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読書|天国はまだ遠く

辛い時、逃げ場がない時、人は生きることを諦め、死を思い浮かべる。

保険の営業を3年勤めた千鶴。仕事や人間関係のストレスで心身ともに疲弊し、もう全てから解放されたい、と知らない地で死ぬことを選びます。

でも、うまく死ぬことができなかった。物語は、死と隣り合わせの千鶴とその後村で過ごす千鶴の日々を描いています。

死に場所として選んだ山奥の村は、山や海、野菜や魚、鶏など自然豊かでデジタルな煩わしさが全くない場所でした。

民宿を営む同世代の田村さんと、村で過ごしていくうちに、死ぬ選択肢が消え、生きるエネルギーを得ていきます。

こうして見ていると、太陽は黄色でもオレンジでもなく、光そのものなんだっていうことがわかる。深く広い海を照らすすごい威力の光の塊。じっと見ていると、すぐに目が眩む。

P106

息をするのがしんどい時、自分の人生が苦痛から解放されるのは死ぬ手段しかないのでは、と過ぎることがあるかもしれません。

でも、しがらみを強制的に断ち切り大自然に身を置いてみると、苦痛が遠く離れていくこともあります。強制的に断ち切ること自体が難しかったりするんですけどね。

200ページ弱の物語だったので、すぐに読了しました。死んでしまったら、あの広大な自然も、美味しいご飯も、眩しい朝日も味わうことができなかった。

そう思うと、生きることで堪能できる幸せなことを、今の私は捨てたくないと思いました。


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