無職と映画

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筋肉(コマンドー感想)

コマンドー(1985)マーク・L・レスター監督 唐突な死、唐突な筋肉!! 冒頭、メイトリックスの過去の仲間が突如殺される。あまりに唐突な殺害シーンが連続する中、急に筋肉!!まさに突如、訪れる理不尽な死を筋肉で蹴散らすこの映画を一瞬で示したシークエンス。 筋肉は全てを解決するとはまさにこのことで、あらゆる打撃が当然のように効かず、当然のように銃弾も当たらない。当然筋肉は鼻も耳もよく効くので、敵の位置もわかるし絶対聞こえない娘の助けを求める声が聞こえる。当然筋肉は怖いので全く

    • キングスマン好き目配せ映画(アーガイル感想)

      『アーガイル』(2024)マシューボーン監督、『キングスマン』シリーズや『X-MEN ファーストジェネレーション』等の人気作を手掛ける映画監督の最新作 あらすじ 感想(ネタバレあり) まず大前提として『キングスマン』は大好きです。特に1作目。1作目と比べると2作目以降失速した印象は少しありますが、それでもシリーズものとして「またキングスマンの雰囲気を楽しめる!」と満足しています。 予告編を見ている時点で「キングスマンみたいな映画なんだろうなあ」と楽しみにしていたが、同時

      • ジェイクギレンホール顔圧映画(コヴェナント 約束の救出感想)

        『コヴェナント 約束の救出』(2023)ガイリッチー監督、過去作品『スナッチ』『オペレーションフォーチュン』 あらすじ 感想(ネタバレあり) アメリカ軍基地帰還シーンの迫力が凄まじい。 帰還する際、主人公のジョンキンリーの視点で進んでいく。敵がどこから出てくるかわからない状況に置かれた主人公の視点は『ローンサバイバー』に近い。また、こちらは敵の姿に気付いているが、向こうは気付いておらず、音を立てないようにやり過ごすか、ステルスアクションするか、どちらも緊張感高くかなり観

        • こういう映画をコンスタントに観たい...(ザ・クリエイター感想)

          『ザ・クリエイター』(2023)ギャレスエドワーズ監督 ギャレスエドワーズ監督、高低差のあるものえお撮るのがうまい、平原の中に間隔を空けて聳え立つ岩山とその上を飛ぶでか飛行体、それを見上げる人。でかいものが際立ち方がとてもうまい。考えてみれば、ゴジラや特にローグワンから印象的だった。ニューアジアのロケーション、草原はローグワンに似ている。監督がでかいものを際立たせるにはどのようなロケーションが適切かをおそらく理解しているのだろう、でかいものが映っているカットは特に魅力的に見

        筋肉(コマンドー感想)

          カオスに陥る(エンター・ザ・ボイド感想)

          『エンター・ザ・ボイド』(2009)ギャスパー・ノエ監督 面白いしこれこそ映画館で観たい映画。めちゃくちゃおもろかった。 冒頭の視点でこの映画が主人公の主観で物語が進むことを示す。鏡に映る自分を見る見事なショットでは、観客は主人公を見ているのではなく姿形は違えどそこに自然と自分自身を投影せざるえない。この時点で主人公と観客の間に存在しているはずの境界は乱れ始めておりこの映画のあらゆるカオスに陥る予感を想起させる。第三の壁を越えるとはよく言うが、キャラクターも観客も互いに壁を

          カオスに陥る(エンター・ザ・ボイド感想)

          持たざる者へ(ダーティーハリー感想)

          ダーティーハリー(1971)ドンシーゲル監督 上に立つ者と下に立つ者、監視する者とされる者。この対比構造が映像でうまくこなされていた作品。冒頭、犯人は建物の上からスナイパーライフルで殺害。その後、死体が発見され、主人公の刑事キャラハンは犯人と同じところに登り街を眺めるようなシーンから始まる。「街を眺める」行為が映画内でいくつか散見される。この冒頭だけではなく、警察が高いところに登り犯人を探しているシーンなど。また、それだけではなく署内にある街の模型からトランジションして実際

          持たざる者へ(ダーティーハリー感想)

          偏見が露になる時(12人の怒らる男感想)

          『12人の怒れる男』(1957)シドニー・ルメット監督 とても良い… 12人の陪審員が死刑判決を下されようとしている少年について有罪か無罪かの議論、ほぼ一つの部屋を舞台に繰り広げる会話劇。脚本の出来の良さはさることながら、人物の配置などの映像の構図、カメラワークが見事にその時その時のキャラクター達の立ち位置、心情を表しており90分間一切緊張感を途切れさせない、どこを取っても見所のある映画だった。 冒頭、裁判所を見上げるカットから始まる。シンメトリーな建築物、映像構図、手前

          偏見が露になる時(12人の怒らる男感想)

          男性性批判で読むエイリアン(エイリアン感想)

          『エイリアン』(1979)リドリースコット監督、改めて観たので感想を。 何回めの鑑賞か分かりませんが久々に観たらめちゃくちゃ面白かった。 冒頭、宇宙船の乗組員は冷却睡眠から目覚める。白を基調としたシンメトリーな空間はどこか神聖さをイメージさせる。また、冷却ポッドの開き方は後のエイリアンの卵の開き方に酷似する。このシーンは「誕生」を映し共にその神聖なイメージを映し出している。しかし、次のカットではタバコの煙が蔓延し、散らかった船内での食事シーンが映る。この一連のシークエンスは

          男性性批判で読むエイリアン(エイリアン感想)

          お、俺たちがマダムウェブ!!??(マダムウェブ感想)

          マダムウェブ(2024年2月23日公開)TジョイPRINCE品川で鑑賞 公開前につまらないと話題になってしまった悲しい映画、観ないとわからないので評判だけで闇雲に叩くもんじゃないですね。 以下感想(ネタバレあり) 宣伝にて、本格サスペンス!!とおっしゃられていましたが、本格かはよく分かりませんが確かにサスペンス映画なのか…?となる。 あまりサスペンスが何か、定義づけるのも難しいが、(サスペンスといえばサスペンス映画史って本が面白かったです。) ヒッチコック映画に見られるよ

          お、俺たちがマダムウェブ!!??(マダムウェブ感想)

          真実はどこまでも沈み行く(落下の解剖学感想)

          『落下の解剖学』(2024年2月23日公開)ル・シネマ 渋谷宮下にて観てきました。 メモ程度の雑文ですが 冒頭、階段からボールが落ちて、それを犬が拾い上げるというカットから始まる。この時点で「落ちたものを拾い上げる」という行為が後に起きる転落事件を拾い上げて緻密に解剖していくこの映画を示唆するようなカットになってる。 作家の主人公にインタビューにきた大学生、しかし主人公の夫がスピーカーから流す音楽があまりに大きいため、インタビューは中止。主人公もそもそもインタビュー自体にあ

          真実はどこまでも沈み行く(落下の解剖学感想)

          映画からの逃避(テルマ&ルイーズ4K 感想)

          リドリースコット監督『テルマ&ルイーズ 4K』(1991)をヒューマントラストシネマ有楽町にて。 最近の『ナポレオン』や代表作『エイリアン』等、男性性批判はリドリースコットが持つ一つのテーマだと見受けていたが、この映画ではより明確に示されていた。 以下雑文 冒頭、ダリルが乗る派手な色をした車はまるで自分の地位を誇示するかのように見える。テルマが駐車場でレイプされかけるシーン。人の姿はなく画面に均一に敷き詰められる大量の自動車の後ろ姿を捉えたショットは、男性優位(この場合単純

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          あの近未来像に名前はあるのか。(未来世紀ブラジル)

           未来世紀ブラジルを観ました。 1986年公開、テリーギリアムの映画。「12モンキーズ」の人です。 情報優位社会  テレビで紹介されるダクトはよくわからないが大人気と紹介されている。お店で出されるご飯は見た目はぐちゃぐちゃで何でできてるかわからないがさされた棒には美味しそうなステーキの写真が貼ってある。それを美味しそうに食べる。  パブロフの犬の話を思い出す。ボタンを押せばエサが出てくるという情報が満足するために必要であり、そこまでの過程などどうでもいい。  現代人が

          あの近未来像に名前はあるのか。(未来世紀ブラジル)