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商業出版する方法#98〜”ブックライター”の役割について

元KADOKAWAの編集者でビジネス・実用書出版コンサルタントの渡邉です。

ブックライターってご存知ですか?

混同されやすい言葉として「ゴーストライター」ってのがありますが。

絶対に間違えてはいけないのは、ビジネス書や実用書のジャンルにおいてブックライターを起用して本作りを行うのは、やったらあかん!ことではなく、むしろ「普通のこと」です。

ビジネス書や実用書の場合は、ゴーストライターといった言い方さえもしません。「ブックライター」や、「書籍のライターさん」、って業界内では呼びます。

ビジネス書や実用書におけるブックライターの役割と、どういう場合に活用させてもらうのかをビジネス・実用書のコンサルであり、現役の編集者の視点からまとめました。


1)ビジネス書や実用書の場合大事なるのは「大元のコンテンツ」である
小説などの「物語作家」「文芸作家」と違い、ビジネス書や実用書は「ハウツー本」です。
ハウツー本だからこそ、一番大事なのは「文章のうまさ」とか「伏線がどうのこうの」以上に「ノウハウのオリジナリティ」や「ノウハウやスキルの汎用性と再現性を惜しみなくアウトプットできるか」だったりします。

よって極端な話、文章がめちゃんこ下手であっても「本が作れます」。ビジネス書や実用書の著者が提供するべきなのは「ノウハウ」「スキル」。
この「本になるコンテンツをきちんと世に出せるか否か・・」が何よりも大切なのです。

よってビジネス書や実用書の著者は、絶対自分で全て原稿を書き切らないと出版できない!ということではないです。大事なのは「商業本になりうるコンテンツ」を持っているかどうかが全て、とも言えるのです。

そしてビジネス書や実用書の著者ほど「専門作家」である方はほとんどいません。著者の9割は経営者や専門職だったり・・・と、別にお仕事を持っている人がほとんどです。
文芸の作家のように「作家を専業」としている人は希少です。よって、みんな「本業で忙しい」ことも多い。

特に経営者ともなると、書きたくてもなかなか執筆に時間が取りづらかったりする。でも商業本として世に出せるほどの実績とコンテンツを持っているのであれば、出版社はその方の力を借りて本を出したい。
そんな場合に起用するのが「ブックライター」さんです。

著者となる人は、ブックライターから取材を受け、話をするだけで「ライターが原稿に起こして」くれる。
そして編集者は、多忙で専業作家ではない著者だからこそ、もしかしたら原稿アップの締め切りまでに原稿をいただけないのでは・・・・?という冷や汗&リスクを回避しやすくなります。

本は刊行スケジュールというのが一応決まっています。出版社は本を出さないと売り上げが立たないので、現場の編集者もできるだけスケジュール通りに出していきたい。だからスケジュールが崩れると、会社としてもめちゃくちゃ困る。
それを避けるためにも、ブックライターさんに協力してもらうことで、刊行スケジュールの遅延や遅滞を防ぎ、安定的な書籍制作を行い、ビジネスとしての売り上げを確保しやすくするのです

その意味では、ブックライターの方達は、書籍制作のスタッフの一人として大変にありがたい存在なのです。

絶対に間違ってはいけないのは、ビジネス書や実用書の領域で「ゴーストライターでしょ・・・」って揶揄するような事なのです。


2)ブックライターはいつでも活用できるのか?
ブックライターさんはそういう意味では非常にありがたい存在ですが、それではどんな本でも起用できる(あるいはしている)ものなのでしょうか?

率直にいって、いつでもどんな本でも起用している・・・というわけでもないのが本質。

まず著者が「ブックライターを起用したい!」と思っても、それを最後に決める事ができるのは、商業本の場合「出版社サイド」です。だから、現場の編集者の決断によるものが大きいので、必ずしも著者の希望通りにいかないこともあることを覚えておいてください。

なぜかというと、ブックライターも「お仕事」として動いているので、フィーをそれなりに払う必要があるからです。このフィーを著者が払うか、出版社が払うか・・の問題がまず直面します。商業本の場合、ライター費は出版社が払うことが多かったりします。故に、ブックライターを起用するか否かの最終判断は出版社(の編集者)が決めることにもなります。

また、ブックライターを起用する際の一番の理由は「書籍を制作するにあたっての原資となる”原稿”を、スケジュール通りにいただける」が前です。
加えて「著者の文書力のレベルがどうしても商業本に耐えられないことからやむ終えず・・」ということもあるにはあります。

なのでブックライターの活用・起用というのは、何もお気軽にやっているわけではなく、綿密な刊行戦略に基づく事が多いので、その点はなんでも著者の希望通りに「出版社さんがやってもらえる」と考えない方がいいでしょう。


3)ブックライターさんはありがたい存在だが、やっぱり自著は著者が基本的に執筆することを当たり前にしておいてもらいたい。
本の著者である以上、本質的原則として、自著の執筆はやはり自分で行う。が良いのです。

ブックライターの起用は「やむを得ず」といった局面の事が圧倒的でもあるからです。

あと自著の原稿は著者である本人が書いた方が、圧倒的に面白いし、内容の深さと説得力が違います。それらが深くて高いです。
かつ魂の言葉や文章が紙面いっぱいに沸騰していることが9割なので、個人的には「本来自著の原稿執筆は、著者がしっかり書き切るべし!」と思っています。

ブックライターを起用しても、思い通りの原稿が上がってこないこともぶっちゃけあるんですよ。
ブックライターでも「きちんと書ける人・書けない人」の差もめちゃんこある!というのも実態です。

だから売れる本を手がけている力のあるライターさんは、常にお仕事満杯状態です。なかなか引き受けてもらえなかったりもします。そしてフィーも当然のように高額になります。
いっぽうでブックライターと名乗っていながらも、閑古鳥&開店休業状態の人もいます。ブックライターと言いながら、文章がアホみたいに下手で、本の原稿を書き切る実力がない人もめちゃくちゃ多い実情もあるんですよ。
(それを適切に見極めきれないと、書籍の制作もトラブル続きになることも多い)

まあ、ということで・・・著者がしっかり原稿を書き切る。原稿を締め切りまでにあげる!という意思で臨んでほしいですし、それを行動に移していただきたいですね。

自分の本ですし、著作権も発生しているのですから、内容への責任は保持して書籍制作に臨んでいただきたいです。
繰り返しますが、商業本は「あなたの本を出版します」ではありませんので。

なお、ブックライターに関しては、こちらの方が第一人者であり、この方主宰の「ブックライター塾」では、かなり有能な方々を排出されているので、ブックライティングの仕事に興味あれば、のぞいてみてください。

 

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*ビジネス・実用書で商業出版したい!ビジネスパーソン向けのメルマガやってます→https://rikabook.com/pubmerumaga




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