シェア
琳琅の会
2020年11月27日 21:36
小羽千尋の視点3 並々とビールが注がれたジョッキを片手に、乾杯の音頭をとる。きん、と澄んだ音が響くと、縁のギリギリに留まっていた白くきめの細かい泡が揺れて、わたしの親指に滴った。泡に上唇をつっこみ、ごく、ごく、と喉を鳴らしながら嚥下する。詰めていた息を勢いよく吐き出すと、ホップの香りが口内に広がってはればれとした気分になった。トッキーがわたしの顔を見て自分の鼻を指さしている。拭ってみると白い泡
2020年11月28日 23:11
鴇田重喜の視点3 もぞもぞと身体を動かしながら僕の太ももに頭を乗せて胎児のように丸くなった小羽は、僕が何か言おうとする前に細い寝息を立て始めた。柔らかい手触りの髪が流れて、小羽のいつまでもあどけなさが抜けきらない目元を隠す。「井塚さん、コートを」 取ってください、という言葉を待たずに立ち上がった井塚さんは彼女のコートをハンガーから外して手渡してくれた。そのまま部屋の引き戸を開けて靴を履