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【成果に繋がる実践UXリサーチ入門】課題を発見するためのUXリサーチ手法

※この記事はCreatorZineからの転載です。


UXデザインにおける大切なフェーズであることは理解しているけれど、どのように進めればいいかわからない。「定量リサーチ」、「定性リサーチ」という言葉は聞いたことがあるけれど実践できていない。本連載ではそんな方に向け、現場で使える具体的なリサーチの手法や業務への取り入れ方をお伝えしていきます。最終回となる第4回は「課題を発見するためのリサーチ手法」についてです。

 こんにちは。株式会社アジケでUXデザイナーをしている佐藤李里(サトウリリ)です。前回は、プロダクトの制作フェーズで有効なリサーチ手法をご紹介しました。これらの手法を使うことで、エビデンスを持ってUIデザインに落とし込んでいくことができるかと思います。今回は、デザインを作成したあとに、よりユーザーに寄り添ったデザインに改善するためのリサーチ方法をお伝えします。

 まずは、プロダクトやサービスのユーザビリティの課題を幅広く発見するための手法についてです。

リサーチ手法1:ユーザビリティテスト

概要
被験者が実際に触れることのできるプロトタイプを使ってタスクを実行してもらい、その様子や発言を観察。それにより、ユーザーの行動を理解したり、プロダクトの課題を発見します。

メリット
ユーザーがプロダクトを使っている様子を観察することで、ユーザーの行動や好みをより深く知ることができたり、プロダクトの中でユーザーにとって使いにくい部分など改善点を発見することも可能です。たとえばGoogle Analyticsなどで数値検証を行っており、ユーザーがサイト内をどのように動いているかは把握できていても、その理由がわからないといった場合に有効です。

方法
ユーザビリティテストの方法は、今回は割愛させていただきます。こちらなどを参考に、実施してみてください。

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Tips1:一度当たりの人数は少なくし、回数を増やす
ユーザビリティテストは、1回あたり3~5人に行うのが最適と言われています。(この人数で足りるのか不安な方はこちらを参考にしてみてください)

ただしユーザビリティテストは、被験者数に比例してモデレーターや分析に時間もかかります。時間が限られている状況では、1回当たりの被験者の数を増やすより、テストの回数を増やすことを意識しましょう。

たとえば、被験者数を5人に設定していた場合、最初のふたりのテストが終了した時点で明らかに重要度の高い課題を発見した場合は、ほかの3人でも同じ課題が発生し、時間が無駄になってしまう可能性もあります。その場合はふたりで切り上げ、プロトタイプをブラッシュアップしてから次のテストを行うなど、柔軟に対応し効率を上げましょう。

また、テストの頻度は多すぎるということはありません。LEAN UXでは、毎週木曜に3人のテストを行う方法が紹介されています。毎週行うのは難しいケースも多いと思いますが、回数を重ねることが重要であることを頭に入れておきましょう。

Tips2:リモートやモデレーターなしのテストで無駄な時間を減らす
テストの対象がデジタルサービスの場合、スクリーン共有を使ってリモートで実施することも検討しましょう。オフラインでの実施がマストなケースは、そのサービスが特定の場所で使われる場合やITリテラシーが著しく低い人が対象な場合などに限られます。

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もちろんオフラインで行った方がボディランゲージなどから得られる情報は多いです。しかし、リサーチャーの移動時間や、被験者の集めやすさ、自分の慣れた環境でリラックスしながら行えるといった参加のしやすさではメリットが多く、より頻繁にテストをすることが可能になります。ぜひリモートテストを積極的に導入してみてください。

また、UserTestingUsabilityHubなどのサービスを使用することで、モデレーターなしのテストを行うことも可能です。追加の質問がしにくいなどのデメリットもありますが、短時間でより多くの結果を得たい場合にとくに有効です。なお、ご紹介したふたつのサービスは、サイト自体は英語表記ですが、テストの質問は日本語で作ることができます。

 次はおもにトップページなどのコンバージョンを上げたり、直帰率を下げたい場合に取り組むべき方法を紹介します。

リサーチ手法2:5秒テスト

概要
文字どおり、被験者にウェブページを5秒だけ見てもらい、何のためのサイトだと思ったか、などの質問に答えてもらう方法です。

メリット
サイト訪問者は、最短50ミリ秒程度でサイトの質を判断し、そのままサイトを見るか離脱するかを判断すると言われています。そのため、時間をかけて作ったサイトがきちんと見てもらえるかどうかは、最初の数秒にかかっていると考えることもできるでしょう。

5秒テストでは、被験者がウェブサイト訪問直後の最初の5秒でどう感じるかを聞くことができるため、サイトの直帰率が高い理由など、定性的なデータを取得することができます。一度あたりのテストや準備にかかる時間も少なく、それでいてウェブサイトの直帰率に大きく関わる要素を確認することができるので、テストの時間対効果がとても高いテストです。


方法
1:サイトはあらかじめスクリーンショットなどを撮っておきます。こうすることで、ほかの画面に遷移することを防いだり、ローディングが遅いなど通信環境に依存せずテストを行うことが可能です。

2:被験者を探します。被験者はペルソナに近い人が身近にいれば、その人たちにお願いしましょう。ただし、トップページなどは誰が見ても何のページかわかることが重要なので、ペルソナにこだわらず、なるべく多くの人を集めて頻繁に行うことを重視するのが良いと思います。1度のテストで10人〜15人程度を集めると、複数人に共通するパターンを見つけられることが多いです。

3:被験者にサイトを5秒間だけ見せて、そのあとにサイトについて「何の会社か」、「何を提供しようとしているのか」、「どうやったらそのサービスを手に入れられるのか」といった質問をします。

リサーチャーが直接被験者に質問をするのではなく、先ほどご紹介したUsability Hubを使うことで、モデレーターなしで実施することも可能です。

 ここまでは、デザインを作成したあと、よりユーザーに寄り添ったデザインに改善するためのリサーチ方法をご紹介しました。これらの方法などを用いて改善を進めることで、ユーザーに価値を感じてもらえるサービスをリリースできるかと思います。


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 最後に、リサーチの手法以外で、すでに運用が始まっているサービスの開発にユーザーの声を取り入れる仕組みとして有効なものをいくつかご紹介します。

カスタマーサポートに協力してもらう
カスタマーサポートの担当者は、リサーチャーよりも頻繁にユーザーの声を聞いています。カスタマーサポートからユーザーの声を聞く機会を定期的に設けることで、最新のフィードバックを得ることができます。

また、カスタマーサポートのスクリプトに仮説を含めてもらうことも可能です。たとえば、仮説にもとづいて解決しようとしている課題があり、その課題やそれに関連する問い合わせがあった場合に「今後こういう改善をする予定です」と答えてもらい、それを聞いたユーザーの反応をあとで聞くのもありでしょう。そのほかにも工夫次第でさまざまな情報を得るチャネルになりうると思いますので、ぜひこまめに連携することを心がけましょう。

ユーザーコミュニティを運用する
自社のサービスのユーザーコミュニティサイトやFacebookコミュニティなどを立ちあげ、運用してみましょう。サービスの魅力や不満をコミュニティの書きこみから見つけることもできますし、通常のリクルーティングでは発見しづらいような貴重なユーザーを探し出す場所としても有効です。

 上記のような取り組みを行いながら、より多くの声から改善のヒントを得られるようにしていきましょう。

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 いかがでしたでしょうか。

 本連載では、UXデザインにおいて、リサーチが必要な理由や、サービスのフェーズに応じて限られたリソースでも実践できる手法やTipsなどをご紹介しました。

 「そうは言っても、リサーチは時間やお金がかかりそうだ……」と思った方は思い出してください。リサーチをすれば回避できるリスクを解決せずに開発を進め、リリース後に玉砕してしまっては、デザインや開発に費やした時間が無駄になるのです。またリサーチに懐疑的な人も、一度実施したりその様子をビデオなどでみることでその重要性を理解し、積極的に取り入れていくべきだという考えに変わることも多い印象です。

 サービスのリスクを減らす手段として、また、よりユーザーに価値を提供するために、ぜひ積極的にリサーチを行っていきましょう。読んでいただき、ありがとうございました!

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