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あの近未来像に名前はあるのか。(未来世紀ブラジル)

 未来世紀ブラジルを観ました。

1986年公開、テリーギリアムの映画。「12モンキーズ」の人です。

情報優位社会

 テレビで紹介されるダクトはよくわからないが大人気と紹介されている。お店で出されるご飯は見た目はぐちゃぐちゃで何でできてるかわからないがさされた棒には美味しそうなステーキの写真が貼ってある。それを美味しそうに食べる。

 パブロフの犬の話を思い出す。ボタンを押せばエサが出てくるという情報が満足するために必要であり、そこまでの過程などどうでもいい。
 現代人が使ってるさまざまな電化製品もほぼ同じような状況である。中身がどうなってるかわからないがボタンを押せば動くから、覚えるのは操作方法。今使ってるmacbookはm1proと表記しているが分解したらintelmacかも知れない。そんなことはあり得ないと思いながら多くの人が分解しない。その製品が思ったように動かなければ私たちはイライラするようになってしまった。
 狩猟採集していた時代は誰もが武器の作り方を理解していたというが現代、生活の効率を高めるために工程を分業したせいで専門性が高まり作業が不透明になっていく。その結果、ミスが生じた時どこで発生したか分かりづらくそれぞれの工程が別の工程のせいにする。問題は解決しない。

 1986年時点でそれを予想出来た人は少なからずいただろうが、それを大衆メディアである映画で作品の中で伝わるよう表現し世の中に公開するテリーギリアムの先見性だけでなく表現力が何よりもすごい。(最初に述べたような)食事、会話、仕事、身なり、その世界のあらゆる要素が世界を構築するために納得できる要素となっており、これからの世界を風刺する作品となっている。映像を眺めるだけでもとても面白いです。

あの近未来像に名前はあるのか

 ちょうど1980年代とかそれ以前のSF映画あの独特な近未来像に名前ってあるのでしょうか。銀色の自動でシャンプーしてくれたりすつようなやつとか。銀色がよく使われてるやつ。「トータルリコール」とか「華氏451」とかでみるような。迎えることのなかった20世紀からみた21世紀像って何か名前とかあるのか気になる。明確にどこがターニングポイントか調べてみるのも面白いと思うのでやってみたいと思うが。あれ本当になんなんだろう。いつの間にか無くなってたし。多分現実が追いついたら実際は銀色だったりその他デザインが現実とは相性悪いってなったんだろうけど。それっていつなんだろう。

人は人の何で人を好きになるのか(ネタバレですので)

 ラストの急展開はなんだったのか。サムは逃げ切れてないしジルは撃たれて死んでいるのだろう。ただ、サムは幸せな幻想の中で事きれる。映画全体を見てそれでもいいのではないかと考えていた。
 「人は人の何で人を好きになるのか」それは身勝手な理由だった。サムはジルが夢の中で出てきた女性に似てたから。中身なんてまともに知らないし、夢の中に出てきた運命!!みたいなテンション。それだけで恋に落ちたし、でも上っ面な理由でもジルのために一生懸命になった。
 ジルについてあまり描かれていなかったが、描かれた範囲で判断するなら自分のことを盲目的に好きなサムが自分のために一生懸命になったから好意を抱いた。ジルの過去はよくわからないがそれだけでもジルにとっては好意を抱くに足るだけの理由だったのだろう。
 側からみたら正直それだけで?ってなるが結局抱く感情なんて認識の問題で大きく変化する。もし夢に出てきた女性が黒髪の女性ならジルに好意は抱かなかったし、ジルが普段からはちゃめちゃにモテていて自分に命をかける人がいたらサムの行動は大したことないだろうし。
 発している行動はこれまでの人生の文脈から起こっていてこの人の本質を知りたいならこの文脈を掘り下げていくべきなのにも関わらず、他人から見れば好意も嫌悪も発した行動からしか判断されない。
 私たちは技術の進歩も社会も関係なく与えられた情報が優位に立ち、全てそれをもとに判断した認識が全てということになる。
 だからこそラストはきっと現実ではサムもジルも死ぬだろうけど、最低でもサムの主観ではジルと幸せに暮らしている。サムの認識では、それが例え現実でなかろうが、その認識が現実となっているのだからある意味ハッピーエンドではないかと。
 この情報優位社会で自分の認識だけで出来た世界で幸福を自己完結させてるサムは幸せだったのではないかとそう考えた映画でした。

一発書きはちゃめちゃ文章です。
とても面白い映画でした。おすすめです。




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