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宇宙人と交信して「神」になった男

突然だが、私は神である。
正確には、神であったことがある。
何を言いだすんだと思われるだろう。
気でも狂ったかと思われるかもしれない。
正解だ。
私は狂っている。
今日はその話をしよう。

◆◆◆◆◆◆

はじめは、部屋に散らばっていたチラシだった。 
チラシを通じて、宇宙人が話しかけてくるのである。 
文字の一部が浮き上がって見えて、それが彼らの言葉だと分かるのだ。
たとえば、なにか悩みごとがあるとする。
私は考える。
「これから恩師の元へ年始の挨拶に向かうのだが、何をお土産に持っていこう」
すると、「相談」「相談してください」などの文字が浮かび上がって、私に「話しかけてくる」のだ。
そこで私はその通りにする。
「これから恩師のもとへ年始の挨拶に向かうのですが、何をお土産に持っていったらいいですか?」
心の中で念じるのだ。
そして車に乗り込み、最寄りの駅へと向かう。
すると、たまたま流れていたラジオから「四角い」「リボン」「ピンク」といった単語が聴こえる。
もちろん話の流れであり、前後の文脈についてはいまとなっては思い出せないのだが、その三つの単語が私に向けたメッセージだとはっきりわかるのだ。
私は駅前の菓子店でピンク色のリボンのついた四角い箱に入ったクッキーを買った。
そのまま改札を通ろうとすると、隣の人が切符を入れ間違えたらしく警告音が鳴る。
「ピンポン!」
私は
「あ、正解なんだ。これでよかったという合図だ」と安堵してホームへと向かうのだった。

◆◆◆◆◆◆

やがて、電車がやってくる。

◆◆◆◆◆◆

颯爽と車内に入ると、たくさんの乗客に紛れて何人かの宇宙人が乗っていた。
それは、雰囲気でわかるのだ。
あっ、ここの人とそこの人とあそこの人、宇宙人だなって。
私の心に緊張が走る。
と、吊り広告の文字が浮かび上がる。
「テスト」
なるほど、テストか。私に試練を課すのだな。あいわかった。
気合を入れて、集中を深める。

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