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螢明舎という喫茶店

螢明舎という喫茶店をご存じだろうか

千葉県の谷津と本八幡にある喫茶店だ

私はこの喫茶店が大好きだ


私が初めて螢明舎に訪問したのは2年ほど前

Google mapで情報は得ていた

一軒家の喫茶店・・・素敵だろうなあ

私はわくわくしながら谷津駅に降り立った


時間は午前10時

開店と同時に伺ってみたかった

商店街を歩く

開店している店もあれば、シャッターが閉まったままの店もある

テーマソングなのかBGMが流れている


きょろきょろ周りを見ながら歩いていると、商店街の終わりまで来てしまった

あれ?と顔を右に向けると、洋館があった

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背の高い建物に挟まれるようにひっそりと佇む洋館

BGMが止まった気がした

もう好きだ。そう思った


さっそく店内へ

と、ドアノブを掴んだが開かない

覗くと店内は真っ暗だ

時計を確認する

10:04・・・

私はマップの情報は時々裏切ることを思い出した

記載されているURLから公式ホームページへ飛ぶ

ホームページがあるんだな・・・と少し驚きながら営業時間を探すと


「営業時間:10:00ごろ~」


ごろ・・・!なんとアバウトな・・・!

しかし喫茶店とはそういうものだと思っている

オーナーの店なのだから、好きな時に開けてもらいたい


私は開店を待つため、商店街の道へ戻った

「ご自由にお持ちください」と書かれたハンガーが大量にあった

なんだかそういうのも最近見なくなったな


少し駅の近くに戻ると、もう一軒喫茶店があった

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ここはチェックしてなかったな

モーニングもやってるみたいだし、ここで開店を待とう


店内には3組ほど常連客と思われる先客が

私は席に着くなりニコニコと水とおしぼりを持ってきてくれたママにモーニングを注文する

左程待たずに出てきた

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厚めに切られた食パンが、良い色にトーストされている

私は二つある片方にだけバターを少し塗り、何も塗っていないもう片方にかぶりついた

サクッサクッ

一つ目が食べ終わるころ、もう片方にはバターが良い感じに染みている

じゅわっ

食パンってなんで切る厚さによって全然違うものになるんだろうな

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そんなことを考えながら窓の外を見る

あれ、目の前の店、シャッターが開いてる

時計を見ると、10:33

いい時間な気がする

つかの間のモーニングを終えて、私はもう一度あの洋館へ行ってみる


今度は人のいる気配がした

店内に入ると、窓際の席に新聞を読むおじさんが1人

眼鏡をかけたお兄さんがカウンターで珈琲をドリップしていた

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じっくり淹れてもらった珈琲はロア・ブレンド

かぼちゃプリンも頼んだら、可愛いガラスの器できた


私はまったりしながらこの喫茶店について調べた

フランネルで抽出するフレンチスタイルの珈琲店

絵描きである店主がデザインした店舗

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アンティークに間違われるらしいが、すべての家具が特注品で、1つ1つの席に趣がある

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店主のラフスケッチをもとに施工された建物なだけあって、個性が外観から溢れ出している


後日、本八幡にある店舗にも行ってみた

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まず目に飛び込んでくるのがこの立派なカウンター

なんと7mもあるという

店舗は2階に位置するし、搬入時はとても大変だったらしい

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チェアはシェーカーチェア

漆塗りのテーブルに合わせると、改めてチェアの軽さに驚いてしまう

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暑い日だったこの日はオ・レ・グラッセ

店主が上手な飲み方を教えてくれる

珈琲とミルクが均等に口の中へ入っていくように、ある程度角度をつけるのだ

寡黙に見えて話せばフレンドリーな店主だった


この喫茶店・螢明舎は、

小説家・村上春樹も繰り返し訪れた店でもあるらしい

なんだかわかる気がする

私は滅多に読まない本を、店に入ってから読んでみたいとすごく感じていたのだ

人生で片手で数えるほどしか本というものを読んだことがないのに

新しいときめきを感じた

当時の店主がこだわりを詰めたこの店に、触発されてる



そして最近、その小さな夢が果たされた

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螢明舎・本八幡店で小説を読んだ

人からおすすめしてもらった本で、とにかく本を読んだことのない私が、ほぼ毎日通勤の電車でちまちまと読み続けていた本だ

この本の面白さと、念願の螢明舎で小説を読むということが達成された喜び

より一層この喫茶店が好きになった

なんだか、理想の自分にすこし近づけた気がした


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螢明舎にはまた必ず訪れるだろう

その時の私は、どんな本を持っているのか

今から楽しみである


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end.

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