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中1で数学の点数が50点を下回った生徒が、中2で担当生徒になったときの話

ちょっと昔の、塾でのお話です。
数学の点数が1年間でずるずると落ち続け、学年末にはとうとう50点を下回った生徒が、私の担当生徒になりました。仮に、その子をAさんとします。体験授業を終え、記念すべき第1回の授業で、彼女は私に言いました。

A「先生、私数学が本当にヤバくて、なんとかしたい!点数上げるにはどうしたらいい?」

塾講師をしていると、学校のテストの点数が心配で塾に通うようになった生徒さんはよく見かけますが、この言葉を本当に言ってくれる生徒は稀でした。というのも、点数の低い生徒は大抵「自分には点数アップは無理、だって頭が悪いから」と思い込んでいるからです。

私はAさんにこう言いました。

私「先生は、点数を上げる方法は知ってる。けど、それを本当に実行できるかどうかはAさん次第。点数を上げる方法を教えるし、絶対取れるようサポートする」

私「でも、方法を知るだけでは伸びない。Aさんがどこまで頑張れるかで、点数は決まってくる」

Aさんは私の言葉にこう聞き返しました。

A「80点取りたいって言ったら、取れるかなあ。今、50点もないけど」

私「できるよ。私の言うことを信じてくれるなら、絶対取らせてあげる」

絶対、とか言ってくる大人って信用ならないかもしれませんが…。けれどAさんは、私の言ったとおりに勉強をし、次のテストでは96点という高得点をたたき出しました。

ちなみに、それまでは50点を下回る点数であり、1年の最初のテストでも70点台と、決して優秀とは言えない生徒さんでした。けれど、テスト勉強である点さえ気をつけてもらえれば、必ず点数は上がります。

私が教えた勉強法は、こんな感じです。
・テストで点数を上げるには、「解けない問題」を「解けるようにする」必要がある
・だから、今できない問題が、解けない理由を確かめる
・間違った原因をちゃんと確かめて、そのミスをしないよう気をつける

中2の最初のテストでは、多項式の計算などの計算問題がメインです。
そのため点数アップは割と容易いのですが、Aさんの目標である80点を取るために、基本を重点的に練習し、宿題も簡単な計算をたっぷり出したりもしました。
80点が目標であれば、難しい応用問題に手を出す必要はありませんから、とにかくミスをしないことに重きを置いてもらいました。

そしてもうひとつ、私はAさんにこんな話をしました。

私「ここは符号ミス、ここは計算のケアレスミス。わかってないわけじゃなくて、ただこういう小さなミスで×がついてしまうだけだから。自分にできないなんて思う必要はない。絶対できるから」

だから絶対、って言葉は信用ならないんですが。
それでも、先生が自信を持って「あなたならできる」と言って、信じてもらわないことには実力は出せませんから、Aさんにできているところと、ミスしやすいところを必ず分析して伝えていました。

計算自体は解き方を授業で解説したので、すぐにマスターはできています。
なので、あとはミスをしないよう気をつける、という点を、宿題を出すときに何度も声かけをして、注意してもらいました。

私「宿題が多いと感じたら、全部をやりきる必要はないから。大事なのは全部を終わらせることじゃなくて、ミスしない解き方や見直しをする癖をつけること。これができたら、宿題は半分程度でも構わないから」

そう伝えていました。Aさんは真面目なので全部きっちりやりとげましたが。(ちなみにB4プリント2枚分くらい、裏表みっちりのプリントを宿題に出してました)
テスト2週間前くらいになると、勉強の仕方が身についたAさんは、間違えた問題をもう一度解き直し、間違えた問題は青色で○付けをして自分がどれだけできたかを見返したりするようにもなっていました。

A「先生、ここの問題、符号ミスしてたけど、どうしたらこのミスなくせるかなあ」

私「ミスしやすいってわかってたら、そこだけを見直すようにする。あとは、答えの欄に符号を先に書く癖をつけてもいいかも

そうして、間違えた問題を悔しそうに報告してくるのです。
ここまでくると、自分に80点は取れるかなあ、なんて不安はどこにもありません。自分の実力を出し切るために、どうすればいいのかを見据えることができていました。

ここまでできる生徒さんに、私ができることはなにもありません。彼女は見事、最初のテストで96点を取ってきました。
嬉しそうに報告してくれたので、さぞ鼻が高いだろうと思っていたのですが、Aさんは「あと4点…!」と、悔しそうにまた言うのでした。

私がAさんを見て思うのが、必ずしもテストの成績が上がらない生徒さんは、勉強が苦手、というわけではないということです。どちらかといえば、「あなたは勉強が苦手なのね」と、すり込まれているように思うのです。数学はなかなか、これが顕著に見られる生徒さんも多いです。

最近担当した生徒さんでも「数学はややこしくて嫌い!」と、同じ単元のミスを繰り返して、見事に数学嫌いになっている子がいました。そんな子に私は「どの辺が苦手?教えて」だとか、「数学は簡単に解く方法があるから、とりあえずそこだけやってみよう」だとか、あの手この手で騙しながら(笑)解き方を教えています。

そうすると見えてくるのが、勉強の仕方がわからないから困っている、という現状。
計算なら、符号のルールが曖昧だから何度も符号のミスをしていたり、加減と乗除でルールが変わることについていけてないから、ややこしいと感じていたりと、わからないものがなんなのかすら見えていなかったのが、見えてくる。

落ち着いて紐解いて、ここはこう、こっちはこう、とひとつずつ確認すると、数学が嫌いになっている生徒さんでもちょっとやってみてくれる。ちゃんと○がついて、「できてるじゃない~~~!」と褒めると、ちゃんと続きもついてきてくれる。そんな子はとても多いです。(もちろん、お子さんの特性などで本当に苦手で、なかなか身につかないパターンもありますが。)

例題を解説する。問題を一問、解いてみせる。真似して解いてみてもらう。
このステップをやるだけで、ちゃんと解ける生徒さんはたくさんいます。
けれどそもそも、数学なんて無理!嫌!と勉強を毛嫌いしている生徒さんも多くいます(笑)

ここでどうして数学嫌いになるかと言えば、数学の先生との相性の悪さもあるのだと思います。特に「数学の先生」なんて数学が好きな人がなるでしょうから、解き方が書いてあるのにわからない、なんて生徒の事情を理解してくれないパターンがあったりします。

そんな生徒さんの話を聞き、「ここは簡単だからここだけやろ!」とか「先生めちゃくちゃ簡単に解く方法知ってるからこれだけ聞いてて!」とか、あの手この手で話をするのが楽しかったりします。子どもは素直で、いけるかも?と思うとちゃんとやってくれるので。
なので、少しだけ生徒さんの「ここが苦手!!だから嫌!」って話に、耳を傾けてくれる先生が増えたらいいなと思いました。

…なんでこんな話をするのかというと。塾の先生の残念な話を耳にすることが多かったからです。

自分の受け持つ授業のコマ数が多いから、自分の担当授業を他の先生に押しつけようとする先生。
生徒が来なければ休講になる、と、生徒が塾に来ないことを願う先生。
生徒が来て、その生徒さんの目の前であからさまにガッカリする先生。
(大学生の、ちょっと慣れてきた先生に多い傾向がありました)

宿題をしてこない生徒に、暴言吐く先生。
「こんな問題もわからないの?前に教えたじゃん、聞いてなかった?」という先生。
(こんな物言いをして、頑張ります!と生徒がついてくると本気で思っているのでしょうか)

塾の質以前に、人としてその振る舞いはどうなの?と疑ってしまうような先生を色々見てきました。見たり、聞いたりしては、がっかりすることもしばしば。生徒をコントロールできず、人が見ていないのをいいことに、一緒にスマホでゲームをしている先生もいました。

勿論全ての先生がこんな感じのわけではないんですよ!!!でも、全ての先生がまともで優秀で素晴らしい人格者、というわけではない、のもまた事実。

先生という職業柄、生徒を導く立場は生徒より上の立場、と勘違いしている先生は多い気がします。あくまでも偉いのは先生、と言う立場であって、あなた自身ではないんですよ、と私は言いたい。(というか、上記の態度で何が偉いんだと言いたい。)

だって前に教えたことなんて、1週間も経てば忘れるでしょう!
それを忘れないよう身につけるために、塾に来てるんでしょう!?と生徒さんはぜひ開き直っていただきたい(笑)ちゃんと勉強の仕方まで教えなさいよ!と文句を言ってほしい。
言われたことを忘れててやらなかったりしたときだけは、ちゃんと怒られてください。

成績に伸び悩んでいる生徒さんは、まずはどうか「自分ならできるはず」と自惚れてください。私はできない、なんて思わないでほしい。勉強の仕方は、先生から聞き出して、分からない問題は、先生をこき使って質問しまくってください。やる気と時間があるのに伸びない生徒さんを、私は見たことがないのです。

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