Rinto(凜都)

Mythologies 〜日々の小さな神話〜 ファッションを絡めた日常を綴るエッセイ。…

Rinto(凜都)

Mythologies 〜日々の小さな神話〜 ファッションを絡めた日常を綴るエッセイ。 Rinto:仏人思想家ロラン・バルトを研究する社会人大学院生。 元デザイナー、現在繊維メーカー勤務。 関心事はフランス現代思想、ファッション、欺瞞、格差社会など。 執筆のご依頼受け付け中。

最近の記事

花占いからのアンガージュマン

 好き 嫌い 好き 嫌い こんな言葉をぼやきながら、花びらをちぎった経験、皆さん一度はあるのではないでしょうか? 花占いもお国柄が出るようで、フランス流はこんな感じ。  好き 少し好き とても好き 情熱的に好き 熱烈に好き 全く好きじゃない  最近これを知って一人感嘆してしまったが、基本的に「好き」がベースになっていて、八割強の確率でポジティブな結果となる。好きか嫌いの二者択一ではなく、好きにも段階が設けられていて、この段階制については非常に適切だと思われた。人の感情は二項

    • 変化にまつわるエトセトラ

        いつまーでも変わらぬアーイを   キミーに届けてあげーたい  こんな曲が九十年台前半、爽やかの表象と化したポカリスエットのCMと共に大ヒットした。「ええ曲やけど、うーん、なかなかそれは難しいんじゃないのぉ?」あれから曲がりなりにもそれなりの年数の人生を歩んだ私はそう問いたい。  世の中はうつろい行く。まさに諸行無常(この熟語大好き!)、長らく続いた「コロナ感染症対策」もようやく終わりを迎えた昨今、巷ではマスク着用が個人に委ねられ、パーテーションが取り払われ、フィジカル

      • 美の基準

        「フランス人が本当におしゃれかどうか確かめたい」 そんな動機を綴り、かつて私はワーホリに応募し、そしてあえなく落選した経験がある。その後留学という形でパリに住みながらも「果たしてフランス人はおしゃれなのか?」と考え続けていたが、「結局の所、スタイルが良いから何を着ても素敵に着こなせる」という安易な結論に至っていた。この結論も間違いではないと思うが、二月に久し振りにパリを訪れ、「パリジャン、パリジェンヌはやっぱりおしゃれだな(私も頑張ろうっ!)」と強く思い、そのおしゃれの所以を

        • 映画『ある男』からのタイパ考察

          「シャネルの映画がやっていて大注目しています。私は一人でも行きます」 深夜にそんなメッセージが知人十五名程のライングループに送られて来た。どうにもリアクションし難いお誘いで誰も返事しないのではないかと思い、いや、だからという訳でもないが、私も深夜に返してみた。 「『ある男』(原作、平野啓一郎)も観たいので悩ましいです。」 こちらも答えになっていないが、スルーするのも忍びなく、そんな形になってしまった。翌日その友人(『ある男』は既に小説で読んだらしい)から個別に連絡が来て、『あ

        花占いからのアンガージュマン

          サンリオいちご新聞 〜「女の子」って?〜

          女の子にとって、結婚はひとつの夢。でも、結婚だけが人生じゃない。自分の才能を広い社会の中でためしてみたい。キャリアウーマンとして生きるのもいい。 また、しばらくの間仕事をしてみたいっていうのも、その人の考え方。どれが良いなんて決められない!(「いちご新聞」昭和五十五年二月一五日「女の子のしごと」より引用)  先日、京セラ美術館に行って来た。個人的に高度経済成長期の大量生産文化みたいなものに関心があり、「フーン」とか言いながら有名なキャンベルスープの缶を眺めたり、「なるほど」

          サンリオいちご新聞 〜「女の子」って?〜

          シルク神話 ロラン・バルトやらインドファッションやら

          「シルク神話」という言葉について。世界中のマーケットで共通する概念だとは思うけれど、特にインド絡みで使われることが多い気がする。もちろんシヴァ神みたいにシルク神がいるわけでもなければ、世界史の授業で習った『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』みたいにとんでもなく昔から伝わる神話の一つでもない。あらゆる繊維の中でシルクが最も上質で優れた高級品であるという、絶対的なシルク信奉の文脈で使われる言葉だ。 神話「ミトロジー」《仏語: Mythologie》 ① 神話や伝説の集合体 ②

          シルク神話 ロラン・バルトやらインドファッションやら

          底無しのコンカー沼 経費精算から鑑みたテクノロジーと人との関係

           ここでこっそりと告白したいが、私はコンカー(勤務先で使用している経費処理ソフト)が苦手だ。先日も出張旅費精算にてこずって結構な時間を費やしてしまった。一人悪戦苦闘した後に、電話で問い合わせた先の方も確認にかなり手間取っておられ、しまいには自分で言うのもなんだが、給料泥棒している気にすら陥った。でも「コンカー難しい」と大きな声で言うのも憚られ、テクノロジーについて行けてない年寄り扱いをされることに怯えつつ(その扱い自体はさほど間違いではない気もするけど)、一人黙って悶々と格闘

          底無しのコンカー沼 経費精算から鑑みたテクノロジーと人との関係

          二項対立

          「「自分たちの着たい服が売ってないから」 九十年代後半、そんな理由でモデル達がブランドを立ち上げて行った。その流れで出来上がったストリート系カジュアルアイテムの希少性の所在はややふわっとしたものだったが、あの頃から「おしゃれなあの人が手掛けた服=イケてる&安心」的な価値観が浸透し、現在のアパレル業界での巨大なインフルエンサーマーケットとして成長したのだろうと一人考察。また同時に注目したいのは、専門家と非専門家の垣根が低くなって行ったということだ。 もう何年も前からだがモデル、

          一億総表現者

          「一億総表現者」という言葉を初めて目にしたのは、高校時代(もはや遠い目をしたくなるワード)に読んだ新聞記事だったような。それは小説の書き方的な書籍が売れているという内容だったのだけれど、年月を経て小説という形ではなく、SNSやこちらのnoteなどを通して、巷は現在ホンマモンの「一億総表現者」の様相を呈している。かくいう私は、驚くほどに言語運用能力の高い、名も知らぬ3歳児とそのジイジのチャンネルや、東海地方訛りのなぜか惹かれるおばあさんのチャンネルを中毒的に、同時に日々後悔を伴

          一億総表現者