琳派墨絵保存倶楽部/RIMPASUMIEHERITAGECLUB

酒井抱一家に伝えられた琳派日本画及び水墨画の画法を伝承しこれを保存、次世代への継承と発…

琳派墨絵保存倶楽部/RIMPASUMIEHERITAGECLUB

酒井抱一家に伝えられた琳派日本画及び水墨画の画法を伝承しこれを保存、次世代への継承と発展につとめて活動中。禅仏教が琳派絵画芸術の発展に影響している要素に注目している。クラスで話したこと、教室で生徒むけに話している談話の内容、そこからの日々の気づきや出会いについて。

最近の記事

絶対に描けない絵/paintings that you will never be able to create

絶対に描けない絵/paintings that you will never be able to create 心のなかに持っているイメージが、自然と表れて出てきてしまうのが、水墨画の面白いところです。 しかしながらクラスでは、枯れ切った枝をイメージできる方は少ないと思います。 皆、若い方ですので、ふさふさと葉をつけた枝、もしくは幼くて繊細な葉の方が上手です。 たくさんの経験によって枯れる事を理解したり、高齢になって老いを受け入れなければ、絶対に描けない絵があるものです。

    • 同じ筆法であっても/Even its done by the same brush strokes

      同じ筆法であっても/Even its done by the same brush strokes この葉っぱは、まだ芽を吹きだしたばかりで、若く弱々しい。その不完全な美しさがある。 この枝は、古く枯れていて、もう一枚も葉をつけていない。 この枝は、今が盛りで、無数の葉をつけている…。 それぞれがどういう状態にあるのか、ということを理解して描けば、 自ずと線は、それぞれのステージの美を表現しています。たとえそれが、同じ筆法であっても。 These leaves have

      • もっと最高を信じてみましょう/Let's believe in the best we have right now.

        もっと最高を信じてみましょう/Let's believe in the best we have right now. 私がクラスで言った言葉を、生徒たちが覚えていて、 折りに触れて、クラスメートの他の生徒にも言ってくれたりします。こんな事を言っていたそうです。 「初心者の時に、これがダメだ、あれがダメだ。と思いがちだけれども、 どの線も、それが今のあなたの最高の出来なのです。 それは、上達しても同じことです。上達したらしただけの、その時のあなたの最高ができているだけです。

        • All about ink apinting

          All about ink apinting 私は水墨画をする上で、起こったことをとても信頼しています。水墨画そのものを信頼しています。 失敗に目を向けることも良いのです。そして、水墨画を続けていくために、自分の良いところを見つけて励ましていく、という行為も正しいのです。 水墨画を習うにあたって、絵の上達だけが目標ではありません。 もっと心を豊かにすること。心を強くして、より素敵な人生を作っていくように変わること。これこそが、水墨画を習うという事ではないのでしょうか。 I

        絶対に描けない絵/paintings that you will never be able to create

          Let's focus on your achievements!There are some.

          Let's focus on your achievements!There are some. 生徒たちは、自分の筆がうまく動かせないことにばかり目が行ってしまいます。皆、自分を批判し過ぎるのです。 うまくいったことに、注目してみましょう。いろいろあるはずです。 忙しい中を教室にきたこと、水墨画を始めたこと。今日できたこと、ひとつひとつ。 In my classes,sStudents tend to focus on their inability to move t

          Let's focus on your achievements!There are some.

          心の揺れ/expansive gray tones

          コメント(0) 心の揺れ/expansive gray tones 水墨画は、11~13世紀に中国から日本に伝わったと言われています。しかし、その頃すでに日本でも、中国の初期水墨画にあるような、線描による墨絵は、日常的に描かれていた様です。 もっこつ法という、ぼかしによる表現が加わって、水墨画はさらに奥深いものになりました。線描は白と黒をはっきりと分けて綺麗であり、もっこつ法は曖昧で無限を思わせるグレーのトーンの広がりが美しいのです。 それは人が人生を想う時の心の揺れと、

          水墨画とお茶とお菓子と

          私の食道楽のせいでか、クラスには珍しい美味しいお菓子がいつも常備されている。私も出掛けた先で面白いものがあるときまって用意するのだが、そのお菓子のほとんどは今や生徒さん達が持って来てくださるようになった。最近は旅行に行かれることも多くなって、ますます各地からの見たこともないような珍しく奇抜なお菓子がたくさん集まっている。 私は各クラスの時間中にお茶をお出ししている。実を言えば、そのお茶もたくさんの種類があり、やはり生徒さん達が各地から持ち帰って差し入れてくださるものばかりだ

          水墨画に反映される禅仏教の教え:この一瞬を生きる/水墨画の右脳、左脳のバランス

           夏の夕方の空。上から淡い青色、それに地平線からの穏やかであかるい橙色が混じって、うす紫色の雲が中間にのびやかに拡がっている。 目に入った瞬間、うれしく幸福な気持ちでいっぱいになった。 「我々の人生は、こんな美しさに出会って喜ぶためにあるんじゃないだろうか。日々あくせくするのも、こんな幸せな時間のために。」と思った。    しばらく眺めていたが、ほんのいつの間にか思考はまったく違う事を考えている。これほどの人生の成果を目の前にしっかりと見つけても、その幸福に集中していられる時

          水墨画に反映される禅仏教の教え:この一瞬を生きる/水墨画の右脳、左脳のバランス

          美容サロンNORAでの個展開催「侘びるもののはじまり」展 2023年8月28日~9月30日

          2023年8月28日月曜日~9月30日土曜日まで 表参道 FromA地下にある巨きな美容室「NORA」で 「侘びるもののはじまり」展という 個展を開催いたします。 メインは日本画の新作です。 30号~6号の、金箔と日本画画材を使用した小作品を展示します。 タイトルにある「侘びるもののはじまり」ですが、 あの「わびさび」の侘びるです。 「わび」と「さび」の両方の意味を含んだタイトルとして 「侘びるもの」にしました。 よい経験ばかりを積む訳ではないですが、 工夫して乗り越え

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          あるアメリカのいち美術家からみた、現代の日本画

           丁度いま、アメリカの美術大学の準教授が、日本画を習得しに通ってきてくれている。今日で一週間になる。  最初は和紙を買いに行って、ドーサを作り、2~3日かけて引き、弁柄と酒で念紙を自作し、パネルを加工して板張りにし、骨描きを乾かして胡粉下地を…などとやっていて、ようやく今日から着彩に進むことができた。 「いやあ、日本画の準備がかかること、かかること。」と、まんざらでもない様子で作業してくれる。こういう特殊な体験が楽しいものだ。 ご本人は、油彩の専門で、同時にグワッシュ、水

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          今日も宗達を想う

          1. 根津美術館で開催中の「救いのみほとけーお地蔵様の美術ー」展に足を運んだ。「地蔵菩薩立像」には圧倒された。 いつもとは違って、照明を落とした大きな空間に、ほとんど一室の主のように奥の中央に置かれていた。陳列を見に行ったというよりも、出会いに行ったような気がする。日曜日の閉館前で、観光客の団体はお土産売り場に移動していて、おかげで10分間ほど、「地蔵菩薩立像」を独り占めした!  柔和なお顔立ちに、目も心も吸い込まれて、立ち尽くして見入ってしまった。世の中には、こんなに美し

          光琳の燕子花図屏風、夏草図屛風

          ちょうど、根津美術館で光琳の燕子花図屏風が公開されて、 観に行った。 構図について、目が行ったことを話したので、そのメモ。 屏風は、 今の私達は、美術館でみるけれど、もともとは実用品。 宴席などで、主賓の後ろにおくもの。屏風の中央に、今日の主役が座わる。 屏風絵は「ここです。こちらにいらっしゃるのが、今日の主役です」 というために、中央にあたる部分を最も華やかに見せている。 華やかなモチーフをおいたり、ここ一番の表現力を見せたりしている。 わざと空間を空けて、周り中からモ

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          龍の襖絵

          昨年の夏に、ある個人宅の仏間に龍を描かせていただいた。 その様子をInstagramに投稿したら、反響が大きく、いまだに会う人にその話題を持ちかけられる。 こんな質問をされている。 「直接描いて、緊張しなかったか?」 緊張どころか、たのしくてしようがなかった。 描けば描くほど、そこに龍がいるのが見えてきて、 形をおこそうとして、夢中で筆を動かした。 そこに、龍のランドが見えていた。 影をなぞるように、筆で墨をつけただけ。 あちこちに龍があらわれて、それぞれの性格を持って

          水墨画のなかの相対性

          水墨画の主な描法に2つあり、ひとつを「側筆(そくひつ)」、もうひとつを「直筆(ちょくひつ)」という。 「側筆(そくひつ)」は、筆先が線の片側にむいた描き方で、硬いもの、力強いもの、雄大なものなどの表現に用いられる。 山、岩、大地、竹なら竹の幹、植物なら葉っぱなど。 一方、「直筆(ちょくひつ)」はデリケートなもの、柔らかいもの、繊細なものの表現に用いられる。筆先は、線の中央を通るように描く。 花なら花びら、人物なら人の肌、竹なら竹の葉など。 水墨画のように、一本の筆で作品

          したくても「できないマスク」

           私は東京都内で、日本画と水墨画の教室を開いている。 2014年の開業当初から、外国人と日本人の両方に教えてきた。コロナ騒動直前までの2020年2月まで、たくさんの外国人観光客に日本の伝統絵画を教えて来て、ざっと400人くらいを受け持った。その外国人達が、昨年の10月以降、徐々に戻ってきた。久しぶりの体験教室に、私も相手も期待が高まった。こうした受講者たちは、インターネットを通して申し込み、やって来る。  ニコニコと笑いながら、玄関先で陽気に挨拶してくれる。それだけでも、大

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          琳派・宗達絵画の中の禅仏教〔牛図について〕

          「琳派の宗達」  琳派の祖とされる400年くらい前の京都の画家、俵屋宗達の作品は、今なお私達を魅了する。その遺された業績の値打ちは、計り知れないものがある。  作品中に縦横無尽に走る筆遣いは、今日も生きて生命力を保っているし、発想は斬新で、奥深い。現代の我々も未だに宗達芸術に追い付いていないところだらけだ。橋本治氏が著書の中で、琳派は日本美術の頂点に立っていると書かれたとおりではないかと思う。 「宗達の牛図」  その俵屋宗達が描いた、「牛図」という作品がある。2幅で

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