リュブリャナに新しくできたFab施設、Center Rogってどんなところ?|スロベニア日記 #9
こんにちは!スロベニアにあるリュブリャナ大学に留学中の東郷りんです。(実は8月からエストニアのEstonian Academy of Artsという大学に交換留学に来ており、今この投稿はエストニアの首都タリンから書いています)
今回はCenter Rogという、昨年10月にリュブリャナにオープンした大きなFab(ものづくり)施設について。私がリュブリャナに来たばっかりのときにオープンして、その設備や活動内容に感動したのを今でも覚えている。これがあるとないじゃ全然リュブリャナの印象が違っただろうな〜と思った。
ただ、ぜひnoteで紹介したいと思って、Rogについて調べていくなかで、ここがCenter Rogになるまでには輝かしいだけではない負の歴史や闘争があったことも知った。書いていたらとっても長くなってしまったので、前編では概要や現在の使われ方、後編で歴史やできあがるまでのプロセスについて、の2つに分けることにした。まずはピースフルな今のCenter Rogについて!
1. 概要
Center Rogは2023年の10月にオープンした、リュブリャナ市が運営している公共のFab施設である。4F建ての建物で、1Fが9種類のラボ、2Fがカフェと展示スペースと図書館、3、4Fにはクリエイターがスタジオとして使える部屋やレジデンススペースが連なっている。
↓ 概要と雰囲気は動画がわかりやすい
もともとはRogというスロベニアの自転車メーカーの工場だった建物だが、ここの工場は1991年に閉じ、市が2002年に建物を買い取ってリノベーションして作られた施設だ。ちなみにこの自転車メーカーRogは規模は縮小したものの今もビジネスを続けており、国民が誇りに思っている国産のメーカーの一つだそう。「きっと日本でいうSONYやPanasonicみたいな企業だよ」と自転車屋さんのおっちゃんが教えてくれた。
9つのラボ
デジタルファブリケーション、テキスタイル、木工、金属、バイオ、陶磁、ガラス、ジュエリー、フードの9つのラボがある。
各ラボでは主に入居しているクリエイターが実験や創作活動をしていたり、一般向けのワークショップが開かれている。もちろんクリエイターとして入居していない市民でも登録をして講習を受ければ設備を有料で利用することもできる。私は、大学の工房が使えるからRogの工房は使ったことないんだけどね。
2. どんな風に使われている?
わたし個人的には、2Fのカフェでコーヒー買ってから、公共スペースの机と椅子があるところで作業するという使い方が一番多い。電源もWi-Fiも使えるし、机も大きいし、そんなに混んでないのでゆったり使えるのがとてもいい。
クリエイターのラボ&レジデンスとして
自分のラボとして使っているクリエイターもいて、登録していればどのラボでも使えるので、セラミックをメインでデザイン&制作しているデザイナーがバイオのラボで素材開発の実験をしていたりなど、縦横無尽な創作活動をすることができるようだ。3F, 4Fはスタジオスペースが19室連なっていて、クリエイターやチームがオフィスとして使っている。私の友人にもこの場所をスタジオとして契約して使っている人もいる。たしか、1ヶ月で150€くらいだったはず、なんてお安い!また、レジデンスも5部屋あり、滞在制作などにも使えるそう。
ワークショップの開催
1Fのラボでは日常的にワークショップが開催されていて、常になにかしらのワークショップの募集がなされている印象。Center Rogの事務局が主催者としてラボに親しんでもらうために開催するものもあれば、入居しているクリエイターなどが主催するワークショップが行われていることもある。
イベントの開催
週末はアートマーケットが開催されていることもしばしば。大きい庭もあるので、外で音楽や食のイベントがやっていることもある。作業しにいったときに音楽のイベントやってるとにぎやかすぎて作業にならない。笑
カフェ
2Fには「Kavarna Specialka(カヴァルナ スペシャリカ)」というカフェが入っている。このカフェは、GOAT STORY というスロベニアのコーヒーロースター&コーヒープロダクトを販売する会社がプロデュースしていて、コーヒーがとっても美味しいのでおすすめ。作業するにもいい場所なので、大学の友達とここでMTGすることもよくある。Center Rogがどういう趣旨の施設か詳しくない人もここのカフェには行ったことある、という人も少なくない。2Fにあるのにすごいなあ。
ちなみにプロデュースしているGOAT STORYの作った、GINAというコーヒー抽出器具はバリスタ世界一を決めるWorld Brewers Cup 2018で日本出身の深堀 絵美さんがチャンピオンになったときに使っていたそう。
展示スペースとして
2Fには広い展示スペースがあって長期で展示が行われていたり、ファッションショーが開催されたりする。オープンしたときはここでRogのリノベ前の写真展が開催されていた。
3. クリエイティブについて
建築
建築はBAX studio というバルセロナにある建築スタジオが手掛けている。空間自体開放的でめちゃくちゃ気持ちのいい場所なんだけど、一点だけ困るのは廊下かつフリーの作業スペースの床がクリアガラスなので、スカートを履いている日は行きづらいこと・・・。リュブリャナの女性はスカートの中が見えても気にしないのだろうか?
グラフィック・サイン
グラフィック、サインはNejc Prahというスロベニアのグラフィックデザイナーと、彼の所属するAnsambelというコレクティブによってデザインされている。ロゴをはじめとした全体のクリエイティブもRogのDIY精神や自由さといった特徴を良く表しているし、私は特に空間サインが肩の力がぬけてて本当に大好き!公共施設でこれがありなのか〜〜〜とびっくりする。これでOKした市もさすがだ。デザイナーのサイトに「強固な統一されたビジュアルランゲージではなく、同じ雰囲気を醸し出すゆるくて拡張性のあるアイデンティティを目指した」と書かれていた。納得。
写真は1、3、5枚目は Nejc Prahさんのサイトより。
今はエストニアにいるので、書いててRogが懐かしくなってきた。Rogにいるとクラスメイトとか教授にばったり会うこともよくあるし、クリエイターのコミュニティスペースとしてよく機能しているなあと思う。近いコンセプトのところだと、ヘルシンキのOodiはもっと大きくて人がいっぱいいるけど、Rogはコンパクトで小回りがきく感じが程よいなと思う。日本でこういうスペースを作りたいと思っている人は視察にぜひ!
後半は自転車工場がクリエイティブセンターになるまでの歴史について。ぜひ合わせて読んでね〜
画像参照元
https://resartis.org/listings/center-rog/
https://www.instagram.com/center_rog/