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「ヴァン・ダ・イールー渓谷の民」武村賢親

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黒い谷に迷い込んでしまった研究者の手記をもとに綴られた物語です(設定)。 文明人である研究者と原住民の戦士との交流を書いたファンタジー作品。
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#純文学

琳琅 第二号より、「ヴァン・ダ・イールー渓谷の民」武村賢親



 こうして儀式を終えた獲物は集落に持ち帰られ、初めて族長と相対したあの大きな住居で、集落の住人全員に分配される。

 彼らの集落は谷底の少し開けた場所に密集する灌木帯によって隠されるように存在していた。絡み合った蔓や枝葉によって黒い雨から守られているのか、集落周辺の地面や草は、渓谷内の雨曝しになった場所ほど黒く染まってはおらず、辛うじて農作物を育てることのできる環境にあった。といっても、育て

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