見出し画像

アカデミック読書会(第32回) 開催レポート - 中核国イギリス・フランスの共通点と相違点 -

読書会概要

10/14(木)のアカデミック読書会では、イマニュエル・ウォーラーステインの『近代世界システム I』を課題本とし、「イギリスやフランスはなぜ「世界経済」の中心地になったのか?」をテーマに対話しました。参加者2名、ファシリテーター1名、合計3名で、読書会は進行しました。

対話で中心となったのは、世界経済の中核国となったイギリスとフランスの共通点と相違点は何かということでした。イギリスとフランスの共通点は強い王権が成立ことです。一方、相違点は、イギリスは金融・産業・貿易を発展させたのに対し、フランスは文化・芸術を発展させた点です。このような相違が生まれたのは、王権とブルジョワジーとの関係性でした。イギリスの王権はブルジョワジーを支援したため、商業・産業を支えるブルジョワジーの力が強くなり、フランスはブルジョワジーを官僚機構に取り込んだため、ブルジョワジーの力が弱くなってしまいました。この差が、両国の発展の違いに繋がりました。

今回は、前回のアムステルダム(オランダ)の繁栄から、次の中核国となったイギリス・フランスについて対話しました。オランダとイギリスの共通点を探すと、両者は貿易で世界経済の中心となったことに気づきました。

読書会にご参加されたみなさまには、厚く御礼申し上げます。

読書会詳細

【目的】
・より社会が持続可能になるよう、社会の発展の過程や特性を学ぶ
・新しいヨーロッパの覇権(ロンドン)の流れを理解できたらよい

【問いと答えと気づき】
■Q
・ウォーターステインが書いた内容を踏まえて、世界を変えていくにはどうアプローチすればよいか?
■A
・権力や権利
・信用創造
・思想体系
・外部性
■気づき
・現在当たり前とされているもの、過去には存在してもいなかった
・階級、権利、の不条理性
・人々の行動、総体としての歴史の発展には、その当時の何かしらの思想が前提となっている(宗教、経済的な何か、など)

■Q
・世界の中心がイギリスとフランスに移った。共通点と違いは?
■A
・王権とブルジョワジーと貴族
・それぞれの関係性(力関係)
■気づき
・市民階級の台頭、貴族階級の要求を受け、王権は貴族階級に寄り添った
・イギリスでは、中央政府と商業ブルジョワジーの利害が結びついた
・フランスでは、辺境地域と商業ブルジョワジーの利害が結びついた
・フランスでは、ブルジョワジーが貴族以上に力をつけたので、官職に就け、取り込んだ
→民衆の反乱に結びついた
・イギリスは、ブルジョワジーと同化した
→産業革命の土壌
・力関係がその時その時で変わる(強力な中央政府が民間を押さえつける、官僚が腐敗、覇権争い)
→国の発展に結びついたり、逆になったり

【対話内容】
■イギリスとフランスの王権
・イギリスやフランスは王権が強かった
→他国への影響が強かった
・ブルジョワジーが力をつけた
→資本家が生まれた
・イギリスはそれをうまく利用した、フランスは利用できなかった
・イギリスは王権が産業を支えた→産業革命に発展

■イギリスとフランスの対比
・中心的になれた理由:外部から搾取(資材、労働力)したから中心が栄えた
・仕組みを先に作り、他の国よりも利点をうまく使えた
→具体例:信用創造、借金をして資本を増やす→有利性がある→発展につながる
・イギリスは資本主義が発展している、フランスは資本主義が発展しているイメージがない
・イギリスは金融業が生まれた、ロンドンは金融街
・フランスは文化の中心地(金融業は弱い)
・市民と権力者の関係性、力の割合が関係している
→フランスは市民の運動で民主主義を勝ち取っていることに誇りを持っている
・イギリスはブリグジット、一人でもやっていける(産業よりも金融)
・(イギリスは)かつての植民地と深い関係がある
・フランスはかつての植民地と深い関係がない感じ
・フランスはいまいち産業がパッとしない
・フランスは社会主義っぽい要素がある
・イギリスは島国的、小さいイメージ、他の地域に進出、資源を得ようとした
→支配した国に利益ももたらしている
・フランスは、価値のないものに価格をつけている(芸術)
→芸術(人の創造したもの、あやふやなもの、無形のもの)で富を生み出した
・市民の多くが自国の在り方に意見を持っている、民主主義的実体を持っている
・イギリス、産業革命の土壌を作った、王権がブルジョワジーを支持してきた→産業化に成功した
・イギリスは真面目な感じがする
・フランスは遊ぶのがうまい→産業が発展しなかった(世界冠たる産業がない)
・フランスは、化粧品、ファッションが中心
・島国(資源のない国)は、ソフト産業で食べていくしかない
・自動車もサービスとしてとらえる

■国外の目を向けたイギリス、国内に目を向けたフランス
・フランスは海洋な国家ではない→外に進出しなくてもよかった
・イギリス・オランダは自国内では贅沢品などを賄えなかった→海外に目を向けていった
・囲い込み(エンクロージャー)で農民が土地を失う→労働者を確保
・産業革命時の資本主義の矛盾:労働者を強制労働、児童労働
・イギリスの産業革命は、犠牲もあったが、産業も生み出した
→ヨーロッパは発展した
→日本も、発展するイギリスやフランスを見て、彼らを見習おうとした

■日本の現状
・日本はSDGsの中心になっていない(ルールを作るのはヨーロッパ)
・日本は大きな絵を描いて動かすのが下手

【気づきと小さな一歩】
■気づき
・国家とブルジョワジーと貴族の関係が協力関係→経済が発展(イギリス、中国、明治期の日本)
・国家が振興してあげるのが大事
■小さな一歩
・ウォーラーステイン以外の本を読む
・国家の成り立ちや政策を整理する
・どうやったら日本が復活するか考える

■気づき
・その国ごとの支配階層の力関係(関わり、つながり)→変化の方向性と大きさが変わってくる
■小さな一歩
・今の日本の現状でも同じ、階層の分断がある
・自然環境と経済的な面の限界に直面する中で、変化を起こすきっかけは、意識の変革・行動の変化が支配階層を動かす
→市民の中で討議・議論・市民への啓発をしていくなかで、政策の提言や権力機構への働きかけ(気候変動と格差をテコにする)

次回の読書会のご案内

【開催日時・場所
・2021年10月28日(木)20:00~21:30 @ZOOM

【テーマ】
・「世界経済」の辺境地域と外部世界の違いは何か?

【課題本】
・イマニュエル・ウォーラーステイン著、川北稔訳『近代世界システムI ― 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立 ―』(名古屋大学出版会)(「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」は『近代世界システムII』) 
※「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」「新版(名古屋大学出版会)」どれでもOK

【機器】
・インターネット接続可能なパソコン・スマホ・タブレット(画面が見やすいパソコンがおすすめです)

【詳細・申込み】


この記事が参加している募集

イベントレポ

最後まで読んでくださった方ありがとうございます。よろしければサポートいただけますと幸いです。本を買い、noteを書き続け、読書文化の輪を広げるために使います。