’すぺしゃる’の向こう側 (3)
愛を探しに出た ぼくとりゅう。旅の向こうに もっと大切なものが あった。本当の幸せを手に入れる方法を 見つけた ぼくの冒険物語。
3)きらきらをあつめる
ぼくは、きらきらを集める冒険に出ることにした。前に、本で読んだ。夜の12時に、お月さまにむかって、「冒険、行きますよ。」って言うと、ふくろうが来て、星がきらきらして、雲がたくさん集まってきて、冒険に出かけられる話。「よし、これで、行こう!」と思った。いっしょに、りゅうを連れていきたかったので、ノートに、りゅうを描いてみた。色えんぴつで、緑にぬって、ピンクの羽をつけて、ちょっとだけ、あかい火をふくりゅうだ。顔は、ちょっとやさしい、かわいいりゅうだ。われながら、よく描けたと思った。
リュックサックに、Tシャツと、ズボンと、フリースのパーカーと、運動靴と、かいじゅうの絵のついたお気に入りの靴下を入れた。台所から、こっそり、水を入れた水筒と、ママの「とくべつ」クッキーを持ってきて、入れた。水よう日に、ママが、インターネットで調べて作った、メイプルシロップクッキーだ。食べたとき、すごくおいしくて、びっくりした。りゅうを描いたノートと、色えんぴつの筆箱もいれた。それから、ちょっと、迷ったけれど、やっぱり、ママの「とくべつ」な万華鏡を、そっと、リュックサックに入れた。タオルで、だいじに、くるんで入れた。「おにいちゃん、おねえちゃん、たつや、ごめんね。」 万華鏡は、みんなが大好きだったから、「ごめんね。」と思った。でも、ぼうけんは、ちょっと怖かったから、勇気を出すのに、ぼくの一番の「とくべつ」なものを、持っていかないといけないと思った。それから、ぼくは、リュックサックのチャックを閉めて、そっと、子ども部屋の窓の下に置いた。たくさん入れたから、リュックサックは、いつも持っているランドセルと同じぐらい、重たかった。
つづく…
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