読書|噛みあわない会話と、ある過去について
ふとした時、頭によぎる過去の出来事。向き合うことも逃げることもできないまま、大人になってしまった。
短編全4作。自分の一部となっている過去の思い出ってありますよね。
それが嫌な記憶の場合、自分一人の出来事ならまだしも、誰かと共有してしまっているとあらぬ方向にモヤが行き渡ります。
昔の教え子だった”パッとしない子”が芸能人になった。
"誰からも嫌われていた子"が、世間の注目を集める塾の経営者になった。
自分目線で過去の出来事を見つめた時と、他人が思っていたことのチグハグさ。
「あ、やってしまった」という後悔を指摘される以上に、無意識な言動が他人を傷つけていたこと。
素敵な思い出を共有していたつもりが、自分だけの美談になっていたこと。
今だからできる過去の清算。今だからより重く、真実がのしかかってくること。その両方を同時に味わっている感覚になりました。
自分の中に眠っている傲慢さや無神経さなどが、無自覚にヒョコヒョコ顔を出していたかもしれないと思うと、怖くなります。
昔ね、実はこう思っていたんだよ。
このフレーズに続く言葉が、自分にとって嬉しいものでありますよう、無自覚な刃物を持たないようにしたいと思いました。
前回の読書記録はこちら。
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