チチ (父) の恋　　序章

今年90歳になるチチ(父)には女がいる。
会社時代からの知り合い、お世話になった人だと言うが、怪しい。
行動が怪しい。
カラオケ仲間でもあると言うが、怪しい。実に怪しい。

酒、タバコは飲まない。賭け事は好きだ。そして浪費家。
今年はボーナスは出ないと母に言い、そのボーナスは全部自分で使ってしまったこともあるらしい。定年後の借金3回。
その度に自分では返せず母に泣きつくビビり。
挙げ句の果てに脳梗塞を起こし、入院したこともある。

最初に行動が怪しいと思ったきっかけは、間違って姉のパソコンにメールが送られてきたからだった。
偶然か娘と同じ名前の相手だったから間違えて送ってしまったのか。
浅はかだ。甘い。守りが甘い。その内容は娘に宛てたメール内容ではなかったらしい。
それを読んだ姉は、すぐに自分宛ではないとわかりただ気持ち悪るかったといった。それも1回ではなく数回。抜けている。実に抜けている。

ただ確実な証拠が掴めなかった。
自分の携帯は肌身離さずだし。

でも見つけたのだ。
証拠である会話の数々を。
それも母の携帯電話から。