、100%似合うけれど
驚きはない、そんなメイクの繰り返し。


そんなわたしのメイクを変えた本があります。

おフェロ顔、血色メイクといった流行を
生み出したメイクアップアーティスト、
イガリシノブさんのメイクブック。
やばめかわいめ、というコンセプトから
生み出されるメイクはお言葉どおり、
ほんわりした女の子っぽさもありながら
むわんとした色っぽさも相まって、
どのページを見ても胸がきゅんとします。

ハイライトは鼻根に入れるとうるうるのお肌に。
チークはサラサラとぺたぺたを合わせると質感がかわいい。
コントロールカラーを組み合わせた肌づくり。

わたしのいまのメイクの下地、
その半分くらいはこの本から学んだと思います。


でも。でもでも。



この本のなかでひときわ印象に残ったもの。
それはメイクではなくて、モデルさんの表情。
じゅんわりみずみずしく光る肌に乗る、やわらかな目元、ちらりと覗く口元のエロティック。
メイクの技術だってとても素敵、でもそれを
脇役にしてしまう彼女たちの表情の魅せ方。
その表情にメイクが鮮やかに艶やかに
色を乗せ、魅力をさらに引き立たせていました。



メイクはいらないものを隠すこと。
わたしはそう思っていました。

でも、必死に隠さなくても、
黄金比に近づかなくても、
多少メイクが苦手でも、どんな子でも
表情はその人だけのものを持っているはずで。 
その表情に色を乗せるだけで、こんなにいきいきと、やさしく、つよく、どんな印象をも創り出せる。

モデルさんは元が美人だから、表情の見せ方だって上手だから。
それも間違いではないでしょう。

それならなおさら、メイクの力を最大限借りて、
わたしたちだけの表情をもっとキュートに、
クールに、モードに、カジュアルに創りかえる。
そうしたら、もしかしてわたしたち、モデルさん越えも夢じゃなくない?

今現在、前より選ぶ色の選択肢が増えて、この色似合うのかな、なんて悩むことも増えて。
でも、その青いアイライン素敵ね、テラコッタのリップどこで買ったの?なんて声がかかるたび、わたしの表情がぐんぐんと底上げされていくのを感じます。

表情は万人すべてにあるものなのだから、
メイクの力はすべての人に与えられる。
女の子だけじゃない、男の子だって、
年齢を重ねていたって、逆に若すぎたって。
誰にでもどんなときでも、メイクの色のチカラは
わたしたちを鮮やかに彩ってくれると思うのです。

わたしにしかない表情をもっともっと
魅せるため、わたしは今日もたくさんの色を
ひろげてメイクを楽しむのです。




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